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金曜アンテナ

金曜アンテナ(2010/4/16)

JR採用差別事件 23年の闘いに終止符
和解総額200億円勝ち取る


 一九八七年の国鉄分割・民営化で大量の国鉄労働組合(国労)組合員らがJRに採用されず、国鉄清算事業団からも九〇年に解雇され、長年にわたり裁判などで争われてきたJR採用差別事件が事実上決着した。与党三党と公明党が九日、原告九一〇人に一人平均二二〇〇万円、総額二〇〇億円を支払うなどの解決策をまとめ、政府と原告双方が受け入れた。
 解決交渉は、二〇〇二年に旧国鉄の責任を追及する新たな訴訟を起こした国労組合員約三〇〇人の原告団とそれを支える国鉄闘争共闘会議が中心を担い、昨年三月の東京高裁判決を土台に、大幅な金額の上積みを勝ち取った。戦後最大の不当労働行為事件は、国鉄改革当時、国労攻撃を先導した自民党が下野したことでようやく解決にこぎ着けた。
 四党がまとめた解決策は、(1)和解金一人平均一五六三万円、総額一四二億円に団体加算金五八億円を加えた約二〇〇億円を旧国鉄を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構が支払う、(2)政府が北海道、九州などのJR各社に二〇〇人程度の採用を要請する、が柱。
 和解金の内訳は、高裁判決が命じた賠償金一人当たり五五〇万円に金利分を加えた計一一八九万円と訴訟費用三七四万円。団体加算金は、これまでの国労などによる解雇者への生活支援を考慮し、国鉄職員の再就職支援のための奨励金などを基に算定。国労組合員が立ち上げた事業体などに充てることも可能と付記した。
 前原誠司国土交通相は九日、記者会見し、「JR各社に要請はしたいと思うが、強制はできない。(JRは)最大限の努力をしてもらいたい」と述べた。鉄道運輸機構が一〇〇%出資する特殊会社のJR北海道と九州は政府には全面協力する立場にあり、政府とJRが真剣に取り組むのかが問われる。
 一方、国労組合員による三つの原告団および全動労争議団で構成する四者と国労、国鉄闘争共闘会議、全日本建設交運一般労働組合など四団体(四者・四団体)も九日、受け入れを決め、一二日政府に書面を提出。同日の声明では「四者・四団体の団結と人道問題を放置しないとする政治の力によって解決への扉が開かれた。原告らが待ち望んだ解決を迎えることは感慨無量のものがある」と表明した。訴訟は和解金の支払いなどと同時に六月末までに取り下げる方針。
 この事件は分割民営化から二三年が経ったが、民主党中心の連立政権発足後、七カ月で事実上決着した。まさに政権交代のなせる技と言って過言ではない。
 今年二月下旬に四党の担当者がまとめた解決素案は、和解金一人二九五〇万円、JRへの二〇〇人の雇用要請だったが、難色を示した前原国交相などとの調整を経て、四党は三月一八日、和解金を二四〇〇万円に減額した。しかし、肝炎訴訟の和解などを考慮して財務省が高裁判決の二倍に上る金額に反対、四月に入り、一五六〇万円への切り下げを求めたが、四党は猛反発。政府は二〇二五万円まで引き上げたが、四党は納得せず、結局二二〇〇万円で決着した。
 この間、政府・民主党の首脳会合で党幹部は引き上げを強く主張、国民新党は財務省主計局に抗議し、公明党や社民党も毅然として引き上げを求めるなど激しく政治が動いた。支持率が低迷する政権の威信をかけ、まさに「政治主導」の展開となった。
 こうした政治の動きの舞台裏には、国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長の姿があった。二瓶氏はオリジン電気労組の幹部として培った労使交渉の力をいかんなく発揮、政権交代前から築いてきた政治ネットワークを駆使し、政府の減額の動きを押し返した。
 今回の決着の土台には、採用差別や国労潰しを狙った国鉄の「不当労働行為意思」まで認定した高裁判決がある。四党解決策は前文で「不当労働行為は一審よりも強く認定された。南敏文裁判長が『この判決を機に早期解決を望みます』とコメントした」と言及、政府への「殺し文句」になった。
白嶺隆・ジャーナリスト

