中国で拉致・脱北者送還に関与、韓国人の男逮捕

 ソウル中央地検は11日、北朝鮮の朝鮮人民軍保衛司令部の指示を受け、中国で情報収集活動を行い、反北朝鮮活動家の拉致や脱北者の送還などの任務を遂行していたとして、工作員の韓国人男性(55)を今月8日に逮捕していたことを明らかにした。男は逃亡先の中国から帰国したところを拘束された。

 調べによると、男は1999年に朝鮮人民軍保衛司令部の「延吉工作組」に所属する女性工作員(51)と協力関係を結んだ。男は当時、中国・山東省で麻薬取引を行っており、「高品質の麻薬を入手できる」との工作員の誘いに乗った。男は97年に覚せい剤使用の罪で懲役10年の実刑判決を受け、出所後に貿易会社を経営し、密輸した覚せい剤を販売していたが、検察の捜査が迫り、中国に逃亡し、不法滞在を続けていた。

 男は2000年2月18日に中朝国境を流れる豆満江を渡り、咸鏡北道茂山から北朝鮮に入り、平壌に15日間滞在し、工作員教育を受けた。その上で、男は工作資金1万ドル(約93万円)と麻薬2キロを受け取り、中国に派遣され、女性工作員と同居しながら、脱北者の手引きをする韓国人を拉致したり、中国の朝鮮族が把握している軍事機密を入手したりする役割を果たしていた。

 男は02年3月、中国に派遣された国家情報院職員を含む各機関別の中国派遣要員の現況を調べるよう指示を受け、情報収集を開始するとともに、北朝鮮軍佐官級出身の脱北者をかくまった中国・延吉市の食堂経営者に関する調査を行ったとされる。

 検察はまた、男が05年5月に中国で行方不明になった男性(61)を拉致した可能性が高いとみて調べている。このほか、06年には北朝鮮から派遣された拉致工作グループと共に50代の脱北者を拉致し、北朝鮮の清津に連行したとの情報もつかんでいる。

 男は共に活動していた工作員が中国公安当局に摘発され、懲役18年の刑を受けたことから、韓国への帰国を決意したという。

チェ・ソンジン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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