ニュース:政治 RSS feed
【正論】中国のインド洋進出を警戒せよ 田久保忠衛 (2/3ページ)
拠点化を狙う「真珠の首飾り」
インド洋に大きく突出したインドは東側にベンガル湾、西側にアラビア海を抱えている。両湾に臨むミャンマーとパキスタンはいずれも不安定な政権だ。インド・パキスタン関係は小康状態を続けているが、依然、揮発性を帯びている。中国は経済、政治、軍事などいくつもの思惑でミャンマー、パキスタンと結び、インドもまた遠交近攻の計算があるのか、イランとの関係が密だ。
「真珠の首飾り」に関しては、本紙の北京とロンドンの特派員記事を興味深く読んできたが、中国はインドを除くインド洋諸国に港湾整備などの名目で巨額の投資を続けており、これが途上国支援の目的のほかに、中国海軍が利用できる拠点にしようとしているのではないかとの疑いが強く持たれているところにことの重大性がある。明らかに目にできる「真珠」はミャンマーのシットウエー、バングラデシュのチッタゴン、スリランカのハンバントタ、パキスタンのグアダール港湾だが、これを見るだけでも普通ではない。
南シナ海との運河建設にらむ
2月16日付のニューヨーク・タイムズがハンバントタ特電で詳細を伝えている。中国はスリランカ政府に接近し、2004年のインド洋津波で壊滅的打撃を受けたこの港の深海港化の建設プロジェクト総額10億ドルの85%を進んで融資し、同じ中国の手で工事が進められているという。沖合をインド洋シーレーンの大動脈が通る。シットウエー−昆明−重慶間の石油パイプライン建設構想はすでに具体化し、工事は始まっている。地理上チッタゴンがどのような意味合いを持つかは明らかだし、ホルムズ海峡の出入り口にあたるグアダールの戦略的重要性はすでに論じつくされている。「真珠」はこのほかにも少なくない。
カプラン氏は、中国政府がタイ南部のクラ地峡を運河化しようと企てているという。21世紀の2巨大国、中国とインドは生存するためのエネルギーその他の物資を主に中東とアフリカから運ばなければならない。インドと違いマラッカ海峡を使用しなければならない中国がインド洋と南シナ海を結ぶアジアのパナマあるいはスエズ運河を構想しないはずはなかろう。