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きょうの社説 2010年4月16日
◎自民党の政権公約 法人税引き下げを切り札に
自民党が夏の参院選マニフェスト(政権公約)に法人税率の大幅引き下げを盛り込む方
針を固めたのは賢明な判断である。原案通り現行の約40%から20%台への引き下げが実現できれば日本再生の大きな力になるだろう。法人税率の引き下げを成長戦略の切り札にしてほしい。法人税をめぐっては、民主党内にも参院選のマニフェストに引き下げを明記すべきとの 声がある。鳩山由紀夫首相も参院予算委員会の集中審議で「減税の方向に導いていくのが筋だ」と意欲を示したが、財政悪化が深刻化し、子ども手当の満額支給にもメドが立っていない現状では、リップサービスにとどまらざるを得ないのではないか。たとえ民主党が新たに法人税引き下げをマニフェストに加えたとしても、早期実現はなかなか難しいと見ざるを得ない。 自民党は、法人税率の大幅引き下げを前面に押し立て、手当てすべき財源をどうねん出 するか、明示する必要がある。子ども手当や農家戸別所得補償制度といった民主党の目玉施策を含めて大ナタを振るってほしい。 重要な点は、財源を断じて消費税に求めないことである。日本経団連は法人税の引き下 げとともに、消費税を2011年度から2%ずつ上げ、早期に10%とするよう提言しているが、家計に負担を求める一方で、企業を優遇するような案を、国民は決して受け入れないだろう。消費税の見直しは、景気回復後に腰を据えて行うべきであり、今は景気対策に徹してほしい。 世界を見渡しても、日本の法人税はあまりにも高い。地方税を含む法人税の実効税率は 40・69%となり、英国やドイツ、フランスの30%前後、中国の25%、韓国の24%と比べて突出している。これだけ差があると、国内での設備投資をあきらめ、海外に目を向ける企業が増えるのは当然だ。 減税で一時的に法人税収が減ったとしても、企業の海外移転を食い止め、国内で投資や 雇用が増えるなら、長い目で見て元は取れる。法人税率の引き下げは、日本企業の国際競争力を高めるだけでなく、外国からの投資を呼び込む誘い水にもなるはずだ。
◎近江町いちば館1年 食の魅力引き出す仕掛けを
金沢市の近江町いちば館は16日で全館開業から1年を迎えた。市場全体の来場者が増
え、個性的な飲食店がビルに入居したことで、客層の幅も広がった。足並みはまだ十分に揃わないものの、日曜も営業しているというイメージも定着してきた。まずまずの1年だったと言えるが、再開発の真価が問われるのは、むしろこれからである。観光客相手なら、いつも同じ雰囲気でよいかもしれないが、地元に支持されてこその近 江町市場であり、市民の関心を引きつけるには、工夫を凝らしたイベントを継続的に打ち出すなどソフト面の充実が求められる。市場や食の魅力を引き出す仕掛けを考え、地域一体で施設の活用策に知恵を絞ってほしい。 近江町市場は、再開発ビルの国道側は現代的な顔に変わったが、対面販売の熱気や迷路 感覚など、昔ながらの市場の雰囲気は健在である。ビルに飲食店が集積し、「食の武蔵」というイメージは一層強まった。行列ができる店、市場発のヒット商品なども増やしていきたい。地下1階では飲食店の撤退も相次いだが、開館1年を機に市場全体でフロアの活性化策を考える必要がある。 イベント広場が設けられたことで、「ラ・フォル・ジュルネ『熱狂の日』音楽祭」や「 金沢ジャズストリート」など、まちなかイベントでは欠かせぬ会場の一つになった。3月にはビートルズの生演奏で地酒を味わうイベントなども行われたが、市場の個性を前面に押し出すなら、そうした食を切り口にした楽しい企画がもっとあっていい。 奥能登の能登大納言を使った小豆粥の試食会もあったが、能登や加賀でブランド化を目 指す商品があれば、消費者の反応を確かめる場として積極的に市場を活用したい。石川の食文化発信も、近江町に期待される大事な機能である。 近江町市場が都心に賑わいを生み出す核の一つであることに変わりはない。市場が発す る熱気は都市のエネルギーであり、金沢の個性を際立たせるという点で、その役割はますます重要である。
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