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【正論】ミサイル防衛の改良が急務だ 拓殖大学大学院教授・森本敏 (1/3ページ)
北の発射技術に格段進歩
今回、北朝鮮が発射した「飛翔(ひしょう)体」が衛星打ち上げ用ロケットであったか、ミサイルであったかを判断するにはさらに技術的な分析を要するようである。しかし、衛星打ち上げ用ロケットだったとしても衛星打ち出しに必要な速度に達しておらず、通信衛星も軌道に乗っていない。実験は失敗だったと思わざるを得ない。他方、ミサイル発射実験だとしても、第2段目以降の切り離しに失敗した可能性もある。ただ、北のミサイル技術が進歩し、弾道ミサイルの射程が実験のたびに延長されてきたことは明らかであり、これは容易ならぬ脅威である。
発射の狙いとしては国威発揚といった国内政治的要因もあろう。そしてミサイルの射程延長を図ることで米国へのミサイル脅威を示威し、自らの外交手段とポジションを強化するという外交上の要因、さらに中東諸国へのミサイル兵器売却を促進するという側面も考えられる。しかし何よりも、北がミサイル開発計画の一環としてこの発射実験の成功に利益を見いだしていたことが大きい。
これらの理由から、試験通信衛星を運搬ロケットによって打ち上げる旨をあらかじめ、国際機関に通報し、国連安保理による追加制裁や日米両国のミサイル防衛による撃墜を未然に回避しようとしたのであろう。
制裁での意思表示の他に
日本に飛んでくる飛翔体でミサイル防衛による対応が可能なものは、今回のテポドン級より射程の短いノドン級程度のミサイルである。今回はミサイル防衛システムで対応できる範囲内に落下物がなかったので、これによる対応にはならなかった。政府の対応では発射前日に情報活動で少し混乱した面があったが、発射当日の対応ぶりは、従来の危機管理対応に比べて格段の改善が見られた。発射5分後には国内にほぼ通報されるという迅速さは見事である。
さて、問題は今後にある。われわれは今後、どのように振る舞うべきか。