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【在日 外国人参政権を考える】(5)帰化手続きの緩和

書類の厚さ数センチ…あまりに煩雑

 琵琶湖畔に事務所を構える「近江渡来人倶楽部」。古代に朝鮮半島からの渡来人が多く移り住んだ滋賀県の在日コリアンらが、多文化共生社会のモデルを目指す目的で平成12年に設立した任意団体である。

 代表を務めるのは、在日2世の河炳俊(ハビョンジュン)さん(62)。現在、在日本大韓民国民団(民団)が推進している永住外国人の地方参政権獲得運動には「消極的賛成」の立場だ。

 河さんは「私は投票権を行使したいとは思わない。あって悪くはないが、民団が血眼になっている意味が分からない」と語る。参政権よりも、日本人との真の共生に向けた国籍選択権の方が在日コリアンに必要だと考える。

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 現在の国籍法では、戦前から日本に在留する人とその子孫を対象とした特別永住者の在日コリアンが日本に帰化する際も、原則として一般外国人と同じ手続きが課される。

 最近帰化した在日コリアンによると、自分の履歴や給与などの証明書類、家系図や親族を含む前科の有無まで、厚さ数センチ分の提出書類を仕事を休んで集めた。それでも提出までに2カ月半、帰化が認められるまでに半年かかった。親族の中にあまりの煩雑さに断念した人もいるという。

 在日2世だった鄭大均首都大東京教授(61)は「在日は外国人意識が希薄だからこそ、手続きの煩雑さや(制度の)同化主義的な性格に心理的抵抗を覚えやすい」と語る。自らも日本国籍を平成16年に取得した際、普段から使用する「鄭」の字が申請当時は人名・常用漢字になかったため、新たな名前が一時必要になったという理不尽な体験をした。

 今は行政上の運用で特別永住者に対して提出書類を一部免除する簡易化が進んでいる。だが、河さんはまだ不十分と指摘する。

 「在日はかつて差別を受けた歴史的経緯がトラウマとなり、日本に恭順の意を示すような帰化にアレルギーがある。今の法務大臣による許可制を届け出制にすれば、在日の屈辱感は解消されるはず」

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 河さんはただちに在日全員に日本国籍の取得を求めているわけではない。「時限立法ではない形にして、取得するかどうかは各人の自由にする」という選択権を与えるものだ。

 参政権付与に反対する有識者の間でも「反対するだけでは本当の解決にならない」として帰化促進を提案する動きがある。民間シンクタンク「国家基本問題研究所」は2月、特別永住者の帰化では、本人確認書類に加え、善良な国民になることを誓う宣誓書や動機書などの提出だけにする「特例帰化制度」の導入を提言した。

 帰化手続きの緩和という目的では河さんの提案と一致する。だが、国基研は帰化を「日本という政治的運命共同体の正式メンバーになる」と位置づけ、許可制を維持した上で実施期間を区切る。最終的に特別永住制度の“廃止”まで視野に入れている点に明確な違いがある。


 国籍法で定める帰化条件 引き続き5年以上日本に住所がある▽素行が善良▽自己か配偶者、その他親族の資産や技能で生計を営める▽政府を暴力で破壊することを企図、主張し、またはそうした政党・団体を結成、加入したことがない―などが通常の帰化許可申請の要件。各種証明書類を法務局に提出して申請、審査・面接がある。法務大臣の許可が下りるまで通常半年~1年程度とされる。
 

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