小沢幹事長の訪米「延期」へ?
「計画ない」と米国務省は否定


 今年の大型連休に予定されていた小沢一郎民主党幹事長の訪米中止が判明した。四月八日に米国務省は「そうした計画は何もない」と明確に否定し、「詳細は小沢氏側に問い合わせてほしい」と冷淡に突き放している。
 小沢氏の訪米については二月二日にカート・キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)から小沢氏が直接に要請を受け、民主党と米国大使館で連絡しあっていたとされていたが、実際のところ調整がうまくいっていなかった。その原因は二つある。
 まずは訪米に対する小沢氏の態度だ。
「せっかく(米国に)行くとすれば、オバマ大統領にもそれなりの時間をとっていただかなくては困ります、そう言っておきました」
 二月八日に行なわれた定例記者会見で訪米を発表した小沢氏の言動は、誰の目からも不遜に見えた。小沢氏は最大与党の幹事長で政界随一の実力者ではあるが、政府の要人という立場にいるわけではない。しかもオバマ大統領を上から見下したような態度をとった小沢氏に、米国側は当然のことながら拒否反応を示す。
「米国側は小沢氏に激怒しており、オバマ大統領に絶対に会わせないと言っているらしい」
 たちまち永田町ではそんな噂が広がったが、三月一七日に予定されていたキャンベル氏の来日が急遽中止されたことで双方の不協和音はよりいっそう明らかにされることになる。
 キャンベル氏はアジア諸国歴訪の後、日本に立ち寄って普天間問題などについて外務省高官と意見交換するはずだった。ところが「日程上の都合」で一日早めて帰国。成田を素通りしている。永田町関係者の間では
「米国政府が小沢氏に強い嫌悪を感じて反対しているので、訪米計画は進んでいない。訪米計画を言い出したキャンベル氏が来日すればそれを小沢氏サイドに説明しなければならない。よってそれを避けるために早期に帰国したのではないか」
 との見方が一般だ。
 そして三月下旬には米国政府から民主党に対して大統領や政府高官との面会拒否を通告。この時点で小沢氏訪米の可能性は事実上なくなったといってよい。
 原因の二つ目は小沢幹事長訪米を取り仕切るはずの藤田幸久民主党国際局長が動かなかったことだ。反米的言動で知られる藤田氏は、かねてから二〇〇一年の米国同時多発テロ事件についてアルカイダ犯人説に疑問を投げかけていたが、この見解について三月八日付『ワシントン・ポスト』紙が社説で「突拍子もなく、いい加減で、偽りがあり、まじめな議論に値しない」と酷評。
「そのせいで藤田氏はすっかりおびえてしまった。米国に行くのが怖くなったのか、訪米計画に取り組んでいる様子はほとんどない」
 とは藤田氏の動向を知る民主党関係者の言葉だ。
 そのような膠着状態を、小沢氏は実際のところ不安を持って見ていたようだ。
「米国という国は理解できない。『来てくれ』と言いながら、招待も来ない」
 三月一一日に中国の唐家●元外交部長と会談した小沢氏は、その胸中を漏らしている。
 昨年から続いた政治資金問題で、今年になって秘書及び元秘書が三人も逮捕された。小沢氏自身は二月四日に不起訴が確定したが、この時以来党内基盤を固めるのに必死だ。三月一日に秋谷栄之助前創価学会会長との会食をリークし、創価学会とのパイプの太さを党内外に顕示した。さらに訪米してオバマ大統領との長時間の会談が実現すれば国内外とも万全……。そう確信していたはずだった。
 もっとも一二日の会見で小沢氏は「(中止は)招く方の判断」と強気を装った。ただしこれが米国のさらなる反発に繋がらない保障はない。そして民主党は今回の訪米中止を「中止」ではなく「延期」と見なして将来の訪米に含みを持たせたが、果たして……。
天城慶・政治ジャーナリスト

