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追跡・発掘:外国人選挙権 一転して反対の意見書 県議会、95年に賛成も /山梨

 ◇「情勢変化」とは政権交代?

 永住外国人に地方選挙権を与える法案は、地方議会などからの反発を受け、今国会への提出が見送られる情勢だ。山梨県議会は95年、選挙権付与に賛成する意見書を全会一致で採択している。ところが先月には一転して反対の意見書を採択した。背景に、民主党政権に対抗しようとする自民党本部の思惑が見え隠れする。【曹美河】

 「日本国民ではない永住外国人に対し、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等を付与することは、憲法上問題があると言わざるを得ない。(中略)永住外国人に対する地方参政権の付与について、法律を制定することのないよう強く要望する」

 この意見書は2月定例県議会最終日の先月23日、賛成多数で採択された。しかし、95年の2月定例会では、次のような意見書が全会一致で採択されている。

 「最高裁判所は(95年)2月28日、定住外国人の地方選挙への参政権について、憲法は禁止していない旨の判断を示したところである。(中略)政府におかれては、相互主義を念頭に入れる中で、定住外国人の地方選挙への参政権の確立について、積極的に取り組むことを強く要望する」

 「強く要望する」は共通しているが、中身は180度違う。

   ◇  ◇

 先月23日の採決で選挙権付与に反対の立場を取ったのは、自民党系会派に所属する26議員中24議員。このうち5議員は、95年には賛成の立場だった。その一人で自民党県連の重鎮でもある前島茂松議員(自民党新政会)は、立場を変えたことについて「国際化が進む中で、15年前とは情勢が変わっている」と説明した。しかし、それは社会情勢よりも政治情勢と見たほうがよさそうだ。

 95年の意見書にある最高裁の判断は、全国に外国人地方選挙権付与の機運を高めた。全国都道府県議会議長会によると計34の都道府県で賛成の意見書が採択され、山梨もこの流れに乗った形だった。

 しかし、政権交代で民主党主導の法制化が現実味を帯びると、急に流れが変わる。自民党本部は反対意見書の採択を促すよう各都道府県連に指示。自民系が多数を占める多くの地方議会で反対に転じる動きが活発化した。

 同じく今回“転向”した深沢登志夫議員(自民クラブ)は「将来的には付与に賛成」と明かした上で「民主党の法案提出は選挙目当て。民主党主導の法制化には賛成できない」と話す。

   ◇  ◇

 外国人の人権問題に取り組む市民団体「オアシス」(甲府市)の山崎俊二事務局長は「議論が全く深まっていない。人権問題を政争の具にするのは情けない」と指摘する。実際、2月定例会で外国人選挙権そのものについて議論されたのは委員会と本会議を合わせても10分足らずだ。

 選挙権獲得に向けて活動を続けてきた在日本大韓民国民団(民団)県地方本部は、県議会の対応に戸惑いを隠せない。民団と自民党との関係は古く、95年の意見書採択も、その良好な関係が背景にあった。鄭郁・県本部団長は「昔から応援してくれていた議員たちも『党の方針だから』と一様に反対に回った。非常にがっかりしている」と話している。

毎日新聞 2010年4月15日 地方版

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