3月27日に開かれた第128回患者塾では「身近な『女性の病気』」がテーマとなった。生理や避妊など日常生活における女性の悩みについて、専門の医師から詳しい説明があった。
◆まだ生理がない
長崎県佐世保市の16歳女性 まだ生理がないのですが、親ものんびりしていて気に掛けてくれません。婦人科を受診したほうがいいですか。
下川さん 16歳で生理がなければ、一度診てもらった方がいいと思います。やせた人や太った人、激しいスポーツをしている人には生理が始まるのが遅い人もいます。ただ16歳の女の子に「婦人科に」と言っても行きにくいでしょうから、保健の先生に相談するのも一つの方法です。
婦人科では、卵巣の機能が働き始めているか、女性ホルモンが出始めているか、最初にホルモンの検査をします。採血と超音波で子宮があるかどうかを調べ、あとは日常生活を聞きます。子宮が見えれば生理を起こすのは容易です。内診することはありませんので、心配せずに受診してください。
◆確実な避妊法は
福岡県古賀市の24歳女性 経済的にもまだ子供を作れる状態ではありません。夫は「ピルが確実だろう」と言いますが、薬はあまり使いたくありません。確実な避妊法を教えてください。
下川さん まず確実なのはピルです。有害な側面ばかりが言われていますが、通常使われる薬の中では一番安全だと思います。利点としては生理がきちんと来て、生理痛もないこと。卵巣がんや子宮体がんの比率も下がります。1年間の妊娠率は1000人に1人と言われています。下痢や吐いたりして薬が十分に吸収されないような時に妊娠するぐらいです。
どうしてもピルが嫌な時は避妊リングしかありません。ただ出産の経験がない人は子宮の入り口が狭いためにリングを挿入する時に痛い思いをするかもしれません。入れておけば4年ぐらいは持ちます。1年間で1000人に3人ぐらいの妊娠率です。
コンドームもありますが、100組が1年間コンドームだけで避妊した場合、15組ぐらい妊娠します。1000人だと150人です。オギノ式という基礎体温を見ながら妊娠しやすい時期を避けて性交渉をする方法もあります。きちんと守れば妊娠しませんが、生理が終わって排卵が起こるまでの間は妊娠する可能性があります。膣外射精は避妊法としては役に立ちません。
小野村さん 時々相談があるのですが、犯罪的な行為で乱暴されて妊娠したかもしれない時、緊急避難的に薬を使うことは可能ですか。
下川さん それは可能です。72時間以内に薬を飲んでもらえば、100%ではありませんが、かなりの率で妊娠を防ぐことができます。乱暴されたり、途中でコンドームが破れて避妊がうまくいかなかったという時には薬を出していますので、あわてずに病院に来てください。ただし、あくまでも緊急避難的に使う薬です。日常の避妊はきちんとしてください。
「女性の病気」を巡り避妊法の話を聞いた後、ある記事を思い出した。長崎県少年保護育成条例にある「18歳未満への避妊用具販売制限」の条文を撤廃するか否かの議論だ。撤廃は性モラルの低下を招くという「寝た子を起こすな」派と、撤廃して性体験の低年齢化に対応すべきという「現実直視」派の主張は今も平行線。まあ、大人の思惑を横目に子供は自ら学ぶ。息子も高校生のころ、〓それ〓を机に忍ばせていた。使ったか聞く〓勇気〓はなかったが、話し合うべきだったか。ただ自分が正しい知識を持っていたかと問われると……やはり無理かな。【御手洗恭二】
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下川浩さん=エンゼル病院(北九州市、産科・婦人科)▽伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院(外科)▽仲野祐輔さん=八屋第一診療所(福岡県豊前市、外科)▽津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院(福岡県水巻町)
▼司会・小野村健太郎さん=おのむら医院(福岡県芦屋町)
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〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2010年4月13日 地方版