●=王+旋

携帯電話SIMロック解除もかすむ
原口総務相「電波再編」発言の意味


 総務省がSIMロックの解除を携帯電話会社に求めていた問題で二日、NTTドコモなど大手四社は原則解除することに合意した。「携帯電話のSIMロック解除」とは、簡単に言えば、「アイフォンをドコモでも使えるようにしましょう」ということ。しかし、それに抵抗したのが孫正義ソフトバンク社長。次いで発生した周波数の統一課題でも「沈黙」。通信業界の革命児だったはずの彼が、今や、既存権益にしがみつく抵抗勢力であることが明らかになった。
 三日、原口一博総務大臣がネット上で「総務省がビジネス・モデルを強制することは、ありません」とつぶやくと、即座に、孫正義ソフトバンク社長が「総務省からの強制でなければ、我々もSIMロック解除をいくつかの機種で試して見る事は可能です」と反応。ロックを命じ続けていたはずの総務省トップが「強制をやめる」と言ったことを、孫社長は人気機種の「アイフォンをドコモでも使えるようにしなさい」(筆者注:auやウィルコムの通信方式には、アイフォンは対応していない)との意味と受け取ったのだ。
 携帯電話の裏蓋を外すと、爪先ほどの小さな差し替え可能なカードが入っている。それが、SIMカード。携帯電話の利用履歴を管理し、課金を司るIDカードである。これを差し替えれば、アイフォンをドコモユーザーも使うことができる。ユーザーの利便のため、その縛りをやめましょうと総務大臣が呼びかけ、やってみましょうと孫社長が答えた。
 しかし、ソフトバンクでは、第二世代携帯電話の利用が停止された三月三一日で五四万件以上の解約があり、アイフォンが稼いだ新規契約を帳消しにして一二万件超の純減に転じたことからも顧客満足度が低いのは、明白である。
 こんな状況でSIMロックが全面的に解除されたら、アイフォンユーザーがドコモに流出してしまう。だから、孫社長は会社の存亡を賭けて「いくつかの機種で試して見る事は可能です」、つまり「どの機種のロックを解くかは事業者の裁量」との言質を取った。SIMロックが解除されていくのは世界的な趨勢だが、泡沫機種のみの解除にとどめれば、しばらく時間が稼げる。だから、「アイフォンのSIMロックを解除すると端末の値段は四万円ほどあがります」と釘も刺した。
 また、NTT出身の内藤正光総務副大臣が七日、「利用者の要望を前提に(携帯各社が)SIMロックの解除に応じることで一定の合意を得た」と述べると、「NTTご出身の内藤副大臣がブログでソフトバンクを公然と非難されていますが、これに逐一反論していいものかどうか迷っています。何しろ我々は総務省監督下の認可事業者なので、あまり憎まれて、周波数の割当とかで意地悪をされたら大変ですから」と松本徹三ソフトバンク副社長が反論。この対立を総務官僚が収めていくはずだった。
 ところが翌八日、孫社長も総務官僚も仰天することになる。
「二〇一一年七月二四日(TVのアナログ放送停止日)、完全デジタル化に向けて、私たちは電波の再編成ということを考えています。(中略)そして公正でダイナミックな世界の競争の先頭を行けるような標準的な電波の再編、これを目指してまいりたいと考えています」と原口大臣が発言したからだ。
 総務省は、日本の次世代携帯電話を、世界との互換性をはずして実施する予定だった。世界標準に合わせると、護送船団方式で携帯電話会社とメーカーを保護することができないし、標準の周波数帯を開放するには既存の「泡沫」免許利権を取り消さなければならない。つまり、裁量の余地がなくなり、天下り先が消滅する。総務省にしてみれば、SIMロック問題がかすむ驚天動地である。
 孫社長も困惑する。「日本の携帯電話を安くする」と主張してきたが、彼はあくまでも護送船団の中の風雲児であって、ソフトバンクは世界で戦う体制にはない。だから、ご自慢のTwitterでのネット発言でも、四月三日の迅速な言質取りとは打って変わって、原口発言を紹介するにとどめ、口はつぐんだままである。
谷村智康・マーケティングプランナー


繰り返される「在特会」の暴力
大阪で前市議を襲撃


 各地で暴力行為を伴った排外主義的な活動を繰り返している「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が七日、JR大阪駅前で従軍「慰安婦」問題の解決を訴える行動に参加して帰宅しようとしていた前市議に、集団で襲いかかる事件が起きた。
 大阪駅前の歩道橋では毎月一回、歩道橋で女性を中心に数十人が従軍「慰安婦」問題の解決を訴えてプラカードを掲げたり、マイクで通行人に訴えかける取り組みが続けられている。これに対し「在特会」は、半年前から「粉砕」などと叫び、三月には二〇〇人近くが妨害のために押しかけるなど、緊張した状態が生まれていた。
 この日の取り組みに参加した大阪府門真市の戸田ひさよし前市議が終了後、再びこの歩道橋を渡って帰宅しようとした際、残っていた「在特会」のメンバー二〇~三〇人が殺到。居合わせた警官は戸田前市議の周りを囲んだが、襲撃メンバーを逮捕しようともせず、このため戸田前市議はメガネを外されたり、ヒザ蹴りを受けるなど暴行されたもの。
 戸田前市議はその日のうちに警察に被害届を提出。さらに「在特会」を相手取り、民事訴訟を起こすと共に、「現行犯逮捕せず、集団の暴力を放置した」として、大阪府警に対し国家賠償請求も起こす構えだ。
 なお兵庫県西宮市でもこの一月、阪急西宮駅前で宣伝活動をしていた「『慰安婦』問題各連絡会」に対し、三〇人あまりの「在特会」が襲撃。展示していたパネルを壊したり、同連絡会のメンバーに体当たりするなどして暴れる事件が起きている。
成澤宗男・編集部

