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新党:「たちあがれ日本」政策面で自民との違い見いだせず

 平沼赳夫元経済産業相らが10日結成した新党「たちあがれ日本」は政界再編を目指す「第三極」の旗印として「反民主・非自民」を掲げた。「日本復活に向けて」と銘打った基本政策の内容から自民党との違いを見いだすのは難しく、今夏の参院選で自民党候補を側面支援する連携方針も打ち出した。政府・与党からは「自民党の補完政党」(福島瑞穂消費者・少子化担当相)と皮肉られ、新党の高揚感もかき消されがちな厳しい旗揚げとなった。【野原大輔、大場伸也、小林悠太、山下俊輔】

 共同代表に就いた与謝野馨元財務相は記者会見で「政治人生のすべてをかけた最後の戦いだ。残された体力、気力、使命感を振り絞って新党成功のために身をささげたい」と強調。「青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を言う」というサミュエル・ウルマンの詩も紹介した。

 民主党でも自民党でもない「第三極」としてキャスチングボートを握り、政界再編につなげるのが「たちあがれ日本」の基本路線だ。しかし、政党要件ギリギリの国会議員わずか5人でのスタート。平均年齢は70歳近く、他党から「シルバー新党」「たそがれ新党」と皮肉られている。

 「応援団長」として発起人に加わった石原慎太郎東京都知事が「30代、40代、50代の中に我々と同じぐらい(国を)憂えている人間がどんだけいるんだい? 民主党見てみろよ。みんな腰抜けじゃないか」と挑発してみせたのも、中堅・若手に参加者が広がらなかった危機感の裏返しだ。

 今夏の参院選では早速、党存続の危機を迎える。中川義雄参院議員が改選を迎えるため、最低1議席を確保しなければ政党要件を失う。参院選比例代表に候補者を10人程度、選挙区でも改選数3以上の東京、神奈川、埼玉、大阪などで擁立を目指す。結党趣旨で「参院選後に、超党派の『政策連携』の起点となり、政策を軸とする再編、世代交代の機運を創(つく)る」と掲げたものの、自身の生き残りをかけた選挙戦となる。

 「打倒民主党」を強調すればするほど、自民党と支持者が重なる。同党の谷垣禎一総裁は10日、山梨県昭和町で「民主党を追い詰めるのが目的なら、力を分散するのはよくなかった。党を作った方と私の判断はまったく違った」とけん制。与党側には事実上の自民分裂とみて歓迎するムードもあり、鳩山由紀夫首相は記者団に「改革の時計の針を逆に戻すつもりは一切ない。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、新たな政治運動を作り上げることは悪い話ではない」と語った。

 一足先に「第三極」を志向し、民主批判層の受け皿として支持を広げつつあるみんなの党の渡辺喜美代表は栃木県鹿沼市での講演で「どこかの補完勢力ではだめ。(たちあがれ日本は)2.2極ぐらいだ」と批判した。

 民主党の小沢一郎幹事長との将来の連携をにらんだ動きとの見方もくすぶるが、平沼氏は記者会見で「まったくない」と否定。小沢氏と囲碁仲間の与謝野氏も「考えたこともない」と述べた。

 平沼氏らは10日の記者会見で新党の基本政策「日本復活に向けて」を発表した。与謝野氏が主張してきた消費税率引き上げは明記されず、「規制緩和と消費税収で創る雇用によって『安心』と『成長』を同時に達成する」という当たり障りのない表現に落ち着いた。メンバー集めを優先した結果、政策があいまいになり、民主、自民両党との違いを鮮明に打ち出せなかった。

 財政再建派の与謝野氏は社会保障制度を維持するための消費税増税が持論で、これを前面に押し出せば、4年間引き上げないとしている民主党との間で明確な争点に位置付けられるはずだった。

 しかし、平沼氏は積極財政派。基本政策はその折衷案として「3年間の『集中治療』により経済・財政を再建」をうたい、「3年以内の景気回復に向けた集中的な取り組みにより経済状況を好転させることを前提として、消費税を含む税制の抜本的な改革を行う」とした09年度税制改正法の付則を踏襲。両論が混在する自民党の政策に限りなく近づいた。

 基本政策が郵政民営化に一言も言及しなかったのも、路線の違いからだ。与謝野氏と園田博之氏は小泉政権で郵政民営化法案の党内論議を主導。一方、平沼氏と藤井孝男、中川義雄両氏は国会で法案に反対し、平沼氏が自民党に戻らず政治活動を続けてきた原点が「郵政」だ。園田氏は記者会見で「完全民営化の原則は変えない」と明言したが、具体案を先送りして対立を回避した感は否めない。

 一方、自主憲法制定▽外国人参政権反対▽選択的夫婦別姓反対--など平沼氏の「タカ派」路線は基本政策に盛り込まれた。民主党との違いをアピールする狙いがあるが、「ハト派」の支持を失いかねないジレンマを抱える。与謝野、園田両氏が自民党を飛び出した目的は「自民党にはできない無党派層の受け皿作り」だっただけに、基本政策はこの点でも矛盾を残した。

毎日新聞 2010年4月10日 22時14分(最終更新 4月10日 23時45分)

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