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文化のココロ

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“アウトドア女子”“山ガール”と呼ばれるブームがある。
おもに20代、30代の女性が、トレッキングや登山を始めているのだ。健康、エコ、趣味としては比較的お金がかからない…等、要因はいろいろあるのだろうが、本当のところは分からない。
関連本もたくさん出版され、ファッション雑誌でも、アウトドアウェアが取り入れられていたりする。
そんな中、「女性向けアウトドアのお店」として、頻繁に紹介されているのが、中目黒の『BAMBOO LUNA(バンブールナ)』だ。おそらく、日本一有名な、ガールズアウトドアショップだろう。

「でもウチ、厳密に言うと、アウトドアだけの専門店、というわけでもないんです。機能がない普通の商品も、多いですよ。」

お話を伺いに行ったら、店長の立石悦史さんに、まずそう言われた。 え、ええええ……そうなんですか?

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ふと見ると確かに、普通の衣料品も多い。こちらは店長のおすすめ、Hooded"SARI"ワンピース。素材はコットンとヘンプで、とっても着心地が良さそうな手触り。

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置いてあるTシャツや小物、アクセサリーも、よく見ると、アウトドアと直結するものではないような…。

——『バンブールナ』は、メンズの『バンブーシュート』の姉妹店として、08年9月にオープンされたんですよね。キッカケは何だったんですか。
「最初は『バンブーシュート』で、女性向けのものを、1メートルくらいのハンガーに置いていたんですね。それが評判が良くて、『女の子もこういうの欲しいんだね』という話は、前からしてたんです。
うちはもともと、アウトドアからスタートした会社ではなく、アメリカン・カジュアルの衣料・雑貨の輸入・卸会社なので、アメリカによく行くんですが、5、6年前から、アメリカの大きなアウトドアショーに行くと、レディースのブランドの、勢いが出て来て、大きくなっていくのを目の当たりにして。
その頃、日本でもアウトドアブームのきざしが見えてきたので、じゃあレディースの店をやってみよう、ということになったんです。」
——日本で女の子がアウトドア服着るのって、ロックフェスが要因なのかな? というイメージがあるんですが。 
「それもありますね、日本でアウトドアを身近にしたのは、野外フェスかもしれませんね。」
——どんな年齢層のお客様が多いんですか。
「20代後半から30代前半ですね。『バンブーシュート』のほうも、年齢層は同じです。
個人的な経験からなんですが…、私も含めて、30歳前後のお客様が多いのは、20代に、東京で不健康的に散々遊んで、いろんなファッションを楽しんだ人たちが、30代になってから、アメカジやアウトドアなど、『より生活に密着した肩肘の張らないスタイル』『変わっていくけど、変わらないスタイル』を求めていくからなのかな、と思うんです。
実際にオフの日に、毎回アウトドアで遊んでいるかどうかは、別にして、そういうライフスタイルにしていきたいな、ちょっとオーガニックの石鹸を使ってみようかな、休みの日は公園で子供と凧でもあげようかな、そういう小さな意識だと思います。
…『バンブールナ』は、アウトドア屋でもあり、洋服屋でもある。また、アウトドア屋でもなければ、単なる洋服屋でもない、という特殊な立ち位置にいるんです。
アウトドアとファッション、完全に『縦』割りにカテゴライズされているものを、『バンブールナ』という価値観で『横』に切っているのが、うちの店なんです。
弊社は、50年代~70年代のアメリカ文化と、その周辺がルーツのひとつにあります。『横』に切っていく価値観というのは、そこに大きな影響を受けていると思います。
今、お店に置いてあるこのカタログ誌、『Whole Earth Catalog』も、感銘を受けたものの一つです。」

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『バンブールナ』のお店の片隅に置いてある、68年創刊の伝説のカタログ本『ホールアースカタログ』。Access to Tools(道具へのアクセス)というコンセプトで、生活全般から精神世界まで様々な情報を紹介、「地球上で自立して暮らすためのガイド」として、エコロジー思想の先がけとなった雑誌。現在はwebサイトで展開中。
http://www.wholeearth.com/

「例えばうちに、アメリカ製のキャンバストートバックを置いてるんですが、特徴的な機能性はなく、縫製も、アメリカ人らしい、おおらかなものなんですが(笑)、一枚布で出来ていて、すごく丈夫なんです。全然壊れない。生活で使っていくと、味が出て良くなると思うんです。
そういうものも、大切にしていきたい価値観のひとつです。
アウトドアの『HOW TO』を伝える事だけが目的ではないんです。アウトドアとアメカジが好き、そうしたら、通常のアウトドアショップと成り立ちが違ってしまいました、という…。バランスの説明が難しいのですが(笑)。」
——今って、アウトドアとタウンユースで買われるお客さん、割合はどんな感じなんですか?
「半々くらいですね。でも、『週末に山や野外イベントに行くんですけど』っていう方に、よくご相談されます。」