環境アセス法改正案
新たな除外規定で
米軍基地外しか


 環境アセス法改正案の審議が参議院先議で八日に始まった。この法律は、一九九九年の施行以降に開始され「規模が大きく環境影響の程度が著しい」おそれがある事業だけを対象としており、もとからザル法ではある。
 しかし今回は、新たな適用除外規定(五二条三項)が、駆け込みで盛り込まれた。一月に発表された中央環境審議会の専門委員会がまとめた案にはなかった規定だ。「国の利害に重大な関係」があり、「特別の事情」により「緊急の実施を要すると認められる事業」は、今回新たに加わった改正の要である事業実施前の計画アセスの対象から除外して事業を進めることができる。
 その事業は「政令で定める」とされているため、法律案の段階では不明だ。「国の利害に重大な関係」等の文言から推察し、「普天間の代替基地のアセス逃れのためではないか」(東京工業大学原科幸彦教授)との見方が八日の参考人質疑では示された。
 一三日、どのような事業を想定しているのかとの加藤修一議員の質問に環境省は、「大震災発生で大量の瓦礫を処分する最終処分場」であるというが、災害対応については、同条二項ですでに除外規定が存在する。「既存施設か新たな施設かの違い」との答弁だが、三項に基地が入らない確証はない。現在、対象事業は一二事業が法律で指定され、政令で指定する事業として「宅地」の他、今回の改正で、風力発電所が入ることになった。この際、米軍基地についても除外ではなく、対象事業に加えるべきだ。基地こそ事業実施前の計画アセス対象にすることが相応しい。
まさのあつこ・ジャーナリスト

神奈川「池子の森」を守ろう!
米軍住宅追加建設反対
全国大会に1200人


 四月一一日、神奈川県逗子市の第一運動公園で、「米軍住宅追加建設反対! 池子の森を守る4・11全国大会」が開催され、約一二〇〇人が参加した(主催者発表)。
「池子の森」は、逗子市と横浜市にまたがる約二九〇ヘクタールの大自然だ。この地域への米軍家族住宅建設計画への反対運動は、一九八二年以来続いたが、九四年に「三者(逗子市・県・国)合意」が締結され、逗子市域に八五四戸の住宅が建設された。
 しかし、国は「追加建設はしない」旨の表明をしたにもかかわらず、二〇〇三年に横浜市域への追加建設を発表。逗子市は「三者合意に違反する」と猛反発して国を提訴したが、訴えは棄却された。
 昨年になり、国は逗子市に対し、域内四〇ヘクタールの土地を返還する代わりに、横浜市域への住宅建設と、逗子市域でのトンネル整備と小学校建設を認めるよう迫った。逗子市は現在、市民への説明会を開催しつつ(四月一七・一八日にも予定)、対応を検討中だ。
 集会では、民主党・社民党・共産党の国会議員などがアピールした。「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」の呉東正彦共同代表は、「この問題の根源には、横須賀の原子力空母がある」と語った。また、厚木基地爆音防止期成同盟の金子豊貴男副委員長は、「厚木基地・横須賀基地・米軍住宅の問題はつながっている。連帯して運動したい」と語った。
 集会終了後、参加者は京急新逗子駅前までパレードをし、途中の米軍住宅正面ゲート前では、「米軍住宅追加建設反対!」「池子の森を守ろう!」などのポスターを掲げてアピールした。
星徹・ルポライター

