2010年4月11日
【在日 外国人参政権を考える】 (8)地方選挙への影響力
候補者を「品定め」した民団
平成18年秋。まもなく告示を迎えようとしていた大阪市議旭区選挙区補欠選挙に候補者を擁立した自民、民主、共産の市議会3会派に、在日本大韓民国民団(民団)大阪府地方本部旭支部から突然、「政策を聞きたい」と連絡があった。
新人4人が1議席を争う厳しい戦い。在日コリアンは投票権がないとはいえ、PTA会長なども務めるほど地域に深く根を張った存在だ。その影響力は無視できないと判断した3会派は要求に応じた。
時間をずらして旭支部に呼ばれた3会派の幹部や候補者らは、15人ほどの支部幹部らの前で重点政策を一つひとつ説明した。
「全体的にぴりぴりした雰囲気。まるで候補者を品定めするようだった」。自民関係者は振り返る。
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永住外国人への地方参政権付与の是非をめぐっては、多くの永住者が住む都市部の選挙に与える影響を検証する方が身近な判断材料になる。
在日コリアンが大半を占める特別永住者数が約6万4620人(1月現在)と国内最多を誇る大阪市。中国籍などを含む永住者の成人に参政権を与えれば、概算で約7万3千人の新たな有権者が生まれる。市内有権者の3%余だ。しかし当落線上の影響力は決して小さくない。
19年4月の前回市議選をもとに同じ投票率で試算すると、永住者が次点落選者に全票を集めた場合、最下位当選者と逆転するケースは選挙が行われた23区のうち14区に上る。特別永住者が最も多く、新たに約2万3千票が生まれる生野区(定数5人)では、永住者票だけで2人を当選させることが計算上は可能となる。
先の旭区補欠選では、自民新人が2万3千票差で制した。永住者票は約1300票。この動向が結果を左右することは間違いない。
少子化で日本人の人口減少が続く中、今後、永住者の比重が高まるほど影響力は大きくなる。
× × ×
参政権がなくても各会派と面接してまで地方選挙に関与した民団。参政権が与えられれば、さらに強力な“圧力団体”として君臨するのか。
在日コリアンと接する機会の多い公明の大阪市議は「在日の意識は多様化し、民団の求心力も落ちた。特定候補者に票を集中させることは無理」と否定する。
近藤敦名城大教授(49)も「同じ国籍の人が同じ投票行動をするとは限らない」と指摘し、参政権の意義について「永住者が社会の一員としての連帯感と尊厳を持てるだけでなく、周辺の国々にも開かれた社会とのメッセージを与える。日本にとってもプラスになる」と強調する。
一方、反対派はマイナスが大きいと主張するのだ。
「在日が参政権をもつと、日本人との間で政治的な対立が生まれる。世論が反発し、外国人への排外主義が広がる可能性もある」。保守系団体「日本会議」の江崎道朗専任研究員(47)の懸念だ。
在日と日本人の融和につながらず、むしろ溝が深まるという危惧。果たして杞憂(きゆう)だろうか。
関西の在日コリアン(特別永住者) 法務省によると平成20年末現在、近畿2府4県で20万359人。全国の約48%を占める。内訳は大阪府10万9763人▽兵庫県4万8911人▽京都府2万9608人▽滋賀県5427人-など。特別永住者が最も多い大阪市生野区は、近年入国した一般永住者やその他の外国人登録者を含めると2万8423人(21年末現在)で、区人口の約21%。
(2010年4月11日 09:18)
Category:社会
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