1ヵ月仕事してみて、別に何かが変わったわけではない。面接に行っても断られて、同じように引きこもる毎日が始まるだけ。また同じことを繰り返すのは嫌だなという思いが、最後の踏ん切りになって、声をかけてくれた人に「あのときは断ったんですが、もう1度やりたい」と、電話していた。

 「2度にわたり、救ってもらったなという感覚が今でもあります」

 小澤さんは「経験者」という理由で、同塾のスタッフに抜擢された。入塾者の中には、高収入の会社を辞めたような高学歴の30代も少なくない。1年くらい仕事に就かず、社会に出ていかないので、親などに言われて入ってくるという。

 「収入ではない。やりがいといか、職場の雰囲気や人間関係のほうが、大事だと言うんですね」

高い給料でなくても平等な関係
「協同労働」のススメ

 マスメディア上では「格差社会」が叫ばれ、ワーキングプアの人たちは「負け組」というレッテルを貼られている。

 もちろん、生活を成り立たせるための所得は必要だ。ただ、今の働く社会を見ていると、正社員であっても、競争から脱落しないために、相当な過重労働を強いられた末、つぶれていく人もいる。

 「貨幣価値だけで測られているような“負け組”という位置づけは、違うのではないか」

 小澤さんは、自分たちが仕事を起こせるような仕組みや、社会の後押しが必要なのではないか、と考える。

 「平等な関係の中だからこそ、できるつながりがある。そんなに高い給料でなくても、きっと、そこに救われる人たちがいる。あるいは、それをステップにして、再び経済社会の中に戻っていく人たちもいるかもしれない」

 小澤さんたちのいるワーカーズコープでは、5月9日(日)午後1時から、千葉県の市川市市民会館ホールで、『「協同労働の協同組合」法制化記念フォーラム』を開く。

 雇用破壊が叫ばれる中で、「みんなが出資し、みんなで経営し、みんなで働く」という働き方を保障する「協同労働の協同組合法(仮称)」の法制化を目指す「1000人規模」の大集会。すでに、超党派の国会議員連盟には193人が名を連ね、今通常国会で法案が提出され、5月には衆参両院を通過することが予想されているという。

 トークセッションには、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠氏や、事業仕分け人で前我孫子市長の福嶋浩彦氏、元連合会長で法制化市民会議会長の笹森清氏が参加する予定だ。問い合わせは、協同労働の協同組合法制化をめざす市民会議 事務局(TEL03-6907-8040)。

 社会変革が起こってくれることを期待しつつ、小澤さんも今は、その“変革”のうねりの真ん中で、フォーラムの準備に追われている。

「協同労働の協同組合」法制化をめざす市民会議

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、大手通信社や制作会社の勤務を経て、フリーに。月刊誌や週刊誌、夕刊紙で、ひきこもり現象や健康医療、マンションなど、医・食・住のテーマを主に手がける。著書は、『ハッピー リタイア マニュアル』(ゴマブックス)、『痴漢「冤罪裁判」』(小学館文庫)、『「引きこもり」生還記』(小学館文庫)など。


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