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「アウトドア用」のおすすめアイテムを選んで頂きました。バンブールナの関連会社『ソーズカンパニー』が輸入、卸しをしているブランド「GO LITE」のアイテム。伸縮性、速乾性があり、機能に優れ、かつキュート(シューズのみ、「LA SPORTIVA」)。

「アウトドアの1~10まで、全てがうちで揃うわけではありません。 いろんなお店の中の選択肢の一つとして考えていただくと、いいと思います。
例えば『富士山に行きたいんですが』とご相談いただいたとして、うちで揃わないものに関しては、どこどこで売ってますよ、っておすすめしたりします。」
——そんなフォローもされるんですね。
「しますします。うちで取り扱っていないブランドのアイテムも含めて、用途に合わせて、比較・検討のご相談にのっています。」
——媒体に出られている時、どうしても『お洒落ガール向け、アウトドアショップ』っていうふうにキャッチコピーが付いているので、お話するまで、こういうお店だと、思っていませんでした…。
「そのキャッチコピーもまったく間違いではないので(笑)。それも分かりやすい、ひとつの『バンブールナ』の側面です。
来るお客様によって、いろいろな解釈のできるお店だと思います。『バンブールナ』が持つテーマに、『From CITY to NATURE. From YESTERDAY to TODAY. THROUGH HIKE TOGETHER!!』というのがあります。『街も自然も楽しもう。古きよき伝統のハンドクラフトから、ハイテクなものまで楽しもう』という意味合いです。本当に、お客様やお付き合い頂いているメーカーの方々と一緒に、この立ち位置を楽しんで作っていけたらな、と考えています。」

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ごっついバックパックも扱っていますが、こんな、見たことがないような色合いの、可愛いリュックも。

——本当に、いろんな、独特なセンスのものが並んでいますよね…。これだけオリジナリティがあると、他のお店に参考にされてしまいそうですね。
「そう見てもらえるのは、ありがたいし、うれしいです。
アイテム的には、やはりセレクトしている業態なので、うちでしか買えないという、絶対的な商品で全てを揃えていくのは、難しいんですが…。
だからこそ、『バンブールナ』でご購入して頂ける事に、相対的な付加価値や意味を付けられるように、日々努力しています。」

今のブーム。エコバッグ、ゆるベジ、ヨガ、ベランダ菜園、等々。
深い考えもなく、流行りで手をつけてしまっているけど、実はひとつひとつに深い思想があり、本気で突っ込んでいくと、どこまで極めたらいいのか分からないことになる。
ファッションで何かを始めることは、別に悪いことじゃないと思う。私も断然ミーハーだ。だから雑誌を見て、「このアノラックかわいい! 買っちゃう!」とか、「アウトドア、ちょっとやっちゃおうかな!」とか、全然かまわないと思う。

自分が何を着て、何を食べて何を考えてどこに行くのか、真剣にライフスタイルを作り込むのは大変だ。だから人は「流行」を参考にする。
そして「流行」は何かを秘めていて、「いま人間は、こういうふうに動いたほうがいいんじゃない?」と、大きな力が働いて、自然発生するものなんじゃないかなあ……と、筆者は思っている。

『バンブールナ』が基準としている、「多少、大雑把でも、タフなトートバッグ」「使えば使うほど手に馴染む、長く愛せるひとつのアイテム」みたいなものが、今はきっと必要なのだ。

おそらくブームが終わっても、変わらないであろう『バンブールナ』は、かっこいいセレクトショップだった。機会があれば、行ってみて、品物を手にとってみると、楽しいと思う。ピンと来たら買えばいいし、来なければ買わなくていい(と、店長さんは思っていると思う)。
気に入って買ってしまったものが、アウトドアのお洋服だったら、山に登っちゃえばいい。そんなキッカケも、アリだと思う。

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店長の立石悦史さん。分からないことがあったら、がっつり相談にのってくれます!

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BAMBOO LUNA 【バンブールナ】
東京都目黒区青葉台1-28-7 #103
Phone: 03-5722-7508
営業時間: 月曜-金曜 12:00 - 21:00
土・日祝日 11:00 - 20:00
定休日: 第3木曜日
http://www.bambooshoots.co.jp/bambooluna/

【参考サイト】
BAMBOO LUNA

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大塚 幸代

大塚 幸代(おおつかゆきよ)
ライター。素食を食べに台湾に行きたい今日この頃です。
> 個人サイト 日々の凧あげ通信


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