「中国発 経済観察報」

中国発 経済観察報

2010年4月9日(金)

北京天津間の高速鉄道が7億元超の赤字に

甘すぎた需要予測、建設費用も予算オーバー

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大躍進経済算帳京津高鉄運行一年虧7億

経済観察報記者 温淑萍

2008年8月1日に開通した中国初の高速旅客列車専用線*「京津城際鉄路(北京天津都市間鉄道)」。その運営収支が7億元(約98億円)を超える赤字に陥っていることが明らかになった。

*中国では既に各地で高速列車が運行されているが、それらは在来線を改良して高速化したもの。京津城際鉄路は高速旅客列車のみが運行される初の専用線として新たに建設された。将来は北京上海間の高速鉄道の一部になる。

 運営会社では当初、開業年度の収支をほぼトントン、うまくいけば黒字もあり得ると算盤をはじいていた。しかし実際には、建設費が予算をオーバーしたうえ、開業後の収入が予測を下回り、赤字が避けられなくなった。

 京津城際鉄路は、高速鉄道網の建設および運営のパイロット事業である。ここを起点にして、高速鉄道の建設ブームが中国全土に広がった。

 中国の高速鉄道の営業距離は6552キロメートルに達し、既に世界一だ。鉄道省の予測によれば、全国の鉄道の営業距離は2012年までに11万キロメートルを超え、そのうち1万3000キロメートルは新設の高速鉄道網である。

輸送実績は予測の7割に届かず

 鉄道部門のある関係者によれば、京津城際鉄路は開業から2009年9月末までの14カ月間にのべ1870万人を運び、営業収入は11億元(約154億円)を上回った。ところが、同期間の運営費用は18億元(約252億円)を突破してしまった。

 京津城際鉄路は、中国で初めて営業運転速度が時速300キロメートルを超える高速列車として華々しくデビューした。北京南駅から天津駅までの133.54キロメートルを29分間で結んでいる。列車は8両編成で定員600人、最小発車間隔は3分間、1時間当たり最大1万8000人を輸送する能力がある。

 運賃は一等車が69元(約966円)、二等車が58元(約812円)。現在の運行ダイヤを基に計算すると、京津城際鉄路の営業収入は1日当たり最大366万5000元(約5131万円)、年間では最大13億3800万元(約187億円)となる。

 しかし、実際の旅客数は予測を大きく下回った。当初の計画では、旅客数は年間のべ3000万人、営業収入は18億4000万元(約257億円)を見込んでいた。開業から14カ月間の実績は、その7割に満たなかった。これが赤字に陥った最大の要因だ。

 「運賃設定が低すぎること、電力費が高いこと、政府の補助金がないこと。これらの要因も損失を拡大させた」と、ある専門家は指摘する。

 実は、京津城際鉄路の運営費用で最も大きいのは金利である。関係者によれば、総投資額204億2000万元(約2859億円)のうち100億元(約1400億円)を銀行融資で調達したため、毎年の支払利息は6億元(約84億円)を上回る。次に大きいのが減価償却費の約5億元(約70億円)。続いて設備のメンテナンス費用や電力費が合計4億元(約56億円)ほどだという。

 このプロジェクトのスタートは2003年にさかのぼる。当時の天津市長の戴相龍が鉄道相の劉志軍に電話をかけ、北京と天津を結ぶ高架鉄道の建設を提案した。その後、両者は北京の中南海で会談し、建設費の負担割合や用地確保などの問題について協議。わずか40分で合意に達したとされる。

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中国の「経済観察報」は2001年創刊の週刊経済情報紙。発行部数は約68万部。政府系の機関紙ではなく、民間資本によって創刊・運営されている新興経済メディアの草分けの1つ。経済政策から金融、産業まで幅広くカバーするとともに、「理性、建設性」という編集方針を掲げ、センセーショナリズムを排した客観的な報道や冷静な分析に定評がある。北京を中心に、若手インテリ層の支持を集めている。

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