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【在日 外国人参政権を考える】(4)帰化する若者

本国体験 韓国人と扱われず…

 コリアタウンで知られる大阪市生野区の御幸通商店街。この一角でキムチなどの韓国食材店を切り盛りする安田熙哲(ひろあき)さん(27)は昨年10月、日本国籍を取った。

 結婚や就職を機に日本国籍を取得する若い世代が増えている在日社会。3世だった安田さんが帰化したきっかけも、大学時代に知り合った日本人の妻との結婚だった。

 「僕の家族で反対する人はいなかった。参政権に興味はなかったけど、今は選挙が楽しみ。政治のニュースも見るようになった」

 笑顔で語る安田さんには、帰化への強い抵抗感はうかがえない。国籍の問題を考えさせられる“原体験”があったからだろう。

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 5年前、安田さんは旅行で訪れた韓国の街角で軍人からパスポートの提示を求められた。 当時22歳。軍人はパスポートに記された生年月日を目にして一瞬、けげんな表情になった。韓国では徴兵制があり、その年齢の男性が街にいるはずがない。軍人はすぐに在日コリアンと気付くと、ぞんざいな態度に急変した。

 「自分がどこの国の人間かわからなくなって…。子供にそんな思いはさせたくないと思った」と安田さん。「この先、もっと韓国の言葉も文化も知らない世代になったとき、国籍と実際の生活が一致しなければ住みにくくなるのではないか」

 同じように本国体験が在日の人生に与える影響を指摘するのは、日本に帰化した韓国出身の呉善花(オソンファ)拓殖大教授である。

 「韓国人と日本人の価値観や感性は実は正反対。だが日本生まれの在日、特に3、4世になるとほとんど日本人と同じだ」と前置きし、こう話した。「韓国人としての意識があるという淡い気持ちを抱いて韓国に行くと、韓国人とみなされずに差別される。自分が文化的、感性的に日本人であることにも気付く」

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 安田さんは在日への地方参政権付与に賛成する。80歳を過ぎても店で元気に働く祖母の存在が大きい。

 「祖母は役所に行くと態度が変わる。愛想笑いを浮かべてペコペコする。きつい差別を受けた世代で、役所が恐いという意識が抜けないのだろう。この国に根を下ろし、日本人と同じように一生懸命働いてきた。その苦労に応える意味でも参政権が与えられていい」

 ただ、周囲で参政権が話題になることはほとんどない。帰化については「してもしなくても同じ」「メリットがない」との意見も多い。過酷な歴史や強い民族感情を背景にした“帰化タブー”は薄まる一方で、今は国籍の違いによる生活上の支障がほとんどないことが帰化を阻む要因にもなっている。

 呉教授は「日本ほど外国人が暮らしやすい国はない」と強調した。「在日の人もすぐ帰化できるのに、深刻な問題がないから『わざわざ今さら』と面倒くさくなる。中身が日本人と同じで、今後も生活基盤や人間関係が日本にあるなら、韓国籍のままでいるのは不自然なこと。参政権より日本国籍をとる方が先決だ」

 生野コリアタウン 大阪市生野区桃谷の「御幸通商店街」とその周辺を指す日本最大のコリアタウン。大正12年、韓国・済州島―大阪間の定期航路の就航後、多くのコリアンが移住。在日コリアンが経営する韓国食材や民族衣装などの店舗が多い。平成5年から韓国文化を生かした街づくりを始め、日韓サッカーワールドカップや「韓流ブーム」を経て日本人観光客も増えている。

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