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【昭和正論座】日欧関係の重要性認識を 京大教授・高坂正堯 昭和50年5月17日掲載 (2/4ページ)

2009.3.15 10:36
このニュースのトピックス英王室

中級国家の利益の共通性

 あるいは、ヨーロッパ共同体に対する中国の関係と日本の関係を比較してもよい。前者はより生々しい政治的性格を持っている。たとえば、中国は最近、共産主義国のなかで初めてヨーロッパ共同体と正式の関係を作り上げたが、そこにはソ連を西側において牽制(けんせい)しようという考慮が作用している。それに対して、日本とヨーロッパ共同体との関係にはそうした色彩はほとんどない。それは秀れて貿易上の関係であり、それにある程度まで文化的な交流が付随しているものである。

 ところで、日本とイギリス、あるいは日本とヨーロッパ諸国との関係が上述の性格のものであるということは、それを政治的に気楽なものにしているだけではない。そうした形の生き方に、すなわち、権力政治的関係をできるだけからませずに、通商と文化交流をおこなうということに「中級国家」として日本とヨーロッパは重要な利益の共通性を持っているのである。

 実際、ヨーロッパと日本は二つの点で類似している。まず、それは国際政治の上で活躍する力、とくに軍事力を持っていない。もちろん、ヨーロッパ諸国は日本と比べて数段大きな軍事力を持ち、イギリスとフランスは核兵器を持っている。しかし、それらは世界の権力政治におけるアクターとはなりえないし、大体のところ、アメリカとの関係なしに自力でその安全を守りえないのである。第二に、ヨーロッパも日本も、貿易が自由に、そして活発におこなわれなければ生きて行けない。GNPと貿易の比率において、日本が約二〇%、ヨーロッパ共同体が域内貿易を除くと二〇%弱で、アメリカの九%、中国の五%強、ソ連の四−五%であるのを見れば、それは理解されよう。したがって、日本やヨーロッパ諸国は、相互依存関係が健全、かつ円滑に機能し、権力政治と余りかかわることなしに貿易がおこなわれ、文化的交流がなされることに基本的な利益を持っていると言えるであろう。すなわち、それは望ましい国際政治のイメージを共有している。したがって、その関係は、普通に考えられている以上に重要なのである。

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