|  | きょうの社説 2010年4月18日
◎新幹線に伝統工芸 「走るショールーム」の活用を
2014年度開業予定の北陸新幹線の車両で、自慢の伝統工芸を使ってもらうために、
金沢市が動き出した。連日、数多くの乗客の目に触れることになる車両の内装などに採用されれば、相当のPR効果が見込めよう。県内にはほかにも「候補」がたくさんあるのだから、県や金沢市以外の市町なども、金沢市にならってJRへの働き掛けを本格化させてはどうか。せっかくの「走るショールーム」を積極的に活用しない手はないだろう。 輪島塗や九谷焼、山中漆器などの技術は、工夫次第で車両の高級感を演出する際などに 大いに生かせるに違いない。どのような使い方をすれば最も映えるのか。開業まであと5年、車両が決まるのはそれよりも少し前になることが予想され、残された時間はそれほど長くはないが、単に「使ってほしい」と求めるだけではなく、関係者が知恵を結集してより具体的な提案を重ねていきたい。 北陸新幹線は、この地域に活力をもたらす切り札として、大きな期待を受けて整備が進 められている。その車両で、もし提案に基づいて伝統工芸が使われれば、産地は活気づくだろう。JRは地域貢献も意識し、前向きに沿線の声を受け止めてほしい。 九州新幹線で、来春の全線開通に向けて09年8月から導入されている車両「つばめ新 800系」には、九州の伝統工芸がふんだんに取り入れられている。電話室にはオリジナル柄の久留米絣ののれんが掛かり、壁には、木彫りや彫金、博多織などの額が飾られているといった具合である。鹿児島産のクスノキや八代産のイグサなども、一世代前の車両に続いて使用されているという。 好みの違いはあるだろうが、こうした地域色あふれる車両は、特に観光目的で新幹線を 利用する乗客には、歓迎されるのではないだろうか。駅に到着してから、駅を出発するまでの間だけが旅行ではない。移動中にも「旅気分」を満喫できるような車両を実現するために努力することは、広い意味では、北陸新幹線で石川を訪れる人々に対するもてなし向上策の一環とも言えよう。 
 
 
 
◎教員の人事権移譲 無視できぬ大阪の動き
大阪府が公立小中学校教員の人事権を市町村に移譲する方針を文部科学省が了承したこ
とで、都道府県教委から市町村教委への人事権移譲が実現する可能性が高まってきた。制度上の詰めが残されているが、正式に決まれば全国初のケースとなる。 石川、富山県では、金沢市、富山市が県教委に人事権の移譲を求めており、両県にとっ ても無視できぬ動きである。大阪府が先行すれば、両県の教委も人事権移譲を視野に入れた議論を迫られることは必至である。 都道府県が持つ公立小中学校の教員の人事権は、すでに政令市には移譲されている。中 央教育審議会は2005年に「より教育現場に近いところに降ろすべきだ」として中核市への移譲を答申し、政府の地方分権改革推進委員会も同様の勧告を出していた。 このように方向性が示されていながら実現しなかったのは、都道府県教委から「大きな 都市に優秀な教員が偏在する」「全県的な教育水準の維持が困難になる」との懸念が出されたからである。 これに対し、大阪府の橋下徹知事は、広域連携する府北部の5市町を皮切りに、特例条 例を制定したうえで早ければ2011年度からの人事権移譲を目指す方針を明らかにした。知事と会談した鈴木寛文科副大臣も「課題が発生すれば解決方法を一緒に考えたい」と支援する姿勢を示した。 大阪府の場合、すでに大阪市、堺市の政令市に人事権が移譲されており、府のやり方が 他の地域にそのまま当てはまるわけではないが、条例制定による権限移譲が可能になれば、他の自治体にも道を開くことになる。 金沢市、富山市を含む中核市市長会は、人事権移譲を求める働きかけを続けてきた。小 さな自治体は教委同士の連携など広域的な対応が必要としても、政令市に続いて中核市へ権限を移すことは分権の流れとしても自然である。 中核市に人事権を移譲した場合、広域人事交流の仕組みをどのように構築し、全県的な バランスを取っていくか。そうした課題を真剣に議論する時期にきている。 
 
 
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