UPDATE:トヨタ創業家と歴代社長との深まる反目―リコール問題で激化
4月14日21時27分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
【豊田(愛知県)】トヨタ自動車の品質危機が、長年社内にくすぶっていた派閥抗争を顕在化させ、なおかつ悪化させている。創業一族の豊田家と非創 業家メンバーのマネジャーらが、トヨタが抱える問題をめぐって非難の応酬を続けているのだ。
舞台裏の小競り合いは、特にこの数週間で激しさを増している。創業者の孫、豊田章男社長(53)は、創業家出身でない幹部の一人を排除しようとした。トヨタの前社長で現在は副会長の渡辺捷昭氏だ。
今年1月の最初の大規模リコールからほどなくして、豊田氏は仲介者を通じて渡辺氏に対し、トヨタ本体からの離職と系列会社の経営を打診した。豊田氏からこの人事を聞いたとする、ある幹部が明らかにしたものだ。渡辺氏はこの打診を拒んだ。
かつて報じられたことのないこうした動きは、継続中の危機を きっかけに、長く抑え込まれてきた分裂が、今や表面化しつつあることを示す劇的な一例だ。トヨタの75年の歴史で前例のない危機からの立て直しに幹部があえぐなか、内部抗争が経営分裂を招きつつある。
豊田氏と側近は、高い成長率や厚いマージンと引き換えに品質を犠牲にした非創業家メンバーの社長らによって弱体化した企業を同氏は引き継いだ、と公言している。
豊田氏は3月、北京での記者会見で、一部の関係者が利益を過度に重視した結果、問題は発生したと指摘。社外の「過大な評価」を集め、「会社の中の一部には(中略)褒められすぎて収益中心に考えた者がいた」と説明した。ただ、誤りの最終的な責任は自身にあると認めた。
その1週間前、米国トヨタのかつての重役で、現在は競合他社に移っているジム・プレス氏は 「創業家に対して反発する金儲け主義の人々によって、会社が数年前に乗っ取られたことに問題の根本的な原因がある」との声明を出した。その上で、プレス氏はこれら幹部は「顧客第一主義を維持する姿勢を持ち合わせていなかったが、豊田氏は違う」とした。
トヨタの広報担当者は内部対立についてコメントを控えるとし「人事異動は正式決定まで話すことはない」と述べた。担当者は、豊田氏とプレス氏の発言についてもコメントせず、渡辺氏の発言を求める要請を拒んだ。
非創業家メンバーのマネジャーらは独自のキャンペーンを展開しており、トヨタが米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜き去り世界最大の自動車メーカーになったことを賞賛された時期、成長率を重視する戦略をめぐり豊田氏が直接反論することはなかった、としている。
これらのマネジャーは、トヨタが現在、直面する問題は、品質危機というよりむしろ豊田氏の経営手腕と広報活動に関連する危機であり、そこには豊田氏は世界企業のトップに立つ準備ができていない、とのマネジャーらの長年の主張が反映されている、と指摘する。
渡辺氏の側近の一人は、創業家のメンバーの言動について、「だいぶ前からあんなものの言い方はみっともないぞ、と(周りには)言っている」と語り、「これは世襲批判をかわすためにやっているのか。あるいは自分の存在感を出して正当化したいのか」と語気を強めた。
さらに、「これだけグローバルに人員をかかえるとトヨタは社会の公器」だとし、「そうなったときにものすごく 大切な仕事は利益出して、税金を納めることでしょう。それができないで、なにを言っても社会の責任を果たさない。だから、きちっと利益を出して、世界各国で税金を納めている。そのこと自体を批判するということはまったくナンセンスだと思う」と語った。
1995年から99年まで社長を務めた非創業家メンバーの奥田碩相談役(77)は、トヨタ車の急加速に関する問題が深刻化して以来、同僚2人に対し、「章男は辞めるべき」と述べている。昨年、取締役から外れた奥田氏は、現在でも長老格として影響力を誇っている。トヨタは奥田氏のコメントを求める本紙の要請を拒んだ。
トヨタ関連の著作の多い東京大学の藤本隆宏教授(専門は技術・生産管理)は、問題を公に指摘することはトヨタ式「カイゼン」の特徴、としながらも、名指しの非難や、攻撃の対象が容易に特定できる非難は極めて異例、と指摘している。
内部抗争のルーツは、章男氏の叔父の豊田達郎氏が病気療養のために社長を辞任した95年にさかのぼる。社長職が創業家の手を離れたのは、創立者の豊田喜一郎氏の従兄弟である豊田英二氏が67年に社長に就任した後では初めての ことだ。トヨタは95年まで市場シェアを減らし、1950年以来の赤字計上の危機に直面していた。 日本経済の低迷に加え、米国との貿易摩擦、円高などがトヨタの経営を圧迫していた。
95年以降、奥田氏を筆頭に複数の非創業家メンバーが社長に就任した。それは09年に退任した渡辺氏まで続いた。この間、トヨタの財務は改善し、世界で最も尊敬され、かつ研究される企業への変貌を遂げつつあった。
