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【正論】政治家もうつ病に理解深めよ 精神科医、国際医療福祉大学教授・和田秀樹 (3/3ページ)
このニュースのトピックス:メンタルヘルス
復活したノルウェー首相
それだけでなく、うつ病になると、ものの見方が悲観的になったり、いろいろな可能性が想定できなくなったりする。また思考力や集中力も衰える。このような形で判断力に影響を与えるとされるから、病気のまま政治家を続けるのは、好ましいことではない。
もちろん、病気が治れば、普段通りの判断や思考ができるのであるから、むしろうつ病である期間は、休養していたほうが誤った判断をしなくてすむのである。
だから、堂々とうつ病を告白して、休養してもらったほうが国益にかなうのだ。
10年ほど前に、ノルウェーのボンデビック首相(当時)がうつ病を告白して、首相職を1カ月ほど休職したことがある。これが、素直に認められて、復職をした際には、喝采(かっさい)をもって受け入れられたそうだ。
ひいてはこのことが、国民のうつ病に対する偏見を大幅に緩和したとされる。うつ病は治る病気であり、治れば、以前どおりのすばらしい能力を発揮できることを国民に示したからだ。
ノルウェーも以前は自殺の多い国だったが、現在の自殺率は日本の半分程度となっている。政治家自身が、うつ病について正しい知識をもち、堂々と告白できるくらいに偏見を捨てることが、自らのメンタルヘルスや判断力に好影響をもたらすだけでなく、国民のメンタルヘルスを守り、自殺を減らすのだ。
政治家に、正しい自殺予防教育を受ける機会を設けることを切に望みたい。(わだ ひでき)