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きょうの社説 2010年4月17日
◎高峰映画の米国上映 語り継ぎたい桜並木のドラマ
高峰譲吉博士の生涯を描いた映画「さくら、さくら」の米国上映を機に、ポトマック河
畔の桜並木の誕生秘話を語り継ぎ、日米交流を深める新たな一歩にしていきたい。全米各地から毎年100万人近い観光客を集める「全米桜まつり」は、最も成功した日米交流のイベントと言われる。映画を通じてワシントンの桜と高峰博士の縁を、ご当地で紹介できたのは意義深く、私たちが誇りを持って子どもたちに教えていける「ふるさとの歴史」の生きた教材になるだろう。金沢出身の土木技師、八田與一のアニメ映画「パッテンライ!!」が日本に続いて台湾 でも上映され、烏山頭ダム建設に尽くした技師の功績が広く知られる機会になった。この映画で日台交流の機運が高まり、石川県の子どもたちの間で八田技師や台湾への関心が一気に広がったように、「さくら、さくら」が掘り起こした日米交流のドラマに思いをはせ、高峰博士の偉業を胸に刻んでいきたい。 1912年に日本から約3千本の桜が贈呈されてから今年で98年になる。高峰博士が 米国に桜を贈ったいきさつは、本紙1面の連載「サムライ化学者 高峰博士」で詳しく紹介され、映画では咲き誇るポトマック河畔の桜の映像が効果的に使われた。現在ある約3800本の桜は、ほとんどが植え替えられたものだが、樹齢百年近い第1世代の老木が百本前後生き残り、花を咲かせているという。 毎年、日本の文化や芸能が紹介されるワシントンの桜まつりに似た催しは、今ではシア トル、サンフランシスコ、フィラデルフィア、ニューヨーク、ニュージャージーなどでも行われている。咲き誇る桜の見事さを見れば、桜に特別の思いを寄せる日本人の心情を多少なりとも米国人に、分かってもらえるのではないか。 高峰博士のまいた日米交流の種は毎年大きな花を咲かせ、今なお全米に広がっている。 タカジアスターゼの発見やアドレナリンの開発といった化学者としての業績もさることながら、日米の懸け橋としての足跡もまた偉大だ。桜のシーズンが来るたびに、孫子に語り継ぎたいドラマである。
◎加賀野菜の担い手 「売れ筋」育てて後押しを
希少な加賀野菜の担い手育成と生産拡大を目指す新たな取り組みが始まった。金沢市の
金沢農業大学校の修了生らがJA金沢中央の野菜生産部会に加わり、市場への出荷者が1人の「金沢春菊」の本格的な栽培に乗り出す。近年、知名度が高まっている加賀野菜だが、後継者不足で出荷量が伸び悩む品目もみられ、担い手育成が大きな課題となっている。貴重な食の金沢ブランドである加賀野菜から「幻の野菜」が出ぬように栽培技術を磨いて、安定した生産量の供給と品質の保持に努めてほしい。加賀野菜の消費拡大と消費者の信頼を高めるため、金沢市農産物ブランド協会の加賀野 菜加工品認証制度や取扱店登録も始まった。販路の拡大は生産者の経営基盤の安定につながる。「売れ筋」をより多く育てて、加賀野菜の担い手を後押ししたい。 金沢農業大学校は農業の後継者を育成するために2006年に開校し、修了生が加賀野 菜の栽培にかかわっている。今回は修了生と研修生8人がJAの野菜生産部会に加わり、「金沢春菊」の栽培に向けて組織化された。今後は金沢春菊と並んで担い手が少ない「二塚からしな」の生産にも乗り出すことにしており、希少な加賀野菜の生産拡大のモデルケースとなる成果を期待したい。修了生に対しては、就農から経営が軌道に乗るまで栽培技術や営農指導などのきめ細かい支援を続けてほしい。 金沢市農産物ブランド協会が3月に認証した加賀野菜加工品は16社の35商品を数え た。また、優れた品質の加賀野菜を扱う「加賀野菜取扱店」登録も予想を超える140店舗を超えた。販売側は消費者のニーズに合った商品開発を重ね、加賀野菜の特長を消費者に伝えていく役割がある。それが生産者を支え、販路拡大に欠かせない安定した収量の確保にもつながっていくだろう。 石川県の夏用の観光ポスターに加賀太きゅうりの写真が採用されるなど、加賀野菜は石 川の顔の一つになっている。生産側と販売側が手を携えて加賀野菜のブランド力を高めていきたい。
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