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第十二話 食のテロリスト!碇ゲンドウ(挑戦編)
今日も朝の研究所にノックの音が響く。

「アスカさーんっ!いらっしゃいますかっ!」
「どうしたの洞木さん、そんなに慌てて?」

普段はおっとりとしているヒカリが慌てている様子を見て、シンジは疑問を投げかけた。

「アスカさんの助けが必要なんです」

必死な顔でそうシンジに訴えているヒカリ。
そこへ起き出したアスカが眠い目をこすりながらやってきた。

「実は、先ほど《洞木屋》に夕食の予約が……大変な人物が来店することになりまして」
「大変な人物?」
「……トーキョー知事、碇ゲンドウです。卓越した料理の技巧をほこる料理人を多数従え、トーキョーに《ゲンドウ・クラブ》という超高級料亭を有する食のデストロイヤー……」

ヒカリの言葉にシンジは怒りで肩を震わせた。

「――あ、確か新聞で、料理の月一連載企画を始めたんだったわね?」
「はい。現在、発行部数世界一の亜細亜新聞で”最低の献立”を取り上げて様々な一流料理店をバッサリと切り捨てていく企画の総指揮をとっている事が話題です」
「それでヤツは《洞木屋》を潰そうとしているわけか……!」

シンジは拳を握りしめ、いつになく怒った表情を続けた。

「はい、彼にひどいことを書かれたら、《洞木屋》のみならず、オキナワシティのイメージにも悪い印象を与えてしまいます……」
「いえ、これはチャンスよ!」

怒った表情をするシンジと、沈んだ表情をするヒカリとは対照的に、アスカは明るい笑顔で宣言した。

「でも……ゲンドウ氏にどんな料理を出せばいいのか……」
「どうしたの?」
「ええ、実は我が料亭専属の料理人が集団食中毒を起こしてしまって……誰かが差し入れで持ってきた牡蠣が原因らしいのですが……」
「それってもしかして」

シンジの言葉にヒカリは辛そうな顔をして頷く。

「彼は当代きっての美食家として通っています。しかも、鬼!悪魔!唯我独尊!傍若無人のとんでもない性格で逆ギレも得意!というウワサも絶えません」
「へえ……」
「飲食店業界にとっては恐怖の大魔王!何人もの店主が彼のせいで首つり自殺をしたという評判の人物です」

厳しい表情でヒカリの話を聞くシンジに対して、アスカは首をかしげながらポツリと呟く。

「そんなヒドイ人とは思えないんだけどな」
「おまけにメニューに”高級志向”を指定してきて、オキナワシティで雇ったスタッフでは対処のしようが無いんです。そこで、アスカさんの力をお借りしたいんです!」
「でも、料理はアタシよりシンジの方が」

