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【在日 外国人参政権を考える】(7)交わらぬ歴史認識

内政干渉、安全保障に危機感

 平成17年8月、東京都杉並区の議場。60席ほどの2階傍聴席に殺気だった集団が詰めかけていた。「そんな教科書を許していいのか」「恥を知れ」。山田宏区長(52)が答弁するたびに傍聴席では激しいやじと怒号が飛び交った。

 区教委がこの年、18年度から中学校で使う歴史教科書について、日本の歩みの負の面を強調した「自虐史観」からの脱却を掲げる扶桑社発行の教科書を採択した。これに対し、集団は「歴史を歪曲(わいきよく)するものだ」と反発、採択を撤回させようと議場に押しかけたのだ。

 議長が何度も傍聴人に「静粛に」と注意しても、「引っ込め」と罵声(ばせい)が浴びせられた。

 本会議終了後も集団は区長室前に押しかけ、「区長を出せ」と叫び続けた。

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 衆院議員を経て11年から区政を担う山田区長は「常軌を逸した抗議活動。こんな事態は経験したことがない」と振り返った。

 当時、杉並区が扶桑社版を採択する可能性が高いと報じられると、山田区長のもとには在日本大韓民国民団(民団)の各支部などから抗議の手紙やファクスが殺到した。議場に詰めかけた集団にも民団関係者の姿が多くみられたという。

 「合法的な活動だ」と主張する民団関係者に対し、山田区長は「外国人が私たちの子弟の教育内容に関与するのは内政干渉」と指摘し、民団が求める永住外国人への地方参政権に強い危機感を訴えた。

 「参政権を与えたら必ず活動がエスカレートする。日韓両国は歴史認識でかなり意見が違う。信念のない首長や議員なら、波風を立てないように彼らの意見になびいてしまうだろう」

 このエピソードは、地方参政権ぐらい与えてもいい―という安易な容認論を揺るがせる説得力をもつ。

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 自治体の意思はときに国政を左右する。参政権反対派からは安全保障への影響を懸念する声が上がる。

 外国人が米軍・自衛隊基地の所在地のほか、朝鮮半島に近い対馬(長崎県)など国境付近の自治体に集団移住すれば、地方選挙の当落で一定の影響力を及ぼすことが可能だ。韓国の不法占拠が続く竹島(島根県、韓国名・独島)などの領土問題でも自治体の意思に介入できる余地が生じる。

 「本国と日本のどちらに忠誠を誓うのか。韓国に有利な行動をとることは韓国国民としての在日の義務でもあるが、二重国民のようなすっきりしない感情を残す」と山田区長。一方、民団関係者は「極めてまれな例を示し、議論をすり替えている。私たちは99%が都市部に住み、外国人登録法で管理されている。生活実態のないところに虚偽申告をすれば刑事罰もある。集団移住なんてできない」と反論する。「普段の生活のことで参政権を求めている。なぜ重箱の隅を突き、わずかしかいない私たちを危険視して排除するのか」

 危機管理の観点で考える反対派。生活実態から国政への影響を否定する民団。双方の主張は交わらない。


 外国人参政権に関する決議・意見書 平成5年、大阪府岸和田市議会の決議を機に34都道府県、1200市町村以上の議会が賛成の立場で可決。しかし昨年末から反対に転じる例が続出。永住外国人地方参政権に反対する国民フォーラムの調査では今年3月末現在で反対か慎重な対応を求める決議は34県。反対の決議は対馬、壱岐両市(長崎県)や与那国町(沖縄県)など「国境の島」でも相次いでいる。

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