ゼネコン(総合建設会社)大手が新興国で工事採算の悪化に直面している。鹿島は13日、2010年3月期の連結営業損益が90億円の赤字に転落するとの業績予想を発表した。営業赤字は1961年の上場来初。アラブ首長国連邦(UAE)ドバイでの土木工事などで300億円を超える損失が発生。同工事では大林組も損失処理に伴い540億円の最終赤字になる見通し。国内受注の低迷で各社は海外市場に活路を求めざるを得ず、新興国リスクをいかに回避するかが最重要の経営課題になってきた。
鹿島は前期の受注高(単体ベース)も従来予想の1兆450億円から9440億円に修正した。ゼネコン最大手である鹿島の年間受注高が1兆円を割り込むのは1986年以来で、受注環境の厳しさが改めて浮き彫りとなった。
ドバイの無人鉄道システム「ドバイ・メトロ」は05年に大林組などと共同受注したが、建設資材費や労務費の高騰で採算が悪化。発注者からの設計変更や追加工事に応じたが、工事費をめぐる発注者との交渉で代金回収が思惑通りに進まず、損失処理に追い込まれた。アルジェリアの東西を結ぶ高速道路の建設工事でも追加工事の発生などで経費が膨らみ、海外工事の損失は合計で300億円を超えるという。
海外工事で巨額の損失が発生した一方で、国内工事は販管費を圧縮するほか、受注時の採算性を厳格に審査し、利益率は改善。資産売却などで連結経常損益は75億円の黒字を確保する。繰り延べ税金資産を110億円取り崩すが、東京都内でビルを保有する特別目的会社への優先出資の一部をファンドに売却して得た170億円を特別利益に計上し、最終損益130億円の黒字になる。
11年3月期は連結営業損益が260億円の黒字に転換する予想を発表しているが、アルジェリアの工事では工期や支払い条件などをめぐる発注者との交渉が続いており、追加的な損失発生のリスクも残る。工事は当初、10年2月をメドに完了する予定だったが、現時点で工事の進ちょく率は60%にとどまっている。ドバイの工事では損失処理は完了したとしている。
海外工事の損失発生リスクを抱えるのは鹿島だけではない。「ドバイ・メトロ」の工事で同社と共同企業体を構成する大林組は3月、巨額損失で前期の最終損益が540億円の赤字になると発表している。大成建設はトルコやドバイで大型工事を抱えるほか、アルジェリアの高速道路工事も鹿島と共同受注しており、損失発生の恐れがある。
清水建設はドバイの人工リゾート島で06年に高級分譲コンドミニアム「マリーナ・レジデンス・アンド・タウンハウス」の工事をドバイ政府系開発会社のナキールから受注。竹中工務店も中東の工事で未回収の債権を抱えている。
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