現場から記者リポート

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東近江・公立病院再編 「市立」縮小が焦点 /滋賀

 ◇「国立」内に中核病院--住民への影響大きく

 東近江市の公立病院の再編を巡り、経営が悪化している市立能登川、蒲生両病院のあり方と今後の地域医療体制を考える同市の委員会は、懸案だった国立病院を増床して中核病院とする案を承認した。同案は市立病院の病床削減が前提のため、今後は両病院をどこまで縮小するかが焦点となる。「中核病院の必要性は分かるが、市立病院にも長年地域に果たした役割がある」と縮小に難色を示す委員もいる。県の地域医療再生計画とも密接に絡み合う病院問題の行方を追った。【斎藤和夫】

 東近江市には国立病院機構滋賀病院と二つの市立病院がある。いずれも医師不足と経営悪化という共通課題を抱えており、放置すると東近江地域の医療が危機的状況に陥るとして、市は「東近江市病院あり方検討会」や「市立病院等整備委員会」「東近江市地域医療体制検討会」を設け、提言や中間報告を受けてきた。昨年9月には同委員会が“最終結論”にあたる提言を出した。

 内容は、滋賀病院(同市五智町、220床)の病床を増やして急性期医療などに対応できる中核病院「東近江総合医療センター」を設置。能登川、蒲生の市立2病院は「病床数の削減を検討」とし、従来の内容から一歩踏み込んだものだった。病院事業管理者でもある西沢久夫市長は「東近江の医療圏を守るため、中核病院の整備に政治生命をかける」と話す。

 市立病院の縮小には住民への配慮から二の足を踏む委員もいたが、中核病院の整備案には、追い風もあった。当初は合併特例債の活用も考えていたが、計画途中で国の地域医療再生計画が浮上、資金援助が受けられるようになった。さらに、検討会メンバーの柏木厚典・滋賀医科大付属病院長が医師の派遣などで全面協力を引き受け、医師確保のめどがついた。

 市は「国の再生計画の資金で中核病院内に滋賀医科大の寄付講座を設ければ、担当教授から学生まで多くの医師が集まり、医師不足を解消できる」とみる。柏木病院長も「外科系と内科系の講座を設ければ、医師は14人確保できる。全国のモデルケースにしたい」と意欲的だ。資金と人材のめどが立ち、計画は大きく前進した。

 ただ、市立病院の縮小は課題として残されたままだ。両病院の病床数はともに120。同委員会では、これを半減の60床から0床まで三つの選択肢を挙げ、検討を進めている。いずれも中核病院の後方支援施設と位置付け、現在10、12科ある診療科をそれぞれ5、6科程度に整理する方向だ。

 能登川病院は15年前に全施設を改修したが、蒲生病院は74年の改築から36年が経過。耐震性にも問題があり、改築には5億~13億円かかるとみられている。ただ、蒲生地区には他に病院がなく、どこまで縮小に踏み切れるか。両病院とも計画通りに縮小されれば地域住民への影響は大きく、議論を呼びそうだ。

 市は13日の委員会で市立病院の経営形態や施設整備の概要をまとめ、一定の結論を出す方針だ。その後住民説明会などを開き、6月には市へ答申する予定。5年にわたる同市の病院問題も大詰めを迎えた。

毎日新聞 2010年4月13日 地方版

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