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【昭和正論座】中国の「自給自足」に驚く 東大教授・佐伯彰一 昭和50年4月25日掲載 (4/4ページ)

2009.4.18 08:35
佐伯彰一 佐伯彰一 

 こうした文化、文学上のまことに強烈果敢な国粋主義、自己充足主義に、ぼくは激しい衝撃を受けた。世界の現状にてらして、いやわが国の状況とくらべて、何という相違、何という距離だろう。とくにわが国はまた、ほぼ完全な文化輸入国であり、外国の文化、文学なしでは、夜も日もあけない有様ではないか。イデオロギーの相違は別として、外国の文化、文学に対する態度において、中国とわが国は文字通り、対蹠(たいしょ)人同士ともいいたい、極端な両極をなしている。

 頑として自給自足をかかげる主体国と、おじぎ草のように他国に敏感な反応国。この両国が、一体いかなる形で「文化交流」を推し進めればいいのか。北京からジェット機で四時間足らずという空間的な近さを思い合せながら、文化的な距離の遙かさに茫然(ぼうぜん)たらざるを得ないのだ。(さえき しょういち)

 【視点】 英米文学者の佐伯彰一氏が1975年、文化使節団の一員として中国を訪れたときの見聞録である。佐伯氏は、上海郊外で見せられた人民公社に「外国人向けのショーウインドー」との印象を抱きつつ、農業中心の自給自足をどこまで守り通せるかに疑問を持った。

 また、中国の書店に毛沢東全集やマルクス、エンゲルスの著作ばかりが並び、外国文学の翻訳書が全く見当たらないことにも気づき、文化面での国粋主義に衝撃を受ける。「頑として自給自足をかかげる主体国」の中国と「おじぎ草のように他国に敏感な反応国」の日本の文化交流の難しさを指摘した。文学者として、特派員が報じない中国の一面を伝えている。(石)

 産経新聞「正論」欄の35周年を記念し、当時掲載された珠玉の論稿を再録しています。

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