先日取材された某週刊誌が発売されました。
相武紗季の胸元が気になりつつも、今日の本題は特集の「ツイッターを疑え!」のほうです。なんともまあ攻撃的なタイトルです。
まともな神経の人ならこの時点で偏向報道だと思うわけですけど、メディアってのはいつもこう。まあ旧来のマスメディアを批判しているCGMでも同じような都合のいいバイアスがかかりまくってるのは残念だけど。
ぼくのところはこんな感じです。カメラマンの方が同行されてて、写真も載せてもらいました(このへんは業界誌だと記者・編集者が自分でデジカメで撮るので、大手は違うなあと思ったり)。
当日の感想としては2時間も話したくらい盛り上がって、なかなか楽しかったんですが、じっさいに届いた原稿はぜんぜん歪曲されていて(「拡大解釈してしまった」という詫びともつかない説明があったけど、明らかに悪意がある解釈だった)、それを修正して戻した原稿も校了ギリギリに話してもない内容をねじこんできたり、まったくもってひどい話でした。
ぼくは一貫して「Twitterに罪はない。包丁でうまい料理を作る人もいれば、誰かを刺しちゃう人もいるわけで、だからといって包丁が悪ではないでしょう。交通事故を取り上げてクルマを使うなとは言わないでしょう」と話してたんだけど、最初の原稿にはいっさい反映されてなくて、むしろ超批判的なリスク部分だけを強調した内容になっていた。
掲載誌を見て納得したんだけど『週刊ポスト』としては、否定的な人を集めて、否定的なことをしゃべらせたいだけなんだろうね。そしてぼくも否定的な人だと思われてたんだろうな。ぼくは否定的なんじゃなくて、現実的なだけなのに。
ただまあ一回だけでも確認させてもらえたので良心的だと思います。70%くらいは書き直せたし。そのあとまた変えられちゃったけど。
ということで、掲載前の原稿の変化を見てもらいます。
左が取材後に先方から届いた最初の原稿。その際に「直していい」と言われたので、文字数を気にしながらぼくが直したのが右側です。
(じっさいはさらに先方で修正が加えられて掲載されてるんだけど)
受け取った初稿 | ぼくが直した原稿 |
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ご存知のように、ツイッターはユーザーの〝善意〟を前提に運営されています。それゆえ、ビジネスに活用する、つまり、つぶやきをお金に換えていくことは非常に難しいといわざるを得ません。 企業として、ツイッターを利用して、反応が乏しい、成果がないだけならまだましな方です。 現にいくつかの企業は痛い目に遭っています。 今年2月、飲料メーカーのUCC上島珈琲が、ツイッターに11ものアカウントを開設し、コーヒー関連のつぶやきを検索したユーザーに、同社の広告的なツイートを送るキャンペーンを展開した。これは検索ロボットを使って、同社のフォロワーではないユーザーにも自動的にツイートが届くようにしたものでした。コーヒーの情報を求めているのだから喜んでくれるだろう、いかにも優秀なマーケティングの担当者が考えそうなことです。 しかし、結果は逆でした。UCCのつぶやきはスパム(営利目的の無差別大量配信)扱いされ、ツイッター上には痛烈な批判が溢れ、UCCは同キャンペーンからの即時撤退を余儀なくされた。 3月には、アパレルメーカーのベネトンが新宿店のオープンに際し、商品購入後に「ベネトン新宿なう」とつぶやくと、その時点でのフォロワー数×1円を現金で還元するキャンペーンを実施しました。画期的な試みでしたが、これについても、「行儀が悪い」と少なからぬ反発を買った。 ネットのユーザーは、ヘビーであればあるほどリベラル指向が強く、カネ儲けを敵視する傾向すらあります。最近では、クレーマーまがいの人物がツイッターでの書き込みを理由に会社へ抗議電話をかけるという〝リアル攻撃〟に発展するケースも増えてきているといいます。 ツイッターでの作法を間違えてしまうと、会社のイメージを傷つけかねないというリスクがあるのです。案外知られていない事実です。 では、企業が使う場合のツイッター作法とはどんなものなのか。これがまた明確に定義されているわけではないから、難しい。 今までの傾向から簡単にまとめると、以下のような感じになります。 ・複数のアカウントは使わない ・広告・宣伝と受け取られるつぶやきは避ける ・頻度は多いほうがよい ・管理されている印象は与えない カンのいい方ならお気付きでしょうが、企業は利益をあげるという〝本当の思惑〟を覆い隠しながらつぶやき続けないといけないわけです。