【コラム】100年ぶりの「住所革命」成功なるか(下)

 こうした問題を解決するため、1996年に「国家競争力強化企画団」による「道路名および建物番号の付与事業」が始まった。だが、アジア通貨危機によって予算が不足する事態となったため、事業は頓挫(とんざ)した。その後、地方自治体ごとに新たな住所を定める事業が進められたが、統一された基準がないため、混乱が続いた。そんな中、2006年に「道路方式の住居表示などに関する法律」が制定され、すべての公的な帳簿に道路方式の住居表示を記載するよう義務付ける根拠が整った。

 「新住所事業」は、長期的には国益にとってプラスになる可能性が高い。世界で地番に基づく住所を使用しているのは韓国と日本だけだ。国際標準化機構(ISO)が、世界で住所の標準化を進めているため、現在の住居表示が物流などの面で障害になり、不利益を被る可能性が高い、と政府は説明している。道路方式の住居表示が定着すれば、年間に4兆3000億ウォン(約3546億5300万円)の社会的・経済的なコストの軽減につながる、という研究結果も報告されている。

 政府は今年6月までに、道路の表示板の交換をはじめとした、新たな住居表示の実施に向けた施設の整備を終える方針だ。そして、告示を経て、今年末から政府レベルで新住所への変更作業に着手する。新住所事業の成否は、新たな住居表示の定着に要する期間や、国民の混乱をいかに最小限に抑えるかにかかっている。地方自治体が独自に設置した、道路の表示板や建物の住居番号表示板320万個を交換するのに、750億ウォン(約61億8400万円)を無駄遣いした以前の失敗を繰り返してはならない。

 行政安全部によると、3月末現在、全国16の広域自治体(ソウル特別市、釜山など6広域市〈日本の政令指定都市に相当〉、道〈都道府県に相当〉)の大部分で、新たな住居表示の実施に向けた事業の進捗(しんちょく)率は90%以上に達しているが、ソウル市だけは41%にとどまっているという。行政や産業、観光の中心地であるソウルが範を垂れてこそ、新住所事業が順調に進められるものだ。公務員たちの取り組みが遅ければ、国民の理解を得るのもそれだけ遅くなり、それに伴って、「100年ぶりの住所革命」も失敗する危険性が高くなる。

趙正薫(チョ・ジョンフン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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