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【正論】「小沢氏問題」が露呈したもの 京都大学大学院教授・中西寛 (2/3ページ)
このニュースのトピックス:正論
軽はずみな「国策捜査」発言
検察の判断の背景には、西松建設による違法な裏金作りに関する捜査があったことは確かだろう。西松による小沢代表への献金問題が浮上したのもこの捜査の延長線上にあると思われる。その点では、小沢代表をねらい撃ちにした政治的動機が背景にあったというよりは、純粋の法執行の一環であったとは推定できる。
しかし純粋の法執行がかえって政治に影響をもつこともある。政治資金規正法については上記のようにグレーゾーンが大きく、検察当局に個々の政治家の運命を左右する大きな裁量を許しかねない性質を持っている。もちろん政治資金のあり方を合理化し、規正法も改善すべきだが、法律の執行については当局者は良識をもって判断すべきであろう。司法はあくまでルールの番人であって、政治家や国民によって営まれる政治という競技の帰趨(きすう)そのものを左右してはならないからである。
他方、民主党が初期の段階で「国策捜査」という言葉を簡単に口に出し、また政府首脳も捜査情報が政府に共有されているかのような発言をしたことは、法の公平さへの信頼を貶(おとし)める不見識な対応であった。日本には近代より前に、それなりの法の支配の伝統があるようであり、権力者が法を利用して政敵を攻撃する行為は一般的に慎まれてきた。そこに日本流の自由さの源泉があるとも見てよいのである。
その意味で明確な根拠なく検事総長を国会に召喚するとか、まして時の政権がその政権への官僚の忠誠を試すといった政治の行政への度を越えた介入については慎重でなくてはならない。この点では特に「政治主導」を掲げる民主党政権においてこそ司法の独立を政治がいかに守れるのかという懸念がつきまとう。