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【社会】

干拓地に海水、干潟復活 浄化機能で英虞湾再生

2010年4月10日 09時11分

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 真珠養殖で知られる三重県志摩市の英虞(あご)湾で、県水産研究所は9日、かつて干潟だった土地と海を仕切る堤防の水門を開け、水質の浄化作用をもつ干潟に再び戻す事業を始めた。環境悪化が進む湾の再生を図る、全国的にも珍しい取り組みという。

 湾では100年ほど前に真珠養殖が始まり、母貝のアコヤガイの排せつ物のほか、生活排水の流入、干潟の減少で環境悪化が進んだ。湾内は外海との海水交換が少なく、母貝の死滅被害も出ている。

 干潟は、多様な生物がすみ、貝類やカニ、ゴカイなどは植物プランクトンを含む海の有機物を食べ、赤潮や貧酸素化を抑制する働きがある。

 研究所によると、英虞湾にはかつて269ヘクタールの干潟があったが、江戸時代から農地確保などのため干拓され約70%が消失。しかし現在では、耕作をやめるなど干拓地の85%余りが使われていない。湾の小規模遊休干拓地で既に干潟再生実験をし、アサリなどの生物増を確認できたため、大規模実験に踏み切った。

 場所は同市阿児町立神の湾奥部。9日は干拓地を塩害から防ぐ堤防の水門を開け、現在は池となっている、かつて干潟だった土地約2ヘクタールに海水を入れた。

 今後、アサリの放流や、生物のすみかとなる海草の移植などを進める。3年後には干潟が再生される見込みだ。

 沿岸の遊休地すべてを干潟に戻すと、湾の干潟の有機物除去能力は8倍になると試算。責任者の国分秀樹研究員(34)は「湾の浄化は生活排水や養殖ごみの抑制に加え、干潟再生がないと進まない」と意義を強調する。干潟に詳しい三重大大学院生物資源学研究科の前川行幸(みゆき)教授(60)はこの取り組みについて「国内ではほとんど例がないのでは。放置されている干拓地は日本中にあり、干潟復活の取り組みの第一歩と期待したい」と話した。

(中日新聞)

 

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