知って仰天の秘密も…　就職人気企業の「実力度」

　ウチの会社は何位だろうか？　学生が選ぶ「就職人気ランキング」は企業の人事担当者にとっては通信簿のようなものだ。

　リクルートが先週公表した２０１０年のランクでトップだったのはＪＴＢグループ。以下、ＪＲ東海、ＪＲ東日本と続き、５位に全日空が入った。今回は旅行・運輸関連が強く、ＪＲ西日本（１６位）やＪＲ九州（２７位）、近ツー（５４位）、東京地下鉄（６５位）、小田急電鉄（７２位）、東急電鉄（８４位）が１００位以内にランクインしている。

「鉄道の人気化は、少子化が影響しています。少子化で一人っ子や長男が増加しました。親の老後を心配する結果、地元志向になります。できるだけ転勤のない職業に就きたい。鉄道会社はピッタリです」（経営学者の長田貴仁氏）

　レジャー関連も人気だ。東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドや玩具大手のバンダイがトップ１０入りした。金融も根強い人気だ。そこでトップ１０企業の初任給や平均年収、業績はどうなのか。実力度を調べてみた（下記の表参照）。

　売上高は、レジャー２社以外は１兆円超え。平均年収は、世間一般サラリーマンの平均４２９万６０００円（国税庁調査）に比べ、はるかに高額だ。

　初任給は、そこそこといったところか。ＩＴ・ネット関連のサイバーエージェントの初任給は３４万円、サイボウズも３０万円とかなり高いが、学生の人気は高くない。トップ１００を眺めると、楽天やヤフー、ぐるなび、「モバゲー」のディー・エヌ・エーなどネット企業が見当たらないことに気付く。

「今の学生は、親世代がリストラに苦しむ姿を目の当たりにしています。だから安定した会社を目指します。どんなに勢いがあっても、ベンチャー企業はライブドアのようにアッという間に崩壊することを知っているのです」（前出の長田氏）

　かつて人気上位の常連だった三井物産（１９位）や伊藤忠商事（２３位）、三菱商事（２８位）など商社も陰りが見えている。理由は、中国やインド、ブラジル、アフリカ諸国への赴任を嫌ってのことだ。欧米勤務ならいいけど新興国は勘弁して……ということらしい。案外、ちゃっかりしている。

　就職人気ランクからは企業の実力度だけでなく、若者の志向の変化が読み取れるのだ。

【人気企業の実力度】

◇順位／社名／初任給／平均年収（平均年齢）／売上高／営業利益

◆１／ＪＴＢグループ／（注１）２０万６０００〜２２万８０００円／――／１兆２７６０億円／１１９億円

◆２／ＪＲ東海／２２万９０００円／７５３．９万円（３８．８）／１兆５７０２億円／３８２３億円

◆３／ＪＲ東日本／２１万６０００円／６８８．９万円（４２．１）／２兆６９６９億円／４３２５億円

◆４／日本郵政グループ／（注２）２２万５７９０円／――／１９兆９６１７億円／※８３０５億円

◆５／全日本空輸／２０万１０００円／７９９．５万円（３８．４）／１兆３９２５億円／７５億円

◆６／オリエンタルランド／２０万５０００円／７７８．０万円（４１．７）／３８９２億円／４００億円

◆７／三井住友銀行／２０万５０００円／８２５．８万円（３５．６）／（注７）３兆５５２８億円／（注７）※４５３億円

◆８バンダイ／（注３）２０万４０００円／（注６）７０５．６万円（３８．０）／（注６）４２６３億円／（注６）２２３億円

◆９／みずほＦＧ／（注４）１７万４０００円／（注４）６８１．１万円（３５．９）／３兆５１４４億円／※▲３９５１億円

◆１０／東京海上日動火災／（注５）２０万３０００円／８５０．７万円（４０．３）／（注８）３兆５０３１億円／（注８）※▲１５１億円／１０

三菱東京ＵＦＪ銀行／１７万４０００円／８２５．４万円（３７．７）／（注９）５兆６７７４億円／（注９）※８２８億円

〈平均年収、売上高、営業利益（※は経常利益）は０８年度。初任給（大卒）の一部は「四季報」（東洋経済）を参考にした。（注）の１はＪＴＢ首都圏１０年３月入社、２は０９年４月入社実績、３はバンダイナムコＨＤ傘下３社計、４はみずほ銀行、５は東京海上ＨＤ傘下の損保、６はバンダイナムコＨＤ、７は三井住友ＦＧ、８は東京海上ＨＤ、９は三菱ＵＦＪ・ＨＤ〉

（日刊ゲンダイ2010年4月12日掲載）