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【在日 外国人参政権を考える】(1)強制連行の「神話」根強く

潜在意識にある負い目

 「日本に自分の意思に反して連れてこられた方々が地方参政権をもつのは国家として大事なことだ」

 今年1月14日、東京都内の日本外国特派員協会。講演した原口一博総務相が、所管する永住外国人への地方参政権付与をめぐり、いわゆる「朝鮮人強制連行」に言及した。

 その内容に、元在日2世の鄭大均・首都大東京教授(61)=日韓関係論=は強い違和感を覚えた。鄭教授は文献や在日コリアン1世の証言から強制連行の虚構性を自著で明らかにしている。

 統計や近年の研究では、在日1世の多くは日韓併合(1910年)後に就労など自らの意思で渡日、戦後も残留することを選んだ人々とされる。日本統治時代に、日本国民として課された戦時徴用を強制連行と呼ぶとしても、朝鮮半島に適用されたのは昭和19年9月から半年間。徴用労働者の多くは戦後すぐに帰還し、34年当時の在日約61万人のうち徴用の残留者は245人―という外務省発表も存在する。

 「在日の中で強制連行を語る人は少ない。『神話』に過ぎず、1世から聞かされたことがないから。むしろ事情を知らない日本人が情熱的に語る」と鄭教授はいう。

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 かつて日本国籍をもっていた特別永住者の在日コリアンの問題といわれる外国人参政権。背景を探る上で、日本に翻弄(ほんろう)された被害者の在日―として戦後日本で形成された“物語”は重要な位置を占める。

 鄭教授によると、敗戦に沈む国内で傍若無人に振る舞った一部の在日集団によって、日本人の間では一時、在日に対し無法者という印象も共有されていた。

 「その印象はメディアが日韓関係で歴史認識問題を盛んに取り上げた1980年代を境に転換した。歴史の当事者でない人々が日本の加害者性や犯罪性の『生き証人』としての在日をきれいに図式化して語った」

 このイメージが日本人の潜在意識にあった在日への負い目と結びつき、大衆化した―というのだ。こうした在日論の延長線上で参政権も語られる。

 参政権を付与すべきと語る在日3世の朴一(パクイル)大阪市大大学院教授(53)=商学=は「在日のすべてがいわゆる強制連行犠牲者の末裔(まつえい)ではない。私の祖父も出稼ぎ労働者だった。ただ、日本の植民地統治が朝鮮に格差をもたらし、食えなくなった人が日本に渡った」と在日の被害者性を強調した上で、こう述べた。

 「戦後、在日は一方的に日本国籍を奪われ、日本人と同じ市民権が与えられなかった。戦後補償として参政権を戻すべきだ」

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 参政権は歴史の清算として考えるべきものなのか。

 6年前に日本国籍を取得した鄭教授は「80年以後の在日運動は日本いじめ。かつての植民地支配に対するうらみをはらすようなテーマになった。だが在日に必要なのは参政権ではなく、日本国籍だ」と強調する。

 その理由に挙げたのが、日本社会にとけ込んだ在日がいまだに外国籍を維持する奇妙な状況。既に大半が日本生まれとなった在日は韓国・朝鮮籍を持ちながら母国への帰属意識に欠け、日本では外国人登録証を持ちながら外国人意識が希薄という。鄭教授は語る。

 「多くの在日は参政権を自ら求めておらず、仮に与えれば弊害の方が大きい。彼らの不透明性を永続化してしまう。参政権問題は日本国籍の取得で解決する」

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 民主党政権が検討している永住外国人への地方参政権付与をめぐっては賛否両論が渦巻く。特別永住者の在日コリアンが最も多く住む大阪を中心に問題点や背景を探る。

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