迷光の間:シアターシステム
HTPCレポート
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HTPC
この写真では撮影用にテーブルに上げているが、この位置にはリア・スピーカーを置かなくてはならないため、普段本体はテーブルの下に置いている。 |
導入の経緯
海外のAV関連の掲示板を色々のぞき見してみると、“HTPC”という見慣れない単語が出てくる。何のことだろうと思って検索をかけてみると、どうやらホームシアター用PCのことらしい。MP3やHDレコーディングなど、いくつかの要素を含んではいるが、目下のところDVDの再生が主目的のようである。特に AVScience
Forumでは、一つのセクションを構成する規模にまでなっている。
もっとも、単にパソコンのDVD再生もけっこうイケル、というようなことなら別にそれ以上関心を抱くことはなかった。折しも、ソニーの最上位機種のDVDプレイヤーを買ったばかりである。ところがいくつかの投稿を読んでみると、どうも雰囲気が違うのである。HTPCをリファレンスとして位置づけ、いわゆるDVDプレイヤー("stand-alone
player")よりも画質がよいことを共通認識とした対話がなされているのである。しかも投稿者の相当数が9インチや8インチ管といった、かなりハイエンドなプロジェクターを使用している。
これにはショックを受けた。パソコンのDVD再生など、専用機と比較にすらならない思っていたからである。それを9インチ管につなぐ人が出てきているというのは、いったい何が起こっているのか。 FAQ集などを読みあさってみると、だいたい次のようなことが書いてある:
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CPUや汎用ビデオ・チップの激しい性能競争にともない、ソフトウェアによるデコード性能がDVDプレイヤーのカスタム・チップによるそれと拮抗し、さらには凌駕するようになってきている。
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現行のDVDプレイヤーは525p出力しか出せないのに対し、HTPCはXGAや720p、さらには自由な解像度やアスペクト比、周波数に変換した信号を出力できる。アップコンバートの質は業務用にはかなわないものの、ファロージャのクワドラプラーと比較し得るレベルで、大概の液晶やDLPプロジェクターの内蔵画素変換回路よりはるかに上質である。
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現行のDVDプレイヤーの多くはS9000ESやSD-9200クラスであっても、色差信号のアップサンプリングにバグに近い欠陥を抱えており、原色の輪郭部分が階段状になったりスダレ状になったりする(特に赤い部分の輪郭が目立つ。なお、これはS9000ESで話題になったi/pの誤変換によるスダレ症状とは別物である)。HTPCではこれが解消されており、全体になめらかになっている。
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現行のDVDプレイヤーのプログレッシブ信号はあくまで60Hzであるため、フィルムソースで3-2逆変換がかかると、1,1,1,
2,2, 3,3,3, 4,4…と、1/20秒表示されるコマと1/30秒表示されるコマが交互に来るという、大きくジッターを含んだ映像になってしまう。HTPCなら72Hzでの出力が可能で、1,1,1,
2,2,2, 3,3,3, 4,4,4…と、すべてのコマが1/24秒表示になり、よりなめらかになる。
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現行のプログレッシブDVDプレイヤーの多くでは字幕がスダレ状にしばしばなるという問題を抱えているが、HTPCではこれが回避されている。
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現行のDVDプレイヤーの多くではリンギングが付加されてしまうが、HTPCの場合、上質なグラフィックカードを選べばこの問題は回避できる。
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フリーウェアのYXYを使えば、いわゆるスクィーズはもとより、ピクセル単位で自由にスケーリング倍率・位置・アスペクト比・ブランキング範囲を設定できる(ディスクごとにメモリ可)。LB収録のソフトを擬似的にアナモーフィックにすることができるため、特に三管で、アスペクト比の切り替えが不要になる。またオービティングをかけることにより、焼付防止ができる。
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フリーウェアのdTVとキャプチャー・カードを使えば、LDなどの外部ソースのラインダブラー兼スケーラーとして使用可能。
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MPEGのデコード技術は発展途上である。DVDプレイヤーは丸ごと買い換えないとアップグレードできないが、HTPCの場合、ソフトやパーツ単位のアップグレードで安価かつ即時的に反映できる。実際、業務用機ではハードウェア・デコードがソフトウェア・デコードにすでに大きく取って代わられている。