ツイッターを販売促進ツールと捉えると失敗します。 次に問題になるのは、誰がつぶやくか、です。ツイッターの作法を肌感覚で理解しているのは若い人でしょうが、じゃあ彼らが会社を代表して、反発を巧妙に避けながら、思惑を果たすべくユーザーを誘導できるか。技術も根気も要する作業です。 つまり、ツイッターを活用しようとするなら、まず人づくりが必要になるのです。あらゆる類のつぶやきにも素早く対応できる幅広い見識と判断力を持った社員でないと務まりません。大企業なら複数必要でしょう。自宅でやるなら残業手当か特別手当をつけないと。そうした覚悟も準備もなく、ただつぶやかせてみても、リスクのほうがむしろ大きくなる。 企業にとって、ツイッターの最大の魅力は、ユーザーの生の声を聞けることです。よりよい商品、サービスをつくっていくために、お客様の声に耳を傾ける。僕はブックオフ・オンラインの取締役を務めていますが、わが社でもそう割り切って使っています。 自社名でツイッターに検索をかけ、「サイトの使い方がわからない」なんてつぶやきがあると、こまめに返事をする。今まで、約500人のツイートに返信してきましたが、「宣伝するな」という拒否反応はわずか2~3例でした。 ツイッターの文化の基本は、「返信不要」ですが、ふとした自分のつぶやきに、当該の企業から返信があったりすると、ユーザーにとっては嬉しいサプライズです。また、質問が寄せられた場合にできるだけ素早く誠心誠意答えれば、企業のイメージをぐっとよくできる。『加ト吉』の担当者なんて、年末の紅白歌合戦を観ている時でもつぶやいていたらしいですね。 双方向のコミュニケーションを繰り返していくことでサービスの改善点が見えてくる、そういう感覚でツイッターを考えれば、有効活用できるのではないでしょうか。 ツイッターの導入が、ブックオフ・オンラインの売り上げにどう貢献しているのかは正直わかりません。ただ、ファンが増えているという手応えはあります。つぶやき文化はまだまだ試行錯誤の段階。トライしてみるなら、何よりそれを踏まえておくべきです。 こうのたけし/1974年生まれ。立命館大学経済学部卒後、ニフティ入社。01年に退職後、オンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOなどを経て、現在はブックオフオンライン株式会社取締役を務める。主な著書に『そんなんじゃクチコミしないよ』(技術評論社) |
企業として、ツイッターを利用して、反応が乏しい、成果がないのは珍しいことではありません。 盛り上がってるという一部の情報に惑わされて、流行りモノのサービスに手を出してもうまくいかないのは歴史が証明しています。多くの企業ブログはすでに更新されていませんし、参入したものの閑古鳥が鳴いて撤退したセカンドライフと同じです。 それはそもそも企業側に消費者と繋がりたいという意志がないからでしょう。その気もないのにインターネットに参加してうまくいくはずがありません。 インターネットは時間や距離といった従来の制約を取り払ってコミュニケーションを実現する画期的な技術です。コミュニケーションというのは「相手と繋がりたい」という欲求があってはじめて生まれ成立するものですから、言いたいことだけ聞いてほしいとか、相手の言うことは聞く気がないというスタンスでうまくいくはずがありません。 ツイッターのようなオンラインコミュニティではそういう自分勝手なふるまいは強く拒絶されます。その結果、企業は評判を落としますし、ファンよりもアンチが増えることになります。 現にいくつかの企業は痛い目に遭っています。 今年2月、飲料メーカーのUCC上島珈琲が、コーヒーに関連するツイートをしたユーザーに、同社のキャンペーンを一方的に告知するツイートを送りつけました。しかもこれはツイッターの規約違反になることも承知した上で、利用停止になってもいいようにあらかじめ11ものアカウントを用意していたという悪質な手法です。じっさいにUCCのツイートはスパム(営利目的の無差別大量配信)扱いされ、ツイッター上には同社を批判する声があがりました。 3月には、アパレルメーカーのベネトンが新宿店のオープンに際し、商品購入後に「ベネトン新宿なう」とつぶやくと、その時点でのフォロワー数×1円を現金で還元するキャンペーンを実施しました。これについてもフォロアーへのスパム送信を助長することや、一部のユーザーに便宜を図るという不公平感から「行儀が悪い」と少なからぬ反発があります。 