竹島(韓国名・独島)領有権問題をめぐり岡田克也外相は、政府見解になっている「韓国による不法占拠」との表現を封印し、「日本側の慎重対応で相手の柔軟姿勢を引き出す」戦略を鮮明にしている。だが実効支配を続ける韓国側に変化はみられず、野党を中心に効果を疑問視する声が強まっている。
「交渉当事者として一定の余裕を持ち、不必要な摩擦を招かないようにしたい。そうした言葉は使わないと心に決めている」。岡田氏は7日の衆院外務委員会で、政府見解は認めながらも、「不法占拠」を封印する理由をこう説明した。政府見解と整合性がとれないと迫る小野寺五典委員(自民)に「委員も外務副大臣の経験者。私の発言の意味を理解できるはずだ」と反論した。
鳩山政権は北朝鮮の拉致、核、ミサイル問題を解決するためには、日米韓3カ国の連携が不可欠と判断。メリットが大きい韓国との経済連携協定(EPA)締結交渉を停滞状況から脱却させたい思惑もあり、政府内は「解決の糸口もつかめない竹島問題で韓国を刺激しても国益に合致しない」との見方が支配的だ。
ところが韓国は9日、外交通商省が領有権強化の必要性を明記した報告書を韓国国会に提出。竹島に関する姿勢に変化の兆しはなく、岡田氏への配慮はうかがえないのが現状だ。
日本国内では自民党が「外相が政府見解を口にできないのは閣内不一致の表れ」(中堅)と追及する構え。韓国側の強硬姿勢に歯止めをかけられなければ「相手の顔色ばかり気にする弱腰対応」との批判が一気に噴出する可能性もある。
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