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わかる?:DV未然防止に力 福岡県警、全国初の対策課

 <分析 今がわかる!>

 ◇顕在化しにくい犯罪、早期介入に法の壁

 幼児虐待や性犯罪、家庭内暴力「ドメスティックバイオレンス(DV)」などの予防や捜査を専門とする「子ども・女性安全対策課」が1日、全国の都道府県警察で初めて福岡県警に発足した。子どもや女性が被害者となる犯罪は発覚しにくい上に警察が介入するハードルが高く、過去には対応の遅れが被害の拡大を招いたケースも少なくない。警察が苦手とする分野とも言われる犯罪に積極的に対応する県警の取り組みに注目が集まる。【川名壮志】

 「姉はいきなり殺されたんじゃない。ずっと夫の暴力が続いていた。殺されてから警察に逮捕されても姉は帰ってこないんです」。鹿児島市の30代女性は涙ながらに訴えた。

 女性の姉は04年10月、別居した夫にナイフで刺殺された。夫の暴力に耐えかねて何度も鹿児島県警に相談したが、被害届は受理されなかった。逃げるように別居したが、転居先をすぐに見つけられ、凶刃に倒れた。DVがエスカレートした果ての悲劇だった。

 01年のDV防止法の施行後、警察へのDVの相談と被害届は増え続け、昨年は2万8158件(前年比11・7%増)と過去最多を記録。だが、加害者に対する被害者への接近禁止など裁判所による保護命令が出たのは2429件(同4・1%減)と1割に満たない。

 背景には、密室の犯罪ゆえに発覚しにくい上、司法の介入を妨げる特有の事情がある。あるDV被害者の30代女性が「優しい時はめちゃくちゃ優しい。それでつい許してしまう」と話すように、複雑な感情に揺れ、被害を訴えないケースもある。

 更に、警察が介入するには法律の壁も立ちはだかる。同じ犯罪でもストーカー規制法(00年施行)は加害者に対して警察が警告を発する権限があり、検挙など素早い対応が可能。しかし、DV防止法では、警察は裁判所の保護命令に加害者が違反した後にしか動けないのが実情。警察内部からは「早期介入には法改正が必要」との声も漏れる。

 福岡県警の子ども・女性安全対策課は、DV以外にも性犯罪などを専門とする複数の特捜隊で編成され、要員が少ない署でのケースにも対応する。専門部署の設置でDVの相談受け付けも充実させ、迷う被害者には説得、助言し、被害拡大防止を図る。丸山裕司課長は「検挙よりも未然防止に力を入れて被害者を生み出さないことが大切」と話している。

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 ■ことば

 ◇DV防止法

 主に夫婦間や内縁関係などの暴力が対象。被害者の申し立てにより、裁判所が保護命令を出す。加害者に対する6カ月間の接近禁止命令と2カ月間の退去命令があり、違反した場合に警察が検挙する。申し立て前に警察に相談するのが前提だが、命令前に警察が加害者を警告したり、検挙する権限はなく、被害が未然に防げないとの批判もある。

毎日新聞 2010年4月3日 西部朝刊

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