アスカはシンジにチラリと視線を送った。

「じゃあ、シンジさんもいらしてください、今夜だけでいいんですっ、お願いしますっ」
「うん、わかったよ、そういう事情なら。僕にできることならなんでもいするよ」

拝んでお願いしてくるヒカリにシンジは強く頷いた。
そして、3人は直ちに《洞木屋》に向かった……。

「おーい、材料を持ってきたわよー!」
「急いで裏口に運んでくださいっ」

ヒカリに頼まれて高級食材を集めて来たのはマナだった。

「ふぃ~っ……」
「おっきな袋ね~まるでサンタのおじいさんみたい」
「ムっ、なんですってぇ!」

アスカの言葉にマナは不機嫌な顔で怒りだした。

「褒めてるのよ……で、なに?マナ一人で担いできたの?」
「港の職員たちが食中毒で倒れちゃってね。会長自らポーターの真似ごとよ」

そういって溜息をつくマナにアスカは何かを思い出したように尋ねる。

「もしかして、牡蠣?」
「……そうよ、何でわかったの?私も一緒に食べたんだけどね、どういうわけか私以外の全員が倒れちゃって……ああ、腰が痛い」

マナはそう言って自分の腰をさすった。

「まったく、背骨が折れるかと思ったわ。これじゃあ明日は筋肉痛よ……」
「それは大変ね、あはははっ」
「笑い事じゃないわよっ!」

マナは笑うアスカに向かって怒鳴り立てた。

「ごめんごめん」
「……で、この店で何かあるの?」
「それは……」
「何やっているんですか、お二人ともーっ!早く急いでくださいーっ!」

ヒカリの叫び声が店内から聞こえ、アスカは急いで洞木屋の中に入っていった。

「ちょっとーーっ!半分持ちなさいよーーっ!」

マナは走りゆくアスカの後ろ姿に怒号をあげた。

「……ではこれより調理に取り掛かります」
「うん、いつでもいいよ!」

調理場でヒカリに呼びかけられたシンジは、気合の入った表情で答える。

「……へえ、世界一のグルメがこの店にね……」

感心した様子でマナは調理場で動き回る3人の姿を眺めていた。

「ねえ、洞木さん、この魚は背越しでいいんだよね?」
「ええ、素頭落とししてすき引きしちゃってください。あ、白水はこぼさずに取っておいてくださいね」
「じゃあ、塩が回ったし霜降りで、すっぽん仕立てにしちゃうよ」
「ええ、ネギは笹打ちにしてください」

きらめく包丁!響く食材を切る音!
炎をあげる七輪!――飛び交う料理用語!

「わかったよ!」
「ふふーん、お金に糸目をつけない料理って楽しみねー!」

アスカはシンジとヒカリの足手まといになると考えたのか、マナと一緒に眺める側に回っていた。
新鮮な食材たちが姿を変え、かぐわしい芳香を漂わせてくる。

「うん、これこそ至高の味ですわ」
「なんか、腹立つわね……」

マナは3人から浮いた感じがして、難しい顔をしてポツリと呟いた。
そして、美味を極めた究極の一皿(ヒカリ主観)が出来上がった!

「できましたわ。私とシンジさんがアスカさんのことを想って作った究極の一品!」
「そ、そうだったっけ?」

笑顔でそう言うヒカリにシンジはちょっと引きつった笑みを浮かべた。

「これで碇ゲンドウ氏も、文句のつけようがないはずです!」

そこへ汗をダラダラと流した支配人が姿を現す。

「お嬢様……ゲンドウ氏が、料理はまだかとお怒りになっていますが」
「わかりました。料理は私がお持ちします」

しかし、ヒカリとシンジが作った料理を一口食べると、ゲンドウは箸を静かに置いた……。

「……どうしたのですか?この料理にご不満でも」
「あるじ……一つ聞きたい。この川の少ない海上都市で、どうやって街の人々は飲料水を確保しているのだ」
「水、ですか?私も詳しい事は存じ上げませんが……旧時代の海水ろ過プラントがオキナワシティの地下にあるそうです」

それを聞いたゲンドウはニヤリと笑ってサングラスをいじる。

「――たわけ!水は料理の命っ!!それを機械を通したものに頼るとは不届き千万!!!」
「……えっ、そ、そんなこと言われましても……」

ゲンドウに思い切り怒鳴られたヒカリは泣きそうな顔になった。

「それになんだ、今日の料理は?ただ一般的な高級食材を並べただけではないか!独創性のカケラもない!実に志の低い料理!芸術性もない!」
「で、でも高級料理をご所望したのはあなた様では……」

ヒカリは涙声になりながらゲンドウに言い返した。

「それになんだ、この味付けは!?カイバラ!」
「はっ」
「アレをもて!」

ゲンドウの側近はアタッシュケースからマヨネーズを取り出した!
それを受け取るなりゲンドウは、残りの料理めがけ、おもむろにマヨネーズをぶちまける!
ぶにゅーーーーーーううううう!!!!