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フリーウェアのDVD
Genieなどを用いることにより、容易にPAL圏を含む世界中のディスクを再生可能。
謳われていることが本当なら、すごいことである。そして実際、そこで指摘されているDVDプレイヤーの諸問題、特に赤の輪郭のがたつきと字幕のスダレについては、前から疑問に思っていたことである。プロジェクターの画素変換についても、何とかならないものかと思っていた。そこで、掲示板に謳われているようなDVD再生専用に特化した自作PCではないものの、一応DVDドライブを内蔵したPowerBook
G3(2000年版)があったので、試しにその外部モニタ出力をプロジェクターに入れてDVDを再生してみることにした。
びっくりしたのは、買ったばかりのS9000ESを明らかに凌駕する絵がいきなり出てきたことである。赤のがたつきも、画素変換によるボケやジャギーも、すっきりと消えている。シャープでかつなめらかなのである。問題は、特にカメラの移動が激しい場面で処理落ちが目立つのと、音声がステレオピンジャック出力しかないことである。それさえ何とかなれば、もうS9000ESで見る気が起こらなくなる。いったい何のためにこんな高級なプレイヤーを買ったのだと、思わせるくらい基礎的な画質が上なのである。
そこで、掲示板の情報を信用して、そこで勧められているパーツに沿って自作PCを組んでみることにした。
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ワイヤレス・キーボードとプログラマブル・リモコン |
PCの自作
掲示板の情報によると、出来合いのパソコンではダメらしい。HTPCとして理想的なポテンシャルをもたせようとすると、現時点では自作するしかないようである。私はマック・ユーザーで、ウィンドウズには不慣れ。もとより自作など初めてである。だから、個々のパーツの選定や評価に関しては完全に掲示板情報に依拠しており、自分でとっかえひっかえして体験的に得たものではない。基本的には この投稿に従っている。
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CPU:Intel Pentium III 800EBMHz/133MHzBus DVDを再生するだけなら600MHzでもなんとかなるようである。Athlonにしないのは、少しでも安定性を向上させるためだとか。
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マザーボード:ASUS
CUSL2 他にも、Abit SA6RやMSI815EProが勧められていた。
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ビデオ・カード:ELSA
GLADIAC GeFORCE2 GTS 32 AGP 現在ではデコーダー・カードを使うよりもCPUと汎用ビデオ・チップでソフトウェア・デコードしたほうが画質が良いようである。なぜELSAかというと、同社のカードなら出力解像度と周波数をきめ細かく設定できるからということらしい。DVD再生の品質について言えば、ATiのRADEON系を推す声も多い。投稿では国内のPC雑誌で高画質とされているcanopusのカードが取り上げられていないが、これはcanopusのカードがアメリカで販売されていないからのようである。BNCやD4出力などのオプションがあるので、あるいはSPECTRA F11あたりを買った方が良かったのかも、とも思う。なお、DVD再生に限ればGeFORCE2 MXを搭載した安価なものでも大丈夫のようである。むしろGeFORCE2 Ultraなど高クロックのものを使うとノイズがのりやすく、かえって良くないようである。
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サウンド・カード:M
AUDIO DELTA Dio 2496 このカードは秋葉原のどんな大きなPCパーツ店にも置いていない。調べてみたら、ミュージシャンやレコーディング関係の市場向けのカードで、ラオックスの楽器館で在庫していた。デジタル出力があるカードならどれでもいいという投稿もあるのだが、このカードが上質として推す発言も多いので、これにした。なお、今買うなら同社のDELTA
Audiophile 2496の方が良いのかもしれない。
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DVDドライブ:MELCO DVD-ROM5FB ソニーのDDU220EのOEM品。DVDドライブの品質差については諸説出ているが、あまり決定的なことは言われていない。店頭でリージョン・フリーだというPOPを見つけてこれにした。ドライブは早ければ良いというものでもなく、より高速なものの中にはうるさいものも多いらしい。
