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金本、ビデオ判定でミスター超え445号

 ビデオ判定で通算445号の本塁打となり、金本は満面の笑顔でダイヤモンドを回る(撮影・飯室逸平)
 ビデオ判定で通算445号の本塁打となり、金本は満面の笑顔でダイヤモンドを回る(撮影・飯室逸平)

 「阪神7‐3ヤクルト」(11日、甲子園)

 ついに伝説の男を超えた‐。阪神・金本知憲外野手(42)が、初回2死二塁から左翼ポール直撃の3号2ラン。いったんはインプレーと判定されたが、ビデオ判定の結果、本塁打となった。通算445号は長嶋茂雄氏(巨人)を上回る歴代単独13位だ。七回にはダメ押しの2点打を放って2安打4打点。チームは連勝で勝率5割に復帰した。

  ◇  ◇

 過去444本。ベース1周にこれほど手間取った経験はない。野球の神様のいたずらか。球史を彩るメモリアル弾が危うく幻と消えかけた。

 初回、左翼ポールを直撃した主砲の3号2ランで先制、と思われた。ところが、確信を持ってベースを回る金本に“待った”がかかる。三塁塁審が一度は手を回したが、判定はインプレーで二塁打に。到達点を知る左翼の虎党が怒号交じりに「ホームラン」をコールした。村中の145キロをたたいてから3分44秒。ビデオ判定でジャッジが覆り、金本は晴れて「ミスター超え」を許された。

 プロ通算445号。金本が長嶋茂雄氏の444本を抜き、歴代単独13位に達した。「超えたのはホームランだけ。それ以外はとても追いつくような人じゃない。ホームランだけでも超えたのはうれしい」。さすがの鉄人も恐縮するのは当然か。

 「444本は打ちたい。長嶋さんを超えてみたい」。400号目前の08年春、個人記録に言及しない男が、ミスター超えだけは「意識する」と目標に立てた。長嶋氏は広島時代に2度、打撃指導を受けた恩師。感謝の念を抱き続けると同時に、金本にはミスターとの思い出の中で、今も悔やまれる出来事がある。

 広島時代の98年11月1日。金本は宮崎市営球場で開催されたセ・リーグ東西対抗に出場した。試合後、出場選手は宮崎で秋季キャンプを張る巨人の宿舎で大浴場を借りる手はずになっていた。

 「金ちゃんが来るんだったら待ってるから。一緒に風呂に入ろう」。当時の巨人・長嶋監督は関係者に伝言を託した。ところが伝達が機能せず、広島のマネジャーは長嶋監督を気遣って金本に館内の別浴場を指定。「長嶋さんは風呂でずっと自分を待っててくれていたらしい。申し訳なくて…」。ミスターと裸の付き合いを逸した無念と、懇意にされた深謝。445本目のアーチには、長嶋氏へ報恩も込められた。

 先月中旬に発症した右肩腱板損傷を抱えながら試合出場を続ける。新聞に躍る「重傷」の見出しを「何が重傷や。軽傷、軽傷。炎症が治まれば十分プレーできるよ」と鼻で笑った。だが、石原チーフトレーナー補佐から「試合出場を続けながら完治させるのは奇跡」と通告されたのも事実だ。「(右肩は)関係ない」と不振の言い訳にしない。前日、前々日と試合前後に30分以上、素振りの時間を設け、浮上につなげた。この日もお立ち台の後、ベンチ裏で1人鏡の前に立った。

 七回2死。ダメ押しの2点適時打を放った金本は、続く新井が遊飛に倒れても、全力で三塁まで駆けていた。華やかさだけじゃない。「長嶋茂雄」の泥臭さに敬意を抱いている。445本を勲章に、金本はこれからもミスター道を継承する。

(2010年4月11日)












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