沖縄の米軍普天間基地移設問題の「5月末決着」を明言した鳩山由紀夫首相が、窮地に陥っている。15日には米側と受け入れ先の理解に加え、連立与党の合意も目指す意向まで示したが、平野博文官房長官は「合意の解釈には幅がある」と強弁し、首相の責任論の回避に躍起。オバマ米大統領も首相への不信感を漏らしたとされ、政府・与党内では首相退陣論への発展を懸念する声が強い。
首相は15日夕、首相官邸で記者団に「決着とは、米国や沖縄だけでなく国民の皆さんも『この方向で行こう』と理解を示すのが前提。その前に連立内閣の合意が必要だ」と説明。「覚悟を決めて臨んでいる。必ず申し上げた通りに結論を出す」と強調した。
一方、平野官房長官は同日の記者会見で「5月末までにすべてのことが納得、理解されて、とはなかなか運んでいかない」と予防線を張った。少し前には5月には閣議決定する、とまで踏み込んでいたが、それが絶望的な状況になり、一気にトーンダウン。「ボールは(日米)両方にある」と、日本側の責任だけではないことも指摘した。
6月以降に決着を持ち越しても、協議は継続しているという体裁が整っているうちは、公約違反から首相の進退論への発展、という事態を避けられる、と見ているようだ。
とはいえ協議継続に向けたシナリオを描くことさえ簡単ではない。日米の実務者協議や、受け入れ自治体との正式な調整にも入れないのが実情だ。
首相は12日、オバマ大統領に「岡田克也外相とルース駐日米大使との間で交渉しているところで、大統領の協力もぜひ、得たい」と伝え、外相も14日夕、大使と電話で協議した。
関係者によると、大統領は首相に「しかし、進展していない」と反論したという。昨年、大統領に「トラスト・ミー(私を信じて)」と告げ、年内決着への期待を抱かせた揚げ句に先送りした経緯もある。米側の不信感は根強い。
移設先の候補地は激しく反発している。政府は鹿児島県・徳之島やキャンプ・シュワブ陸上部などを組み合わせた移設案を検討し、近く公式に地元調整へ入りたいとしている。だが、徳之島では18日、沖縄県では25日にそれぞれ大規模な反対集会が開かれる予定だ。
政府の迷走ぶりに、与党内からは首相の責任論への波及を懸念する声が強まってきた。
社民党の重野安正幹事長は15日の記者会見で、オバマ大統領に「5月末決着」を改めて伝えた首相発言に関して「どういう勝算、見通しを持って言ったのか分からない。言えば言うほど、そうならなかったらどうするのかという度合いが強くなる」と指摘した。
首相を支えてきた参院民主党内からも「自分で自分の首を絞めている。できなければ退陣しろ、となる」という声が上がる。
「せめて1年は首相を続けたい。あの安倍晋三さんだって1年やったのだから」。首相は最近、側近の一人にこう漏らしたという。
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