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メモリ:128MB CAS3 PC133 DVD再生だけなら64MBでも問題ないようである。
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HDD:Western Digital 30.7GB Ultra-ATA66 ハードディスク・レコーディングでもするのでなければ、30GBもあれば多すぎるくらいのようである。
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キャプチャー・カード:Hauppauge
WinTV PVR for PCI LDなどの外部ソースのラインダブラーとしてHTPCを使用しないなら不要。dTVがサポートしているカードである必要があるので、Hauppauge製のものにした。
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FDD:TEAC FD-235HGA122 何でもいいし、あるいはなくても良かったかもしれない。
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モデム・カード:aiwa PV-PC5610 最初は入れないつもりだったが、ドライバ類のアップデートの際にないと不便極まりなかったので追加した。適当に店頭にあったものを買った。
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ケース:SOLDAM
Windy JAZZ LV plus S 投稿に記されていたケースが見つからなかったので、ファンが可変で比較的静だと聞いてこのケースを選択した。店員によると、あまり組みやすいケースとは言えないらしいが。このケースにあわせたブラックフェースのDVDドライブも店頭に置いてあったが、割高なのと、リージョナルコードが回避できるか不明だったので避けた。あるいはもっと安いケースにしても、良かったかもしれない。
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キーボード:SEIJIN
FreeBoard-Trackball 投稿に記されていたキーボードが見つからなかったので、適当に探した。ワイヤレス・キーボードはいくつか出ているが、アキュポイントよりはトラックボールの方が好きで、何より一番コンパクトだったのでこれにした。もっとも、基本的にはショートカットをプログラマブル・リモコンに覚えさせてこれで操作するのだが。
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OS:Microsoft Windows 98SE MEでも良かったかもしれない。なお、現時点ではWin2000だとDD5.1chのデジタルアウトに問題があるらしい。
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DVD再生ソフト:Cyberlink Power DVD3.0並びにINTERVIDEO WinDVD2.3.55 国内では発売元が複数あり、それぞれVR-XやARENAといった語をバージョンナンバーに代えて冠しているのでわかりにくい。両方とも当然フィルムソースの3-2逆変換、ドルビーデジタル出力対応。画質比較を後に記す。
ハードの組み立て作業そのものは雑誌などを参考に行ったが、さして難しいものではなかった。むしろOSやドライバなどのインストール、BIOSのアップデート作業などの方が、プレインストール機しか使ってこなかった身にはえらく煩雑に思えた。
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セットアップとチューニング
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画面の出力解像度を使用するプロジェクタのパネル解像度と同一にする。これこそがHTPCにとってもっとも重要なポイントで、プロジェクタの内蔵画素変換回路によるリサイジングを完全に回避させることが肝心である。当然出力はRGBで、プロジェクタ側はリアル(スルー)モードにする。なおこれは液晶やDLPの場合で、三管の場合は安定的にスキャンできる最大の解像度を探す。
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DVDドライブのDMAをオンにする。これも重要。
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マザーボードのBIOSで使用しないポートや割り込み、パワーマネージメント関係をすべてDisableにする。
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regeditでOSがDVDドライブに割り当てるキャッシュを増やす(スタートメニューから「ファイル名を指定して実行」でregeditと入力し、System→CurrentControlSet→Control→FileSystem→CDFSにて、CasheSize=0x00000a00(2560)、Prefetch=0x00000a00(2560)、PrefetchTail=0x00000300(768)とする)。
