広島−中日 9回裏1死満塁、代打前田智にサヨナラ打を浴び、がっくりとマウンドでうなだれる浅尾=マツダスタジアムで(布藤哲矢撮影)
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中継ぎ陣の不敗神話がついに崩れた。16日の広島戦(マツダスタジアム)。中日は同点の9回、浅尾が1死満塁のピンチを招き、最後は前田智に中前へ痛打を浴びた。サヨナラ負けも、鉄壁の中継ぎ陣に黒星がつくのも今季初。初失点の浅尾は敗戦の瞬間、マウンドにしゃがみ込んだ。だが、たったの1敗。うつむく必要はない。悔しさを力に変え、また新たな不敗神話を作ればいい。
首位に立っていた竜の看板に、初めて傷が付いた。開幕から19試合目にして初のサヨナラ負け。そして敗戦投手は浅尾。初めてリリーフ陣に黒星が付いたのだ。
幕引き役となった浅尾は試合後、うつむきがちに振り返った。
「アウトも取っていたし、前田さんも2ストライクまで追い込んでいました。だから投げる場所をもっと考えないといけなかった。その前に四球を出したのもよくなかった」
同点の9回裏。1死から赤松に安打され、次の東出は四球で歩かせた。梵も安打で満塁。ここで代打の切り札・前田智が出てきた。フォークボール2球で2ストライク。浅尾が悔やんだ3球目。139キロのフォークを中前に転がされた。
「もっと考えないと…」。冷静に、もっと難しいコースを選択しておけば…。そんな後悔が胸中に渦巻いた。だが、責められない。ここまでの戦いを支えてきたのは浅尾らリリーフ陣なのだ。
先発の完投は3月27日に広島戦で完封したチェンだけ。それ以外の18試合でブルペン陣が出動。そして一度も負けなかった。前日(15日)までの7敗はすべて先発の黒星。リリーフ勝負に持ち込めば、落合監督の采配(さいはい)と自慢のブルペンがかみ合って勝率100%だった。
とうとう神話崩壊となった広島の夜。落合監督は結果をのみ込むように受け入れた。「結果から言ったらサヨナラ負けになる…」。仕方がない。「みんな一生懸命やっているのは分かる。空回りしているのも分かる」。しかし、敗戦には敗因があった。「ただ、局面局面にある一球一球、頭を整理していかないと、こういうひどいゲームになると思うよ」
振り返れば、つぶした得点機が複数あった。1回は1死二塁。森野の左前への飛球を左翼手・フィオが足から滑り込んで好捕し、三塁に近づいていた二走・荒木は戻れず、併殺に。9回も飛び出しがあった。先頭・小池が左前打と敵失で無死二塁。次の荒木の打席の初球。バントを空振りした。小池は二塁へ戻れず、アウトになった。
目に見えやすい部分はこの辺りだろう。指揮官の目にはもっと多く、微細な局面の1球まで「頭を整理」できていないプレーが見えたのだろう。とはいえ、必死に前を向いた上での空回り。切ないサヨナラ負けだ。
ある意味、頭を整理することで今後の上積みにつながる黒星。そして看板のリリーフ陣のタフさは変わらない。浅尾は「(調子は)悪くはないですし、今日のゲームをムダしにしないように、次がんばります」と、前を向いた。一つ崩れても、新たにつくり直せばいい。それが神話になる。
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