すでにお気づきかと思いますが、そもそもツイッター自体の是非論は無意味です。包丁はおいしい料理を作る道具にもなれば、人を殺める道具にもなる得るわけで、ツイッターも道具に過ぎません。使う人のマナーやモラル次第では、会社のイメージを傷つけかねないというリスクがあるのです。 では、企業が使う場合のツイッター作法とはどんなものなのか。これがまた明確に定義されているわけではないから、難しいです。 今までの傾向から簡単にまとめると、以下のような感じになります。 ・アカウントの用途を明示する ・公平な態度を心掛け、特定のユーザーを優遇しない ・ユーザーへの返事は慎重にする 広告・宣伝と受け取られるツイートそのものがダメなのではなく、「お買い得情報を案内するアカウントです」と明示されていれば問題にならないのです。ツイッターでは興味のある人だけがフォローするので。 同時に、検索して見つけたユーザーのツイートに一方的に返事する場合は慎重になる必要があります。僕は論語にある「己の欲せざるところ人に施す事なかれ」はマーケティングの基本だと思っています。 次に問題になるのは、誰がつぶやくか、です。ツイッターの作法を肌感覚で理解しているのは若い人でしょうが、彼らにある程度の自由を与えて活動させるリスクが取れるのか、企業の覚悟が問われていると言えます。 つまり、ツイッターを活用しようとするなら、まず組織づくりと人づくりが必要になるのです。あらゆる類のツイートにも素早く対応できる幅広い見識と判断力を持った社員でないと務まりません。担当者が離職する可能性も考えると複数人必要でしょう。自宅でやるなら残業手当か特別手当をつけないと。そうした覚悟も準備もなく、ただつぶやかせてみても、リスクのほうがむしろ大きくなる。 企業にとって、ツイッターの最大の魅力は、ユーザーの生の声を聞けることです。よりよい商品、サービスをつくっていくために、お客様の声に徹底的に耳を傾ける。僕はブックオフオンラインの取締役を務めていますが、わが社でもそう割り切って使っています。 自社名でツイッターに検索をかけ、「サイトの使い方がわからない」なんてつぶやきがあると、こまめに返事をする。今まで、約500人のツイートに返信してきましたが、「宣伝するな」という拒否反応はわずか2~3例でした。 ツイッターの文化の基本は、「返信不要」ですが、ふとした自分のツイートに、企業から返信があったりすると、ユーザーにとっては嬉しいサプライズです。また、質問が寄せられた場合にできるだけ素早く誠心誠意答えれば、企業のイメージアップにも繋がります。 双方向のコミュニケーションを繰り返していくことでサービスの改善点が見えてくる、そういう感覚でツイッターを考えれば、有効活用できるのではないでしょうか。 ツイッターの導入が、ブックオフオンラインの売り上げにどう貢献しているのかは正直わかりません。ただ、ファンが増えているという手応えはあります。つぶやき文化はまだまだ試行錯誤の段階。トライしてみるなら、何よりそれを踏まえておくべきです。 こうのたけし/1974年生まれ。立命館大学経済学部卒後、ニフティ入社。01年に退職後、オンライン書店ビーケーワンの専務取締役兼COOなどを経て、現在はブックオフオンライン株式会社取締役を務める。主な著書に『そんなんじゃクチコミしないよ』(技術評論社) |
こちらには取材時のテープがあるのでそれを公開することもできるんだけど途中で電池が切れちゃったので、2時間のうち1時間半くらいしか録音できてないんだよね。
掲載誌を読まれた方ならわかると思いますが、
最近ではクレーマーまがいの人物がツイッターの書き込みを理由に、会社へ抗議電話をかけるという"リアル攻撃"に発展するケースも増えているといいます。
なんてことはひと言も話してないのに勝手に挿入――卑猥な表現だけど、こんなのはメディアによるレイプだね――された部分です。いま読み返したら最初の原稿にはあるから戻されたって感じですね。ていうかそんな可能性はTwitterだけじゃないし、ブログやテレビCMだって起こるリスクは同じでしょ。
しかもそれを見出しとして使われてて、ぼくも否定派として「演出」したかったんでしょうね。
ほかの3人(中川淳一郎氏、宮脇睦氏、岸博幸氏)の原稿がどんなふうに歪曲されてるのかはわかんないけど、3人はわりと普段から同じような批判をしているのでそんなに修正されてないのかな。ここは聞いてみたいところです。