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msconfigで不要なスタートアップ項目、特にScheduling Agentをオフにする(スタートメニューから「ファイル名を指定して実行」でmsconfigと入力し、スタートアップ・タブを選択する)。
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ビデオ・カードに付属のドライバを使用せず、nVIDIAのホームページなどから最新のDetonator3をダウンロードして用いる(GeFORCE系カードの場合)。
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ビデオ・エッセンシャルや見慣れたソフトなどを使ってオーバーレイ層のブライトネスやコントラストを調整する(コントロールパネル→画面→設定→詳細→NVIDIA
GeForce2 GTS/GeForce2 Proのプロパティ→GeForce2 GTS→Additional GeForce2
GTS Properties→Overlay Color Control)。私の現在の環境では、Brightness:112%、Contrast:96%、Hue:0%、Saturation112%。
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M-AUDIOのDeltaシリーズでのドルビー・デジタル出力の出し方はここを参照。
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Partition MagicなどでDVD再生専用の基本パーティションをつくり、極力余計なものはインストールしないようにする。安定的に問題なくDVD再生が可能になったらパーティションのコピーを作っておく。
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現在販売されている諸々のWinDVDのバージョンは2.3だが、このパッチで2.3.55にアップデートできる。安定性が向上する模様。
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PowerDVD(3.0)の場合、設定で「グラフィックカードの再生支援機能を使用する」をオンにしないと、一般のDVDプレイヤーと同様な色差アップサンプリングのがたつきが発生する。同じ設定はWinDVDにもあるが、グラフィックカードによってはこれをオンにするとかえって画質が悪くなることがあるようなので、切り替えて試してみる必要がある。
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フィルム・ソースの画質はWinDVD2.3.55(再生支援オフ)>WinDVD2.3.55(再生支援オン)≒PowerDVD3.0(再生支援オン)>PowerDVD3.0(再生支援オフ)≒S9000ES
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ビデオ・ソースの画質はPowerDVD3.0(再生支援オフ)>WinDVD2.3.55(再生支援オフ)≒S9000ES>WinDVD2.3.55(再生支援オン)≒PowerDVD3.0(再生支援オン)
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2-2素材(Wait & Seeなど)の画質はWinDVD2.3.55(再生支援オフ)>PowerDVD3.0(再生支援オフ)>S9000ES>WinDVD2.3.55(再生支援オン)≒PowerDVD3.0(再生支援オン)。なお、以上3種類の比較はグラフィック・カードその他の条件によっても変わってくるものと思われる。
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アップサンプリング/リサイジング性能
DVDビデオの規格では映像信号がY:U:V=4:2:0で収録されており、一般的にはDVDプレイヤーの中でこれにアップサンプリングがかけられて4:2:2や4:4:4などに変換されている。これはどういうことかというと、もともとのDVDの信号では輝度信号(Y)こそ720×480の解像度で記録しているものの、色差信号(Cr・Cb)はその縦横半分、つまり360×240の情報しかもっておらず、しかもフィールド単位で交互に収録するという間引き方がなされている(4:2:0。これは、人間の網膜が色に関しては明るさほど分解能が高くないことに基づいた圧縮方法である)。この色差信号に間引かれたフィールドを補間し(→4:2:2)、さらに最近のプレイヤーでは解像度を720×480に引き上げることに相当する変換がなされる(→4:4:4)。
