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随筆家・堀多恵子さん逝去

辰雄終焉の地に定住

自宅で取材に応じる堀多恵子さん(今年1月26日、軽井沢町追分で)

 16日に亡くなった随筆家の堀多恵子さん。4月に入って自宅トイレで倒れ入院、数日前に退院してから寝たきりになっていたといい、最期は養女らに見取られた。

 作家堀辰雄の夫人である多恵子さんを軽井沢町追分の自宅で取材したのは、今年1月下旬。「肺が悪いから外には出られないの」と話し、鼻からチューブで酸素を吸入していたが、元気そうに辰雄との思い出を語ってくれた。

 辰雄が亡くなってから、東京と辰雄終焉(しゅうえん)の地、追分とを行き来していたが、約20年前から追分に定住。話を聞いた頃は最低気温が零度を下回る日も珍しくなく、自宅の窓から見えた木々は白く凍えていた。そんな景色も多恵子さんは「追分の冬が好きなんです。こうやって窓から外を眺めているんですよ」と穏やかに話した。

 辰雄の代表作「風立ちぬ」については、「あれは恋愛小説じゃないんです。『命の大切さ』を伝えているんです。一生懸命生きなさいって」と話した。辰雄が亡くなって60年近く。その年月を振り返り、「辛かったこともあったけど、今となっては幸せでしたよ」と言ってほほ笑んだ姿が印象的だった。

(前田啓介)

2010年4月18日  読売新聞)
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