メールの内容を解析?
オンライン傍受技術
日本で解禁か


 インターネットの中立性をめぐって世界中で激しい議論をまき起こしているオンライン傍受技術が、日本では解禁となる可能性がでてきた。
 これはDPI(ディープ・パケット・インスペクション)と呼ばれる技術で、プロバイダー(インターネット接続業者)が通信回線に専用機器をとりつけ、誰がどんなキーワードで検索をかけたか、どのサイトにいつアクセスしたかといったオンライン上の全行動を詳細に解析する。そうした情報をもとに利用者の興味対象や嗜好を分析して広告を配信するもので、米国のPhorm社が提供している。
 二〇〇八年には、英国でプロバイダーとDPIを共同実施すると公表したところ、国内外から激しく批判され中断。欧州委員会が英国政府に訴訟手続きをとる事態に発展した。米国でも商用化が試みられたが、下院で違法との疑問が呈され撤退。カナダではサービス開始前にもかかわらず政府関係機関がネット上にコーナーを設けて問題点を指摘している。
 まさに悪評だらけの技術なのだが日本では幾つかのプロバイダーが「広告分野への新規参入を可能とする画期的な技術」として検討をしている。こうした動きに応えて総務省は「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第二次提言(案)を作成し、五月一〇日までパブリックコメントを募集している。提言(案)には「(DPIは)利用者の同意がなければ通信の秘密を侵害する」とあるがプロバイダーが負うべき説明詳細の記述はない。パブコメの結果次第では、今回の提言(案)の公表が解禁への端緒となりかねない危うさがある。
瀬下美和・ジャーナリスト

郵便配達員にボイスレコーダー
配達先の会話録音
違法な盗聴かと問題に


 郵便事業会社厚別支店(札幌市)で三 月一六日以降、郵便配達員に「ボイスレコーダー」を装着させるのは、顧客との会話を無断録音するなど「盗聴」にあたるのではないかと問題になっていた。これは北海道支社の「交通マナー、接遇の向上」施策のひとつ。
 同支店では、些細な交通事故や誤配などの配達ミスを起こした社員を選別。小包や書留を配達する際に「ボイスレコーダー」を持たせて、車の発進や停止するごとに安全確認の声出しを録音させていた。また、配達先では声を出して氏名や住所確認を行なっているかどうか、チェックしていたのだ。
 しかし、配達先での会話が無断で録音されることは、盗聴にあたる可能性もあり、プライバシーの侵害である。そして、録音データの管理は個人情報保護法に抵触する恐れもある。
 また、「ボイスレコーダー」を携帯させられたのは、非正規労働者ばかりだったという。当該の配達員からは「つけていると仕事に集中できない。ミスをする。止めてください」との声が上がっていた。ところが、道支社は「労務管理上は問題ない」として他支店へ拡大しようとしていた。さらに指示通りやらなければ問責、処分を行なうと公言もしている。
 このように道支社では四六時中、集配労働者を監視し懲罰を科す、すさまじい労務管理を続けているのだ。社会的に指弾を浴びるこの施策について、JP労組がどう対応するかが組合としての試金石だったが、道支社は「企業のイメージダウン」になるとして、四月五日に一転して「中止」を決めた。道支社が翻意したのは当該分会・支部の諦めない取り組みがあってのことなのだ。
三浦芳則・「郵政労働者のいのちと健康を守る人権ネット」代表


ジェンダー



【国会】亀井大臣 婚外子相続差別撤廃に賛成 4月9日
 亀井静香金融担当大臣は9日、評論家のK口恵子さんら民法改正を求めるメンバーと面会し、婚外子相続差別撤廃については賛成であることを初めて明らかにした。ただ、選択的夫婦別姓については「子どもが悩むのではないか」などと反対した。これに対し、メンバーの一人が「イメージされているのと現実の別姓夫婦や子どもは違うので、別姓夫婦の子どもに会ってみませんか」と理解を求めた。
 面会したのは樋口さんのほか、前千葉県知事の堂本暁子さん、ジャーナリストの下村満子さん、弁護士の榊原富士子さんと紹介議員の円より子参議院議員の5人。メンバーは「選択的夫婦別姓など民法改正についてのお願い」を亀井大臣に手渡した。


【国会】「たちあがれ日本」夫婦別姓に反対 4月10日
 平沼赳夫元経済産業大臣や与謝野馨元財務大臣らが10日に結成した新党「たちあがれ日本」は、選択的夫婦別姓には断固反対であることを明らかにした。これは、同党の基本政策の3本柱の一つの「毅然たる外交と伝統・文化の堅持」の中に盛り込まれているもので、平沼代表も旗揚げの会見で「民主党が政策に掲げている外国人参政権、選択的夫婦別姓には断固反対を貫く」と語った。
 これらは、平沼代表がこれまで保守系議員連盟などでも主張してきた政策だが、与謝野氏はこのような動きには同調しておらず、同氏に最も近い後藤田正純議員は民法改正推進派であるため、これらの点の政策の温度差も指摘されている。