それにしても宮脇氏の「デルのTwitterでの売上が全体の0.002%しかない」という指摘はとんちんかんだよなあ。300万ドルは300万ドルであって、そこにいくら人件費がかかったとかROIベースで比較するのはまだわかるけど、なんで総売上と割り算するのか意味不明。もし寝てても年間3億儲かるなら最高じゃんね。
こういう批判のための揚げ足取りみたいなことをする人がいて、それを助長するメディアがいる。その一方でなんも考えずに(というか自分の利益のために)煽りまくる人がいて、それを助長するメディアもいる。
こんなふうにメディアが報道するスタンスはニュートラルではないし、それはそもそもムリなので、きちんと読み手側がそこにどんな「意図」があったのかを正確に見抜かないといけないし、それがいわゆるメディアリテラシーです。
だからぼくらももっと鍛錬しないといけない。バカになる前に。思考停止になってるとどんどん洗脳されちゃうので。
と同時にいい加減に「演出」や「編集」という名の改ざんをしても、ここで示したように、どんなふうに「編集」されたかが暴露される世の中になっていることをメディアの人は知っておいたほうがいい。
一方的な報道でだませる人の数はどんどん減っています。本人にその気さえあれば情報を集め、事実を多面的に捉えることができるのがネット社会です。
マスコミのみなさん、これがソーシャルメディアです。
[追記]
岸さんのTwitter、Google、Amazonによってすべての情報が握られるという指摘は「いつのビッグブラザーだよ」って話だし。まあGooglezonなんてのもあったよね。
[さらに追記]
じつはいちばん驚いたのは肩書きが「WEBデザイナー」になってたこと。初めて呼ばれたよ。
コメント(4件)[コメントだけのRSS]
掲載紙そのものは見てないですが、新聞広告で「WEBデザイナー」になってるんだあw と思っていたわたしです。
まあ、メディアって(特に週刊誌なんて)そんなもんですよね。という、基礎的な認識をまず持たなくてはいけませんよね。本来的には哀しいことなんですけれど。
メディアは自らの首を絞めているということを、もっと自覚しなければ将来はないと知るべきなのになあ。
お疲れ様でした。
投稿者: ムムリク | 2010年4月13日 10:56
こんにちは。TMH池田さんやロフトワーク林さんなどから、河野さんのことは伺っています(「そんなんじゃクチコミしないよ」も拝読し、共感しました!)。
スカッとする記事…というか、取材を受けたものしかわからない気持ちを吐露して頂き、ほんとうにありがたいです。
僕もいろいろと取材を受けたことあるんですけど、「ゴシップで読者を集めてきた冊子」ほど、歪曲振りがすごいし、「締め切りに間に合わない」を言い訳にされた経験があります。
結局「ゴシップ、偏向報道(結論ありき、の報道)が好きな人」に対し商売した方が、短期的な利益を稼げていい、という商売手法をとっているマスメディア、多いと感じています。
ソーシャルメディアがどんどん発展&国民が情報リテラシーを身につければ、駆逐されるんですけどね。
だから僕は、マスメディアが悪いんじゃない、それを選ぶ国民が悪いんだ、と言い聞かせ、情報リテラシーを持つよう自分の持っているメディアで訴えるとともに、自分の記事が歪曲されてもぐぐっとこらえることにしています(サラリーマンですから…苦笑)
道具に罪はないんですよね。その道具をどう使うか、ひとえに利用者の知恵・知識であって。。。
投稿者: Z会寺西 | 2010年4月13日 11:15
「一方的な報道でだませる人の数はどんどん減っています。本人にその気さえあれば情報を集め、事実を多面的に捉えることができるのがネット社会です。
マスコミのみなさん、これがソーシャルメディアです。」
共感します。
投稿者: RyutaK | 2010年4月13日 11:41
追記の「ビッグブラザー」にクスッときました。
現実に賄える額の費用でビッグブラザーが実現できているなら、世界中に全体主義国家が誕生しているはずなんですよね。
ネットのことを多少を知って、コミュニケーションのリスクヘッジは出来てもリスクの消滅はできないという前提を理解できれば、ソーシャルメディアは企業も積極的に参加できる場だと思います。
でも、責任の所在が不明確で、権限を各部署に委ねられない企業組織の場合には、失敗のリスクが大きく「見え」過ぎるということなんでしょうね。
投稿者: OJ | 2010年4月13日 11:47