「ああ―――――っつ!!!!」

ヒカリは叫び声をあげて気絶してしまった。

「これでやっと食べられる代物になった」
「ゲンドウ様、いくらなんでもそれは……」

気絶したヒカリを抱きかかえた支配人が苦言を述べた。

「世界一の舌を持つ、この碇ゲンドウの味覚にケチをつけると言うのかっ!」

ゲンドウはそう怒鳴ると、ちゃぶ台をひっくり返し、料理を思いっきり畳にぶちまけた!

「ああ、な、なんてことを!!」

支配人はヒカリを強く抱きしめながら悲鳴を上げた。
店内に大きく響き渡る食器などが割れる激しい物音。
それは店内だけでなく、店外にまで聞こえた。

「《洞木屋》の支店、ということでやって来たが……。やはり田舎は田舎だな!」

腹の底から響く笑い声を出し、ゲンドウは料金も払わずに去っていった……。

「う、ううううう……」
「な、泣きやんでよ、ヒカリ……」

アスカになだめられていてもヒカリは涙を流していた。

「ああいう手合いはさ、難癖つけるのが仕事みたいなものだから、あんなもんじゃないの?」

マナはそういって深々と溜息を吐いた。

「負けを認めちゃったら、この店は潰されちゃうよ!」

シンジは怒りに燃える瞳でそう叫んだ。

「たしかにこのままじゃ、このお店の料理をおいしいって言ってくれる街の人や観光客の人たちに……申し訳が立たないわね」
「そうだよ!」

アスカの言葉にシンジは激しく同意した。

「みんな、《洞木屋》の料理はおいしいって、いって、くれたし、私、頑張らないと……」

ヒカリはとぎれとぎれになりながらも、やっとのことでそう言い終わった。

「アスカさん!私は何としてでもゲンドウ氏との再戦の席を設けます。ですから、それに出す新メニューの開発、お願いします!」
「うん、わかったわ!」
「見てろよ、碇ゲンドウ!」

ヒカリの頼みにアスカとシンジは闘志を燃やし、今夜はひとまず解散ということになった。
研究所への帰り道、思い悩みながら歩くアスカとシンジに声を掛ける一人の少年の姿があった。
それはたまたま仕事で通りがかった大工の息子、トウジ。

「なあ、ワイ、さっき偶然大きな物音を聞いて、店の中を見てしもうたんやけど、あの嬢ちゃん、なんで泣いてたんや?」

アスカとシンジが洞木屋でゲンドウがしたことを話すとトウジは頭から湯気でも出すように怒りだした。

「なんや!そんなやつはソーメンでも食わしたれ!」

トウジが怒ってそう叫ぶと、アスカは手を打って頷く。

「そうよシンジ!料理はシンプル・イズ・ベストよ!」
「それはないと思うよアスカ、今度の料理が失敗したらもう終わりだから、考え直した方がいいよ」
「ソーメンこそ庶民の味や!それで澄ました成金の天狗っ鼻をへし折ったれ!」

引きとどめようとするシンジに対して、トウジは強烈にソーメンをプッシュした。

「そうね、他に知事を驚かせる食材として、大王イカのスミで真っ黒に染めてみようかしら」
「え?このオキナワに伝わる伝説のあの大王イカ!?」

アスカの大胆な発言にシンジもトウジも驚いた顔になった。

「相手は食の大魔王といわれるまでの食いしん坊だし。これまでたいていのものは食べたことあるだろうしさ……そんな人が食べたことが無いものといえば、ソーメンと伝説のイカスミぐらいでしょ?」
「そ、そうやな、ウチは貧乏やからソーメンを食べとるようなもんだし……」
「そこまで考えていたんだね、アスカは」