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舞台裏の小競り合いは、特にこの数週間で激しさを増している。創業者の孫、豊田章男社長(53)は、創業家出身でない幹部の一人を排除しようとした。トヨタの前社長で現在は副会長の渡辺捷昭氏だ。
今年1月の最初の大規模リコールからほどなくして、豊田氏は仲介者を通じて渡辺氏に対し、トヨタ本体からの離職と系列会社の経営を打診した。豊田氏からこの人事を聞いたとする、ある幹部が明らかにしたものだ。渡辺氏はこの打診を拒んだ。
かつて報じられたことのないこうした動きは、継続中の危機を きっかけに、長く抑え込まれてきた分裂が、今や表面化しつつあることを示す劇的な一例だ。トヨタの75年の歴史で前例のない危機からの立て直しに幹部があえぐなか、内部抗争が経営分裂を招きつつある。
豊田氏と側近は、高い成長率や厚いマージンと引き換えに品質を犠牲にした非創業家メンバーの社長らによって弱体化した企業を同氏は引き継いだ、と公言している。
豊田氏は3月、北京での記者会見で、一部の関係者が利益を過度に重視した結果、問題は発生したと指摘。社外の「過大な評価」を集め、「会社の中の一部には(中略)褒められすぎて収益中心に考えた者がいた」と説明した。ただ、誤りの最終的な責任は自身にあると認めた。
その1週間前、米国トヨタのかつての重役で、現在は競合他社に移っているジム・プレス氏は 「創業家に対して反発する金儲け主義の人々によって、会社が数年前に乗っ取られたことに問題の根本的な原因がある」との声明を出した。その上で、プレス氏はこれら幹部は「顧客第一主義を維持する姿勢を持ち合わせていなかったが、豊田氏は違う」とした。
トヨタの広報担当者は内部対立についてコメントを控えるとし「人事異動は正式決定まで話すことはない」と述べた。担当者は、豊田氏とプレス氏の発言についてもコメントせず、渡辺氏の発言を求める要請を拒んだ。
非創業家メンバーのマネジャーらは独自のキャンペーンを展開しており、トヨタが米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜き去り世界最大の自動車メーカーになったことを賞賛された時期、成長率を重視する戦略をめぐり豊田氏が直接反論することはなかった、としている。
これらのマネジャーは、トヨタが現在、直面する問題は、品質危機というよりむしろ豊田氏の経営手腕と広報活動に関連する危機であり、そこには豊田氏は世界企業のトップに立つ準備ができていない、とのマネジャーらの長年の主張が反映されている、と指摘する。
渡辺氏の側近の一人は、創業家のメンバーの言動について、「だいぶ前からあんなものの言い方はみっともないぞ、と(周りには)言っている」と語り、「これは世襲批判をかわすためにやっているのか。あるいは自分の存在感を出して正当化したいのか」と語気を強めた。
さらに、「これだけグローバルに人員をかかえるとトヨタは社会の公器」だとし、「そうなったときにものすごく 大切な仕事は利益出して、税金を納めることでしょう。それができないで、なにを言っても社会の責任を果たさない。だから、きちっと利益を出して、世界各国で税金を納めている。そのこと自体を批判するということはまったくナンセンスだと思う」と語った。
1995年から99年まで社長を務めた非創業家メンバーの奥田碩相談役(77)は、トヨタ車の急加速に関する問題が深刻化して以来、同僚2人に対し、「章男は辞めるべき」と述べている。昨年、取締役から外れた奥田氏は、現在でも長老格として影響力を誇っている。トヨタは奥田氏のコメントを求める本紙の要請を拒んだ。
トヨタ関連の著作の多い東京大学の藤本隆宏教授(専門は技術・生産管理)は、問題を公に指摘することはトヨタ式「カイゼン」の特徴、としながらも、名指しの非難や、攻撃の対象が容易に特定できる非難は極めて異例、と指摘している。
内部抗争のルーツは、章男氏の叔父の豊田達郎氏が病気療養のために社長を辞任した95年にさかのぼる。社長職が創業家の手を離れたのは、創立者の豊田喜一郎氏の従兄弟である豊田英二氏が67年に社長に就任した後では初めての ことだ。トヨタは95年まで市場シェアを減らし、1950年以来の赤字計上の危機に直面していた。 日本経済の低迷に加え、米国との貿易摩擦、円高などがトヨタの経営を圧迫していた。
95年以降、奥田氏を筆頭に複数の非創業家メンバーが社長に就任した。それは09年に退任した渡辺氏まで続いた。この間、トヨタの財務は改善し、世界で最も尊敬され、かつ研究される企業への変貌を遂げつつあった。
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最終更新:4月14日21時27分
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