しかし、こうした「希望参加」には課題がある。福岡県や高知県などは答案回収や採点、集計を業者に委託する予算を組むが、予算措置がないところは教員らがやらねばならず、学校現場の負担は増す。テストには採点者によって点数評価が分かれる可能性がある記述式も含まれており、「国と自主参加分の採点基準に少しでもずれがあれば正しい分析ができない」(鳥取県教委)という心配もある。採点作業が各市町に委ねられている石川県内の小学校の教員は「精度を上げるには国の基準に照らし合わせるなどしてじっくり時間をかけなければならない。日常業務を抱え、どこまでやれるか……」。
大阪府豊中市教委は、抽出から外れた学校はあえて参加しないことをいったん決めていた。しかし、3月上旬の中間集計で府全体の参加率が9割を超えていることがわかり、急きょ「全校参加」に方針転換したという。
全県で100%参加の鹿児島県教委の担当者は「保護者から『なぜうちの学校はやらなかったのか』と聞かれたら、何と答えるのか。教員の負担を考えて参加しなかった、などとは言えないはずだ」と話す。
◇
参加率が低い地域には、代わりになる独自のテストを実施しているところも目立つ。
抽出校以外は参加しないことを決めている横浜市教委は「小中全学年で実施している市独自の学力調査の方を充実させたい」。同じく自主参加ゼロの名古屋市も、2005年度から市内全校の小5と中2を対象に国語と算数・数学で学習状況調査をしており、今年も4、5月に実施する。「同じ時期に二つのテストをする必要はないと判断した」という。東京都の豊島区や大田区なども、区独自の学力テストがあるとして希望参加を見送っている。
◇
〈全国学力調査〉2007年にスタートし、毎年4月、国語と算数・数学の2教科で実施。基礎的な知識を問うA問題と知識の活用力を問うB問題がある。「全員参加で地域同士の競争心があおられている」「全体の学力傾向をみるためならサンプル調査で十分だ」という指摘があり、政権交代によって今年は31%の学校を取り出す抽出調査に。予算は全員参加の時の約60億円から約30億円に減った。抽出から外れても希望すれば文科省から問題が無償提供されるが、国が採点、集計するのは抽出校に限られる。一斉実施にはしないところもあり、全校参加の東京都墨田区では教材としてふだんの授業で解いたり、宿題に出したりする学校もある。