シンジとトウジはアスカの意見に納得がいったようだ。

「そうと決まったら、明日の朝、さっそく港に行きましょう!」



翌日の朝、アスカは大王イカのことを聞きに港までやって来た。
すると、また港に人だかりができている。
その中心に居たのは、以前どこかで見た漁師。

「さぁさ、世にも珍しい売り物だよ!このオキナワ一の漁師様が、今日の漁で捕まえた珍魚さぁ!」

漁師の足元のバケツの中で七色に輝く珍しい魚が泳いでいる。

「タスケテー!タスケテー!」
「あ!あの魚はっ!」

驚くアスカの前で漁師は啖呵を切る。

「さぁ、早い者勝ちだ!!なんとたったの10万!超破格のお値段だよっ!さあ、買った買った!」
「うぇぇぇ……前より高いじゃないの……」

すると、人混みの中からとある女性の声が聞こえてきた。

「そこまでよっ!悪徳漁師!」
「な、なんだお前は!?」

驚く漁師の前に人混みから人影が飛び上がり、華麗に着地をする。
その人物は仮面で顔を隠し、セーラー服を着ていた!

「あたしは美少女戦士、セーラームーン!月に代わってお仕置きよっ!」
「なんでえ、真昼間からそんなかっこうをして、恥ずかしいとは思わないのかっ!」

漁師のある意味もっともな指摘に人混みから賛否両論の声が上がる。

「親御さんがかわいそうねえ」
「でも、スタイル抜群じゃないか!おれは許す!」
「禿げ胴」
「なんで大人なのにあのおばちゃんセーラー服着てるの?」
「うっさいわね、10年も続けていれば仕方無いわよっ」

彼女は小声で子供に言い返してから、ゆっくりとまた漁師に向き直った。

「天誅!」
「白……クマさん……」

漁師が問答無視で必殺セーラーキックをくらい、鼻から血を流して倒れ込むと、人混みから歓声が上がった。

「さあみなさん、悪人は成敗しました、仕事に戻って戻って!」

彼女がそう言ってパンパンと手を叩くと、人混みは徐々に姿を消して行った。

「ぐううう、俺は何も悪いことはしてないじゃないか!それをいきなり蹴りやがって!」

驚異の回復力で起き上がった漁師はセーラームーンを思いっきりにらみつけた。

「黙りなさい。商店街の借金も返せない自堕落な人間にそんなことをいう権利は無いわ」
「でもよお、俺にも生活が掛かっているんだからさぁ」

ぼやく漁師にセーラームーンは指を突きつけた。

「黙りさないっていってるでしょ?あんたがこうしてロクに海にも出ないで飲んだくれているからでしょ?5年前に奥さんと子供を海難事故で亡くしたからって……いい加減に立ち直りなさい!オキナワシティ一番の漁師の名が泣くわよ!」
「そうは言っても……すいません、神主さまぁ」

セーラームーンはこちらをぼう然として眺めているアスカを見て慌てた様子になる。

「な、何を言ってるのかしら、黙りなさい」
「じゃ、じゃあとりあえず当座の生活費だけは下さいよ」
「あっそ、じゃあとっとと値段を言いなさい」
「――12万」

漁師がそう言うと、セーラームーンはファイティングポーズを取った。

「――10万にまけますよ!」

怯えた様子で漁師がそう言うと、セーラームーンは首を横に振って500円玉硬貨を投げつけた。
それは激しくのおでこを打ちつけ、彼は仰向けに地面に倒れ込んだ。

「代金はこれで充分でしょう?」
「か、神主さん、いくらなんでもこれはヒドいじゃないか」
「これが私が物を買う時の最高金額よ。長い付き合いでわかっているでしょう……?」

