社長が死亡した登別市内の自動車買い取り・販売業者が、室蘭、登別・伊達市内の顧客との間で、買い取り代金の未納や二重ローンなどのトラブルが発生している。被害者から弁護士や市などへの相談が相次ぎ、23日までに計13件におよぶ。室蘭署にも訴えているが、被害はさらに拡大しそうだ。多数の消費者を巻き込んだ悪質なケースであり、今後は関係機関の連携の中、顧客同士で「被害者の会」を発足させる動きもある。
(佐藤重理)
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◆―― 社長死亡、被害広がる
□情報交換
問題となっているのは登別市幌別町で自動車買い取り販売業者で、全国大手の車買い取り業者のフランチャイズになっている。同社の社長(49)が10日に亡くなっており、現在は事業存続が不能で、近く廃業の見通しという。
室蘭市消費生活センターにはこれまで「ローンを組んだが、納車されない」「下取り車のローンが処理されず、買った車のローンと二重払い状態だ」といった相談が9件。登別市消費生活センター、伊達市でもそれぞれ2件受け付けている。周辺市町の消費生活センターでは連携し、消費者保護に取り組むことで情報交換を開始している。
同店で車両を購入した登別市内の男性Aさん(58)は昨年6月、残債のある車を170万円で下取りして、その代金でローンを完済する条件で同社から車を購入した。ところが下取り車の代金は支払われず、前の車のローンを残したまま、さらに新しく買った車のローンも発生し、結局2台分のローン約600万円を抱えることになった。
Aさんは室蘭署や室蘭市、弁護士などに相談している。
□連携必要
Aさんによると、こうした被害に遭った客は、連絡を取り合っているだけでも計12人いるという。「できれば被害者だけで集まって訴訟を起こすなどの行動を取るため、『被害者の会』を設立したい」と話している。中には「全国大手買い取りチェーンの名前で安心して取り引きした」との話もあるが、買い取りチェーンの本部はは「フランチャイズ店の経営にはタッチしていない。個別の売買は販売店と顧客との間で行われており、当社は違法な取り引きに関与しておりません」と説明している。
Aさんらの相談を受けた、伊達ひまわり基金法律事務所・林正樹弁護士は「被害の状況把握の段階。内容や被害者の規模によっては、札幌弁護士会の消費者保護委員会と連携する必要が出てくるのではないか」と話している。
◆―― 問い合わせが殺到
林弁護士によると、これまでに判明している被害のパターンは大きく四つ。(1)二重ローン(2)ローンの支払いが始まったが納車されない(3)タイヤを預かってもらったが戻らない(4)頭金を支払ってしまった―に分けられる。
□相談訴え
亡くなった社長の息子3人の代理人となっている芝垣美男弁護士は「同社に関する問い合わせが私の事務所に殺到している。しかし、あくまでも社長家族の代理人になっているだけで、会社整理に関する業務は担当していないので答えられない」と被害者からの問い合わせが殺到し困惑している。
現在は各市町で消費者相談を受けているが、日増しに被害者は増えているようだ。室蘭市は「思い当たる人は、住んでいる市や町の消費相談窓口へ相談したほうがよい」とアドバイスしている。週末や祝日は国の消費者ホットライン(電話0570・064・370番)へ相談するとよい。
林弁護士も「被害の実態把握するためにも悩んでいたら連絡してほしい」と話している。
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