「シッパル!また差別の犠牲者が出た!」 趙世衡(チョ・セヒョン、63)氏が日本で窃盗容疑で逮捕されたというニュースを聞いた金喜朗さん(仮名)は、思わず叫んだ。金喜朗さんは在日韓国人で、日本で差別と戦った結果として囚われの身となり、二年前に韓国に帰ってきたばかりだ。「日本人は韓国人の犯罪が多いというが、その原因に日本人の差別意識があることを認めようとしない。」と血を吐くような心情を吐露した。
1983年、一人の大泥棒が捕まった。趙世衡。当時39歳。韓国中の資産家、権力者の邸宅ばかりを荒らし回り、貧乏な老人宅にひょいと大金を投げ入れる。盗む際には、人を傷つけず「大盗」と呼ばれた。16年にわたる刑務所生活を終えて釈放されてから、趙さんは警備専門会社エスワンの犯罪予防研究所で専門委員を務め、信仰活動と不遇な人を助けることに専念してきた。 ところが、ホームレス更生自立会で講演を行うために日本を訪れた趙さんを悲劇が襲った。昨年11月24日に趙さんが『日本の住宅警備システムを試してみようとして渋谷の住宅3軒に侵入した』(本人談)ところ、なんと日本の警官が踏み込んできてもみ合いになり、銃で右肩を撃たれたのだ。その上、刃物で警察官を切りつけたとして殺人未遂および特殊公務執行妨害の容疑で逮捕された。しかし、趙さんは「日本警察が銃を撃ったのは私が刃物を放した後だった」と主張して罪状を否定している。
金喜朗さんは、贖罪を果たし改心した彼の心を蝕み陥れた日本の犯罪誘発社会の問題点を指摘した。犯罪に対して無防備な日本では誰でも泥棒やスリになってしまうことはしかたのないことだ。「趙さんの失敗は、猟銃を持って人質を取らなかったことだ。おかげで、英雄になりそこねたね。」と金喜朗さんは、監獄の中でさびしくつぶやいた。番組では、波乱に満ちた大盗の生涯を克明に追う。
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