セーラームーンの口元に、ニヤリ、と相手の腹の底まで凍らせるような冷徹な微笑みが浮かんだ。

「……私が500円玉を投げつけて、これ以上代金を払ったことは?」
「ありません……」

漁師はがっくりと肩を落とした。

「くそ、くたばりぞこないの守銭奴め……」
「あんたがきちんと働けば、私はあんたをバカにしたりしないわよ♪」
「く、言われなくてもそうすらぁ!」

漁師はブツブツ言いながら倉庫の方へと去っていった……。

「ウフフ……これはとんだ拾いものだわ……」
「タスケテー!ウミニカエシテー!」

セーラームーンはしゃべる魚が入ったバケツを持ちあげて口を歪ませた。

「うーん、何だか情に流されそうになるけど、ここはダメっ!――すべてはオキナワシティのため!鬼になるのよ!セーラームーン!」

セーラームーンはそう言って口元をへの字に曲げた。

「イーヤー!タスケテー!」
「あのっ、ちょっと!」

悲鳴を聞くのに耐えかねたアスカがセーラームーンの側に駆け寄った。

「そのお魚なんですけど……」
「あ、あなたは確か私に銃を作ってくれた子ね?これは好事家に売れば、捨て値で20万は下らない代物よ♪」

セーラームーンがご満悦でバケツに居る魚を見せびらかすと、魚はアスカの顔を見てしゃべりだす。

「アッ!……アスカーアスカー!!」
「――へっ?」

セーラームーンは素っ頓狂な声をあげた。

「アスカアスカー!タスケテー!」
「……知り合い、なの?」
「……はぁ、まあなんていうか……」

アスカは少し困った表情でミサトの質問に答えた。
そして、アスカは以前ここで売られていたこの魚を自分が助けたことを話しだした。

「……なるほどね」
「だから……見過ごすわけには行かなくて……」
「……じゃああなたの正義の心に免じて、この魚はアスカに預けるわ。また海に逃がすなりなんなり好きにしなさい」

セーラームーンは溜息をついてアスカに魚の入ったバケツを渡した。
そして心持背中を丸めながら疲れたように中央広場に通じる通りに向かって歩いて行った……。

「アスカアリガトー!」
「お礼はセーラームーンに言ってね。…………今度こそ捕まっちゃダメよ」
「オレイー!」
「えっ?」

厳しい顔をして魚に言い聞かせていたアスカは、突然そう言われて驚いた顔になった。

「ナニカオレイー!ナニカオレイガシタイー!」
「……別にいいわよ、そんなの」

アスカは穏やかに微笑んで否定するが魚の叫び声は止まらない。

「オレイ!オレイ!オレイ!オレイ!オレイ!オレイシナイトカエレナイ!」
「うーん……困ったわ。あ、そうだ!大王イカって、でーっかいイカがいるんだけど、知らない?アタシね、そのスミが欲しいんだ」
「ワカッターマカセテー」

そのしゃべる魚はそう言うと、身を躍らせて海の底へと消えて行った……。
そして待つこと小一時間。そのしゃべる魚は、イカのスミを持ち帰って来た。

「コレデイイノー?」
「うんっ、これよ、これっ!うわぁー、どうもありがとうっ!」

アスカははじけるような笑顔で歓声を上げた。

「……アスカー……サヨナラー……」

アスカが別れの言葉を言う間もなく、しゃべる魚は海の底へ消えて行った……。
研究所に戻ったアスカは嬉しそうにシンジにスミを見せたが、シンジはすぐにアスカの言うことを信じなかった。

「アスカの心がキレイだってことはわかるけどさ、現実と絵本の世界をごちゃ混ぜにしちゃいけないよ」
「そんなことないもーん!」

溜息をつきながら話すシンジに、アスカはむくれた顔で反論した。

「百歩譲って人間の声を同じ鳴き声を出せる魚がいたとしても、恩返しだなんて……」
「ホントなんだってばぁ!!!」

退かずに怒るアスカに、シンジは面倒くさそうに溜息をついた。

「わかったわかった……」
「シンジ!アタシの目を見てよ!アタシがシンジを困らせるような嘘をついたことある?」

シンジはアスカの目を見つめて数秒後。

「……山ほどあって数えきれないよ」

結局、海に身を投げようとするアスカを必死に抱きしめて説得したシンジはこの件には一切触れないと誓うのだった。

「見てなさい、碇ゲンドウ!イカスミソーメンでぎゃふんといわせてやるわよっ!」

アスカはシンジと見つめあいながらときの声を上げた。