【政府】厚労省調査 女性の完全失業率25%増 4月9日
 厚生労働省は9日、2009年版「働く女性の実情」(女性労働白書)を公表。女性の労働力人口が2771万人で過去最多となったことがわかった。年齢別にみると、いわゆるM字型の底と呼ばれる「35~39歳」では65.5%で過去最高、「30~34歳」では2.1ポイントと過去最大の上昇幅で67.2%となり過去最高。ただし、完全失業者は133万人となり、前年に比べ27万人の大幅増となった。働いていなかった女性が、経済的な事情で仕事をしようとしても就職できないこともわかった。賃金の男女格差は、男性100に対し女性69.8(前年比67.8)と3年連続で縮小。正社員・正職員に限ると72.6とより縮小した。製造業では男女とも09年以降の減少幅が増加。景気後退下でも医療福祉分野では男女ともに増加し、男性9万人増に比べ女性は31万人も増加し、女性雇用者数の増加要因となった。


【政府】厚労省 男女賃金格差に関する研究会報告書公表 4月9日
厚生労働省は9日、「変化する賃金・雇用制度の下における男女間賃金格差に関する研究会」による報告書を公表。男女間賃金格差の要因として「基準等が曖昧であるため性別役割分担意識をもって運用されることが必ずしも排除されない制度」や「採用、配置(略)、人事評価や業務評価などの側面で、男女労働者間に偏り」があるとそれが「管理職比率の男女差につなが」ることなどを指摘している。詳細はURL http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000057do.html


裁判予定



4月19日(月)
日産自動車事務系「業務偽装」「派遣切り」 事件
14:00~ 東京地裁 631号法廷 ※裁判後、報告集会あり
事件内容:人材派遣会社アデコ㈱に登録され、日産自動車㈱本社にて形式上、「事務用機器操作業務」(専門26業務の1つ)を担う派遣社員として勤務してきた女性が、契約終了通告をされた、日産自動車に対して期間の定めのない労働契約上の地位を有することの確認、不法行為に基づく損害賠償などを請求。また、派遣元のアデコ㈱に対し、不当利得返還請求した訴訟
期日内容:被告2社からの主張


4月20日(火)
落合川とホトケドジョウを救え!~川が原告となった初の訴訟
13:30~ 東京地裁 527号法廷 
事件内容:落合川(東京都東久留米市)の埋め立て工事により、絶滅が危ぶまれているホトケドジョウの生育環境が破壊されるとして、周辺住民らが東京都に対して、工事の差し止めを求めた訴訟
期日内容:判決


4月21日(水)
熊本県警察官自殺の責任を問う国家賠償請求事件
10:00~ 熊本地裁 201号法廷
事件内容:熊本県警剣道部に配属された18歳の青年が、練習中のいじめ暴行や他部員からの「村八分」に遭い、警察寮で自殺したため、亡くなった警察官の両親が起こした国家賠償請求訴訟
期日内容:原告本人及び証人5人の尋問
根津公子さん・河原井純子さん停職処分取消訴訟
16:30~ 東京高裁 424号法廷
事件内容:卒業式等において君が代斉唱時に起立しなかったために受けた3カ月、1カ月の停職処分の取消しを求めた訴訟の控訴審
期日内容:第5回口頭弁論


4月22日(木)
ストップ! ザ八ッ場ダム~誰のための公共事業?
16:30~ 東京高裁 822号法廷 ※宇都宮市に対する訴訟
事件内容:ダム建設を阻止するための住民訴訟
期日内容:第4回口頭弁論
外国人に対する偏見が原因か?警察官違法発砲傷害致死国賠訴訟
11:30~ 東京高裁 424号法廷
事件内容:警察官が職務質問後逃亡した中国人に対し正当防衛と称して発砲し死に至らしめた事件について、遺族が警察官を任用する栃木県に対し損害賠償を求めて起こした訴訟の控訴審
期日内容:第4回口頭弁論


4月23日(金)
裁判権放棄密約文献閲覧禁止処分取消請求訴訟
11:00~ 東京地裁 522号法廷
事件内容:日本政府が在日米軍関係者による犯罪の裁判権を放棄するとした検察官用資料の閲覧を、国立国会図書館が禁止したことに対して、斎藤貴男さんがその処分取消しを求めた訴訟
期日内容:口頭弁論

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