DVDプレイヤーのカタログを見ると、いかにオーバーなサンプリングがなされているかが誇らかに謳われていることが多い。しかし信号の補間が粗悪な場合は、高サンプリング・レートに合わせたフィルターでシャープにこれが浮き彫りにされることと相まって、弊害も大きいのである。そして、現行のほとんどのDVDプレイヤーの色差信号のアップサンプリングは質の良いものではなく、これは原色、特に赤の輪郭が階段状になったりスダレ状になったりすることに端的にあらわれている(症状の出方は、プレイヤーや映像の部分によってスダレ中心、ジャギー中心と、若干癖が異なる。なお、ファロージャのプロセッサやソニーのDRCは色差信号を鈍らせることによってこの問題を目立たなくさせているが、もとから良質な補間をする方が理想的であることはいうまでもない)。
この問題は原色部分以外にも、目立たないながらもいたるところに影響を及ぼしているようで、HTPCの絵と見比べてみるとDVDプレイヤーの絵は全体に荒く見える。この点に関しては、HTPCの方が高画質というよりもむしろ、多くのDVDプレイヤーの絵に、見過ごされてきた欠陥があったというべきかもしれない。
左:S9000ES 右:HTPC
『ブレードランナー』(国内版)のタイトルより。
LT150Jのリアルモードにて映写し、HTPC側もほぼ同条件となるようにVGAで出力している。
これは再生状態で撮ったもので、S9000ESはポーズをかけると写真の症状は消える。
なお、この症状はうちの個体に特有な現象ではなく、いくつかの店頭機でも確認済み。
DVDプレイヤー側の問題と共にHTPCによって大きく改善されるのは、プロジェクタ側の画素変換の質の問題である(液晶やDLPなどの固定画素方式の場合)。画素変換の性格はプロジェクターによっても違いがあるが、これまでに見たものは、なめらかだけれども甘い(L10000など)、シャープだけれどもソースのピクセル構造が目立つ(LT150J)、あるいはその中間(VW10HTなど)といった感じで、いずれも一長一短であった。
HTPCの出力解像度をプロジェクタのパネル解像度に合わせれば、プロジェクタ側での変換をパスできることのみならず、リサイジングとRGBへの変換がともにアナログ変換に先立って行われるというメリットがある。その結果は、一目瞭然である。
左:S9000ES→LT150J 右:HTPC→LT150J
『風と共に去りぬ』(国内版)より、中盤キスシーン直前の馬車の上のレット
(ただし、完全に同じコマではない)。
S9000ESは525p出力、HTPCはXGA出力。ポーズをかけて撮影。
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HTPCのサウンド
DELTA
Dio 2496からのデジタル出力をアンプでデコードするという条件においては、個人的にS9000ESのデジタル出力と遜色を感じない。感じないどころか特に低域はHTPCの方がむしろ良いように聞こえる。しかしビットストリームならいざしらず、エンコードされたデジタル信号で音の違いが発生し得ることに日頃疑念をもっていただけに、どう説明して良いのかよくわからない。
なお、同カードではアナログ出力が2チャンネルしかないのでドルビーデジタルやdtsをデコードして出力することは不可能。 DELTA
1010という、外付けのコンバーターとセットになった上位カードを挿せばかなり高品質な5.1chアナログ出力も可能なようである。 ここに、プロシードのプリとの比較が載っている。
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外部ソースのラインダブラーとして使う
フリーウェアの dTVと、dTVがサポートするキャプチャー・カードがあれば、LDなどの外部ソースに3-2逆変換をかけた上で高品質なリサイジングをしてプロジェクタに入れることができる。実際に試してみると、i/p変換そのものは能書き通りきちんとできる。しかしリサイジング前の画質が、手持ちのVC-2001に拮抗してくれない。S/Nが幾分か劣っているし、何よりシャープネスを効かせることができない。劣悪なLDプレイヤーを使っているので、これは痛い。
というわけで現在のところ、VC-2001を代替させようという目的においては必ずしも満足な結果を得られていない。何か改善の方法が見つかれば更新する。
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HTPCの欠点
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最大の欠点は、DVDプレイヤーとは比べものにならないくらいとにかく最初のセットアップが面倒くさいことである。本体の自作や各種ソフトのインストールはもちろんだが、そのあと処理落ちのない再生が可能な状態に持っていくのにいくらか試行錯誤を要した。また、ワイヤレス・キーボードとプログラマブル・リモコンがあれば、DVDプレイヤーにかなり近い操作性を持たせることは可能であるものの、YXYなどのもろもろのユーティリティのショートカットなども憶えさせなければならないため、これのセットアップもかなり手間がかかる。
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比較的静かな電源を使っているので思ったほどうるさくはないが、ファン・ノイズはある。もっとも、掲示板をみるとさまざまな方法でファンレスを実現した強者もいるようであるが。
