“偏差値神話”は本当なのか 日大が早稲田をアゴで使うとき
2010年04月16日18時42分 / 提供:Business Media 誠
「彼は、日大(日本大学)しか出ていないのに……」
1カ月ほど前、大手出版社の副編集長(44歳)と赤坂で酒を飲んだ。そのとき副編集長はハッキリとこう言った。「彼は、日大しか出ていないのに……(苦笑)」
この場合の“彼”は、2歳年下の後輩を意味するらしいが、この春の人事異動で編集長に抜てきされたようだ。一方で、早稲田大学出身のこの副編集長は、昇進できなかった。つまり、後輩に負けたのである。だから、酔った勢いでつい「日大しか……」とバカにしたのだろう。
会社員として30代後半〜40代後半までの約10年間は、大きな分岐点になる。その後、役員などになるか、それとも管理職で終わっていくかという、2つの道が待ち構えている。最近は、管理職にもなれない3つ目の道が作られている。
この時点で競争に負ける人は、人事について不満が多くなる。そんなときに、彼らがよく口にするのが「〇〇大学しか出ていないのに……」といった言葉である。さすがにしらふのときは口にはしない。酔ったりすると、ハッキリと言う人がいる。
そのような人は私の周りに10〜15人ほどいる。「あいつは立教なのに……」「まあ、中央しか出ていないから、彼は必死にがんばったんだろうね」など。いずれも早稲田大学や慶應義塾大学、東京大学出身の編集者たちである。この人たちは現在、副編集長(課長級もしくは課長補佐)などをしているが、その上の編集長(課長級もしくは部長級)になるのが遅れている。会社から十分には認められていないのだ。彼らはそのことを察知しているから、自分を追い抜かす人を冒頭で紹介したように「日大しか……」とバカにするのだろう。つまりは、嫉妬(しっと)である。
時おり、「学歴なんて関係ない」と勇ましいことを言う人がいる。しかし、私が取材していると、学歴や競争、さらに能力観などはそれなりに日本社会に影響を与えていると思う。そこで今回の時事日想は、企業の中で学歴がどういう意味を持つかを考えてみたい。
だが多くの企業は、社内の昇進などに学歴がどのくらい影響を与えているかを公表していない。私が知る限り、そのようなデータは存在しないし、取材で人事部に尋ねてもあいまいな回答しか返ってこない。従って、私がこの20年ほどの間に学歴について書かれた本を読んできた中で、もっとも説得力があると思ったものをベースに論を進めたい。
●日本社会の能力観には2つのニュアンス
その本は『日本的経営の編成原理』(岩田龍子、文真堂)という学術書であり、もう30年以上前に書かれたものだ。著者の岩田氏は当時(武蔵野大学教授)、終身雇用や年功序列など日本的経営を文化論からアプローチすることで一躍注目を浴びた。
岩田氏は、学歴うんぬんを論じる前に、日本の社会の能力観には2つのニュアンスが含まれていると言及する。
「(1)能力は、ある漠然とした、一般的な性格のものとしてうけとめられることが多いこと (2)能力は、訓練や経験によってさらに開発されるべき、ある潜在的な力であり、したがって、ただちに実用に役立つ力、つまり“実力”とは考えられていないこと」(150〜151ページから抜粋)
一方で、米国の能力観を「訓練と経験によって現実に到達しえた能力のレベル」(149ページから抜粋)ととらえている。そして、これらの能力観から、日本の競争とは違った意味合いを持つ競争になると説く。「米国社会では、人びとは、いわば局部的にしか競争にまき込まれていない」「競争における個々の勝敗は、人生における長い一連の“戦い”の局面にすぎない」(149〜150ページから抜粋)
そして日本の能力観にもとづくと、次のような意識を人々が持つことになりがちと説く。
1カ月ほど前、大手出版社の副編集長(44歳)と赤坂で酒を飲んだ。そのとき副編集長はハッキリとこう言った。「彼は、日大しか出ていないのに……(苦笑)」
この場合の“彼”は、2歳年下の後輩を意味するらしいが、この春の人事異動で編集長に抜てきされたようだ。一方で、早稲田大学出身のこの副編集長は、昇進できなかった。つまり、後輩に負けたのである。だから、酔った勢いでつい「日大しか……」とバカにしたのだろう。
会社員として30代後半〜40代後半までの約10年間は、大きな分岐点になる。その後、役員などになるか、それとも管理職で終わっていくかという、2つの道が待ち構えている。最近は、管理職にもなれない3つ目の道が作られている。
この時点で競争に負ける人は、人事について不満が多くなる。そんなときに、彼らがよく口にするのが「〇〇大学しか出ていないのに……」といった言葉である。さすがにしらふのときは口にはしない。酔ったりすると、ハッキリと言う人がいる。
そのような人は私の周りに10〜15人ほどいる。「あいつは立教なのに……」「まあ、中央しか出ていないから、彼は必死にがんばったんだろうね」など。いずれも早稲田大学や慶應義塾大学、東京大学出身の編集者たちである。この人たちは現在、副編集長(課長級もしくは課長補佐)などをしているが、その上の編集長(課長級もしくは部長級)になるのが遅れている。会社から十分には認められていないのだ。彼らはそのことを察知しているから、自分を追い抜かす人を冒頭で紹介したように「日大しか……」とバカにするのだろう。つまりは、嫉妬(しっと)である。
時おり、「学歴なんて関係ない」と勇ましいことを言う人がいる。しかし、私が取材していると、学歴や競争、さらに能力観などはそれなりに日本社会に影響を与えていると思う。そこで今回の時事日想は、企業の中で学歴がどういう意味を持つかを考えてみたい。
だが多くの企業は、社内の昇進などに学歴がどのくらい影響を与えているかを公表していない。私が知る限り、そのようなデータは存在しないし、取材で人事部に尋ねてもあいまいな回答しか返ってこない。従って、私がこの20年ほどの間に学歴について書かれた本を読んできた中で、もっとも説得力があると思ったものをベースに論を進めたい。
●日本社会の能力観には2つのニュアンス
その本は『日本的経営の編成原理』(岩田龍子、文真堂)という学術書であり、もう30年以上前に書かれたものだ。著者の岩田氏は当時(武蔵野大学教授)、終身雇用や年功序列など日本的経営を文化論からアプローチすることで一躍注目を浴びた。
岩田氏は、学歴うんぬんを論じる前に、日本の社会の能力観には2つのニュアンスが含まれていると言及する。
「(1)能力は、ある漠然とした、一般的な性格のものとしてうけとめられることが多いこと (2)能力は、訓練や経験によってさらに開発されるべき、ある潜在的な力であり、したがって、ただちに実用に役立つ力、つまり“実力”とは考えられていないこと」(150〜151ページから抜粋)
一方で、米国の能力観を「訓練と経験によって現実に到達しえた能力のレベル」(149ページから抜粋)ととらえている。そして、これらの能力観から、日本の競争とは違った意味合いを持つ競争になると説く。「米国社会では、人びとは、いわば局部的にしか競争にまき込まれていない」「競争における個々の勝敗は、人生における長い一連の“戦い”の局面にすぎない」(149〜150ページから抜粋)
そして日本の能力観にもとづくと、次のような意識を人々が持つことになりがちと説く。
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