リスク管理できない銘柄は買えない
では、リコール問題が収束し、トヨタが新興国向けの大胆な巻き返し戦略を打ち出せば、海外機関投資家は戻ってくるのだろうか。筆者の予想は「否」だ。
その理由は、一連の騒動の中でつまずいた同社の広報・IR戦略にある。
プリウスのブレーキ問題が騒がれ始めた当初、同社は担当役員が会見に現れ、「欠陥ではなく、ドライバーのフィーリングの問題」という趣旨の説明に終始した。これに対し、海外投資家の間からは、「自動車でも最も大事なブレーキ性能に関し、この程度の認識しか持っていないのかと愕然とした」(同)との批判が沸き上がった。
プリウスのブレーキ不具合については、専門家の間でも「微細なトラブルであり、リコールは大げさ」(自動車評論家)との声が根強いのは確かだ。
だが、問題が表面化した際、部品の構造に詳しい評論家や担当記者だけでなく、多くの投資家が注視していたことをトヨタは甘く考えていたのではないか。
今となっては、「社内調整を優先させ、消費者の声に真摯に応えず、安全性という認識が欠如していたのは明白。総合的なリスク管理ができていない証左であり、内規では投資不適格銘柄」(米系の中堅運用会社)とのネガティブなイメージが定着してしまった。
元来、トヨタのIRは海外投資家の評判が芳しくなかった。「何を尋ねても『弊社の品質・性能には絶対的な自信を持っております』の紋切り型の答えしか返ってこなかった」(同)からだ。
リコール問題が解決した後、トヨタは真剣に投資家対策を立て直す必要がある。これを怠れば、トヨタ株は、株価に甚大な影響力を持つ海外投資家に完全に見離されることになる。
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