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起動にいくらか時間がかかる。
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シャープネスの調整が、現在のところない。
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その後の実験・変更
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ビデオカードをATI RADEON 32 DDRに変更。AVScience ForumでGeForceよりRADEONの方が高画質だという投稿が散見され、かつ最初の実験に使ったATI Rage入りのPowerBookの映像がかなり好みの画調だったこともあり、ELSA GLADIACと差し替えてみた。値段的にはGLADIACの2/3で、3D性能的にはダウングレードになるものの、確かに色がさらに自然な感じになり、精細感も幾分か上がった。これはGeForce2 GTSのRAMDAC(チップ内DAC)が8bit/200MHzなのに対し、RADEONのそれが10bit/350MHzであることが一つの要因になっているものと思われる。
しかし噂通り、ドライバはELSAに比べるとかなりプアで、カスタム解像度/周波数の自由度が乏しく、またオーバーレイ層に対する画質調整がブライトネスしかない。XGAパネルのプロジェクタを使用しているのでカスタム解像度など要らないのだが、画質調整が貧弱なのは痛かった。RADEONはモニタでみると大変自然な色を出すのだが、NDフィルターをかましたプロジェクタで映画を見ようとすると彩度がちょっと物足りないのである。
そこでしばらくGLADIACに戻すべきか否か迷っていたのだが、次の発見によってやはりRADEONで行くことになった(ちなみにカスタム解像度についてはPower Strip 3.0で対応可能になると噂されているが、現在のところ定かではない)。なお、特に国内ではMatroxのカードの画質も評判だが、機会があれば比較してみたい。
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再生ソフトをATI DVD Player4.0に変更。しばらくWinDVD2.6.4(ここのパッチで2.3からアップグレード可能)とPowerDVD3.0のどちらをメインにすべきか迷っていたのだが、この裏技情報を発見、早速RADEONについてきたATI DVD Playerを試してみた。
regeditで\HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\ATI Technologies\Multimedia\Features\DVDのHide Video Page 0x00000001(1)を0にすると、なぜか隠されていた画質調整タブが設定項目に出現、コントラスト、ブライトネス、彩度、色相、さらにはガンマまで調整可能になるのである。特にオーバーレイに対するガンマ調整はGLADIACのドライバにも欠けていた機能で、これで一気にRADEONの弱点が大幅に克服された。デコード画質もRADEONとの組み合わせでは24Fソースに関してはWinDVDに勝るとも劣らない優秀なもの。最初AC-3が出せないという問題に直面したものの、DVD Genieをいじくっているうちに何とかこれも解決した(条件は未だよくわからないが)。
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DELTA Dio 2496のアナログ出力が高音質であることを発見。正直に言うとアナログ出力はさすがに専用機にかなわないだろうとバカにしていたし、使用する意味もあまり感じていなかったので、アンプと結線すらしていなかった。ところが掲示板でアナログ出力の質に関する問い合わせがあって試聴してみたところ、これが予想外に良いのである。もちろん、2ch出力しかないので2chソースやCDでの話だが。
最初はS9000ESに比べて痩せた固い音に聞こえ、やっぱりこんなもんかという印象を抱いたのだが、比較を繰り返すうちにだんだんDio 2496の方が品位が高いように聞こえてきた。大変シャープで、オケの各楽器が緻密に分離する。S9000ESで聞き返してみると、厚ぼったい響きでダンゴになっている。海外の掲示板ではすでに高音質だとのコンセンサスができあがっているが、国内の掲示板でもDELTA 1010からのアナログ出力が同価格帯のCDプレイヤーのそれを凌いでいるとの投稿がゴールドムントのアンプ使用者から上がっているのを見て、HTPCはピュア・オーディオ的にも相当な可能性があることを確信した。ちなみにDELTAシリーズでCD再生をするにはWinDVDか、WinAMPと同プラグインのCDReaderが必要。基本的には後者の方がお薦め。
なおM-AudioはHTPC市場を意識し始めたのか、5.1chアナログ出力可能なこのようなカードの発売を予定しているらしい。
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