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【正論】権威は皇室に連綿として在る 立命館大学教授、大阪大学名誉教授・加地伸行 (2/3ページ)

2009.4.10 04:47
このニュースのトピックス皇室

 その極致が江戸時代の藩である。藩主は将軍家に従って土地を所有し、一方、朝廷から律令制に基づく位階を受けた。実(土地)は私的、名(位階)は公的という形だ。これが実は我国に幸いした。各藩の行政官僚は武士であり、末端に至るまで藩主に忠誠心があった。そして明治時代となり廃藩になるものの、多くの元武士官僚が明治政府の官僚となったとき、藩主への忠誠心が天皇へのそれへと平行移動したのである。その結果、日本の官僚は公の精神が強く、私することが少ない。

 ところが中国の場合、科挙官僚は皇帝に対して強烈な忠誠心があったが、ごく少数であり、圧倒的大多数の一般官僚には忠誠心を培う機会も環境もなかった。そのため、一般官僚には公の精神が乏しく、私すること(収賄)が多かった。それが今に至っている。

 つまり、公務員の汚職発生が、中国では多く日本では少ないのは、律令制の実質化(中国)と形式化(日本)との差が背景にある。その上、律令制の実質化は皇帝に権力・権威をともに保証したが、律令制の形式化は天皇から権力を削(そ)ぎ落とした。この律令制は明治維新まで続いたので、位階を与える等の権威は存続した。権力を持つ幕府も天皇の権威をついに奪うことはできなかった。

 天皇には、少なくとも室町時代以降、権力がなかった。一方、中国皇帝には権力があったので、それを奪おうとする者が現れる。これが日中両国の歴史や人間の在りかたの大きな差となってくる。

政治的安定もたらす中核

 すなわち、日本では、権力の交替があっても、天皇の権威は奪われず常に権力の上に立ってきた。中国では、王朝の交替とは権威・権力の両方を奪うことであった。

 今日、世界の正常な国では、政権(権威・権力)は民主主義すなわち選挙方式によって承認される。だから、選挙結果によって権威・権力を失うことがある。そのとき、一種の不安定な政情となる。しかし、我国はそうではない。我国の政権には、権力はあるが権威はない。首相は権力者ではあるものの、権威は皇室に在る。

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