MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。
[PR]

ニュース:政治 政局政策地方行政選挙写真RSS feed

  • メール
  • メッセ
  • 印刷

【昭和正論座】憲法の絶対視に異議 劇作、評論家・福田恆存 昭和50年5月19日掲載 (2/5ページ)

2009.4.11 08:18

前文と第9条だけが対象

 戦前の大日本帝国憲法を欠陥憲法と言い得る自由は、閣僚はもとより国民にも全く無かった。自由が無いばかりでなく、そんな事を口に出したら、身辺に危険が及んだ。戦後の新憲法はそういう事の無いようにというのが、その制定の根本的動機であり、他の如何なる点に欠陥があろうと、それだけは長所として認めねばならぬ、少なくとも私はそう観念している。「当用憲法論」を始め、機会あるごとに現行憲法のごまかしを指摘して来たのも、その一点だけを頼りにしていたからである。この世に絶対なるものは存在しない。人々は神仏も信じてはいない。それなのにどうして憲法だけが絶対者たり得るのか。賃上げ要求のために道路交通法を破って顧みない人間が、どうして、憲法だけを恐れるのか、私には全く理解出来ない。私は道交法は守っても、現行憲法など頭から無視して生活している。私ばかりではない、大部分の国民がそうしているとしか思えない。

 もう十年も前になろうか。憲法記念日にNHKの座談会に出席した事がある。席上、私は大江健三郎氏に向かって「あなたは今の憲法を擁護すると言うが、第三条はどうか、天皇を国民統合の象徴として認めるのか」と問いただしたところ、氏は沈黙して何も答えなかった。氏ばかりでない、稲葉法相の欠陥憲法という言葉にいきり立っている欠陥議員諸氏は、第三条に欠陥を認めてはいないのか。議会の開会式に天皇の臨御(りんぎょ)を拒否し、出席しなかった共産党が第三条に欠陥を感じていないはずは無い。とすれば、右も左もすべてが現行憲法を欠陥憲法と見做して認めていない事は明白なる事実である。護憲派は憲法と言えば前文と第九条だけと思い込んでおり、その点は改憲論者も同様らしく、従って、両者の衝突は意地と面子のための不毛な論議に終始するだけである。

 審議を長引かせ、会期延長に持ち込む事は良いとしても、憲法批判をしたら大臣の首が飛ぶというような戦前の「絶対憲法制」に逆行しないよう、与野党両者に警告して置く。

PR

PR
PR
イザ!SANSPO.COMZAKZAKSankeiBizSANKEI EXPRESS
Copyright 2010 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。