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<8>「社会変える」勇気の一歩私も顔を上げて生きる何かを訴えるような目で見つめる女性、少年時代に性虐待を受けた場所でむせび泣く青年、バラが彫られた腕に残るリストカットの跡――。写真一点一点に、被写体になった性暴力被害者のプロフィルが添えられている。 米国在住のフォトジャーナリスト、大藪 新聞社のカメラマンだった1999年、イリノイ州の当時の自宅で 2006年4月、故郷の大阪で開いた講演会。大藪さんは、聴衆の中にいるだろう〈声なき被害者〉に呼びかけた。 「自分を責めないで。あなたは犠牲者じゃなくて、サバイバーなんです」 苦難を乗り越え、生き抜いた人をたたえる意味が込められた言葉、サバイバー。 会場で、兵庫県に住む響子さん(仮名)(31)が涙を流しながら聞いていた。 □■□ 響子さんは13歳の時、警察官を名乗る男に、民家の陰に連れ込まれ、性器を触られた。怖くて誰にも言えず、胸の奥に封じ込めた。 それからは、度々体調を崩し、学校を休んだ。何度も死にたいと考える。出会い系サイトで知り合った男たちとの関係に依存もした。「私は、どこかおかしい」。でも、自分では理由が分からなかった。 記憶の扉が開いたのは、26歳の時。ふと手にした本に「性的虐待」という言葉を見つけ、突然、13年前の被害がよみがえった。本にあったトラウマの症状が、自分に当てはまっていた。あれが私の人生を狂わせてきたのか――。 過去を克服するために、被害者の自助グループに参加し、思いを打ち明けた。フラッシュバックと闘い、わき上がる怒りと「犯人から逃げなかった自分が悪い」という自責の念に、もがいた。 大藪さんの講演を聞いたのは、そんな時だった。 「私も顔を上げて生きる」 07年11月、自らの企画で、仲間とともに大藪さんの写真展を開いた。さらに一歩を踏み出そうと、春からは、1年間の滞在予定でカナダに渡る。 「過去は消せない。それでも、生き延びた自分に誇りを持ちたい」 □■□ 大藪さんと、「性犯罪被害にあうということ」の著者、小林美佳さん(34)。実名で被害を公表した2人の女性は昨夏、支援者らに後押しされ、「性暴力をなくそう」キャンペーンを始めた。 啓発用の冊子には、こう記した。 〈みんなが性暴力の本当の姿を理解し、「あなたが悪いのではない。悪いのは暴力をふるった側だ」と言ってあげられるようになることが、被害者が声をあげられる条件です。そして、この犯罪を根絶する第一歩なのです〉 2人は口をそろえる。 「今、社会が耳を傾け、知ろうとしてくれている、と肌で感じる。この機会を逃してはいけない」 (おわり)
社会部・岸辺護、久場俊子、辻阪光平、佐々木栄が担当しました。 (2010年2月20日 読売新聞)
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