■ヨルダンと中国企業の意外な関係
ヨルダン旅行で聞いた話を少し書く。
ヨルダンは、中東の国でありながら、産油国ではない。なので、主要輸出品は「優秀な人材」だと言われているそうだ。
また、最近では、アメリカの最恵国待遇(…だと思う。関税とかが有利になっているとの説明だったので…)であるという利点を活かして、中国系企業の工場を多く誘致し、安価で優秀な労働力を使って繊維・アパレル製品などをつくり、アメリカに輸出しているそうだ。
このほか、紅海に面したアカバ(←地名)にある、同国唯一の港の再整備を進めている。
現在の旧港はビーチに隣接しており、手狭となったため、リゾート用とし、少し離れた場所に大きな港をつくり、原油の輸入・モノの輸出などはそちらで行なうようになるそうだ。
アカバでは、大規模なリゾート開発や大型ホテル新設計画も続いている。観光客の誘致にも積極的だ。
■外貨獲得のために石油を輸出するシリア
シリア旅行で聞いた話。
シリアは長い間、石油はないと思われていたのだが、最近、1980年代になって石油があることが確認され、「産油国」となった。
産油量は、ちょうど国内の消費をまかなう程度なのだが、外貨獲得のために、その良質な石油は輸出にまわされ、国民は、周辺国から輸入した、質のあまり良くない石油を使っているという。
その石油はお金を払って輸入しているのではなく、国内でつくった野菜などと物々交換で供与されているそうだ。
外交面では、アメリカの干渉とは一定の距離を保ち、どちらかというと親ロシア・親中国路線だが、独自の姿勢を保っている。(←かなり穏健な言い回しだw)
ゴラン高原について。
同地に住んでいるシリア人は多いが、現在はほぼ実質、イスラエルに軍事占領されている。ゴラン高原内の一部地域の住民は、シリア人でありながら、シリアの別の地域と自由に行き来できない状況にあるそうだ。
■紛争地域と治安の良い国が隣接
この2国を旅行した印象は、
「国内の治安は良い」
というものだ。
隣接して、イスラエルやイラクといった、きな臭い国があるのだが、ヨルダン人もシリア人も、平和にふつうに暮らしている。
私自身、旅行の行程で、イラク国境まで200キロくらいの場所まで行ったし、ゴラン高原の近くもとおった。少なくとも、その時は何もなかった。
以前、日経新聞で、英国人の中東専門家が、インタビューで、
「紛争が激化する国の隣でも、治安を保ち、高成長を続けることは可能だ」
と言っていた。確かにそうかもしれない。
ただ、たとえばシリアなんかだと、時々、空爆やテロがあるようだが(笑)。
■イラン・モデルとドバイ・モデル
上記のインタビューではまた、
「今、中東の若者たちが魅力を感じるのは、米国やイスラエルに政治的に立ち向かう『イラン・モデル』か、経済成長に特化した『ドバイ・モデル』に二極化している」
ということだった。
今回、一緒のツアー参加者で、イラン旅行の経験者がいた。
その人たちから聞いたところでは、イランでは、旅行者も、女性は顔と手以外はすべて隠すことが義務づけられているし、アメリカ風のものは一切ないということだった。
(ヨルダンとシリアでは、MTV(米系の音楽専門チャンネル)のアラブ版みたいなものがあったり、ペプシコーラの大きな看板があちこちにあったりして、とくに嫌米的な雰囲気は感じられなかった)
とはいっても、あとはふつうで、とくに剣呑な雰囲気はなく、むしろ現地の人々は素朴な雰囲気だったそうだ。
一方、ドバイ。
並外れたリッチさが、日本のテレビや雑誌などでもよく紹介されている。
私は今回、飛行機の乗り継ぎで空港に立ち寄っただけだが、充分、驚いた。
アメリカのものをはじめとして、お店にはモノが豊富にある。
そして、ハブ空港になっているせいもあるだろうが、利用客もスタッフも、アフリカ系、ヨーロッパ系、アジア系…と、さまざまな人々が入り混じっている。
また、ドバイの立地するアラブ首長国連邦をはじめとした、リッチな産油国では、いわゆる3Kなどの仕事をする人がいないため、インドなど外国からの労働者でまかなっていると聞いた。
■経済圏として無視できない存在に
前出のインタビュー記事によると、その識者は、中東域内の今後について、次のように述べている。
「経済は全体として高成長が続く」
「毎年2%以上の人口増加」
「エネルギー輸出に依存した経済からの脱却を図り、ペルシャ湾岸諸国などでは外国人経営者を積極登用する一方、国民の職業訓練にも力を入れ始めた」
「これまで中東からの『輸出品』は原油と資金、ほかに強いて挙げれば宗教とテロだけだったが、工業製品輸出の時代がこれから始まる」
確かに、報道や各社のニュースリリースを見る限りでは、自動車メーカーをはじめとして、さまざまな日本企業がドバイやエジプトに橋頭堡を築き始めている。
中東は経済圏や市場として、また、そのおもな住民であるイスラム教徒系の人々は、もはや無視できない存在となっていると思った。
■偏見を乗り越えて
私はこれまで、正直、「中東」とか「イスラム」について、
「あの人たちは、私たちとは、かなり違う」
といった、固定的な見方をしていた。
それが、今回の旅行と、前回、2006年のゴールデンウィークに行ったエジプト旅行で、かなり緩和されたと思う。
たとえば、お祈りの時間になると、大音量でアザーン(というのかな?お祈りの呼びかけやお経みたいなの)が鳴り響き、あたりにいる人たちがいっせいにその場にひざまずいてお祈りを始めるのでは、と思っていた。
実際、アザーンが流れる場所もあったし、道端に敷物を敷いてお祈りしている人も、いなくはないのだが、私が見た限りでは、多くの人は、ふつうに生活していた。
ヒジャブ(スカーフ)についても、私自身は嫌いだが、見慣れてしまえば、そう奇異には感じられなくなってくる。
じっくりつきあえば、かなり価値観は違うのだろうが、ふつうに接する分には、ほかのアジア諸国や欧米諸国の人たちと、あまり変わらなかった。
いつも海外に行って思うのだが、どんな国の人でも、根っこのところでは、同じ人間だと実感する。
以前、やはり日経の記事で、別の中東人識者が、
「日本は、欧米とは違う伝統を保ちながら、近代化を実現した。そのノウハウは、イスラム国の参考になる点が多い」
という意味のことを言っていた。
いろいろな価値観の人が、それを互いに押し付け合うことなく、うまく共存できるといいな、と思う。理想すぎだろうか?
2007年01月11日
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原稿執筆のお願い
実は私はいま、今年の4月25日に新しく創刊する雑誌の編集長に就任し、創刊への準備に追われている毎日です。
雑誌のタイトルは「百姓一揆」という少し過激なタイトルですが、内容は月刊総合情報誌というもので、内外の政治、経済、社会などあらゆる分野から時宜にあったテーマを選んで構成し、世の中に問題提議をしていきたいと考えています。
読者対象は40代から60代の大人を対象として考えています。
発行所は大阪に本社があるR’sグループ内の会社で、マルコポーロといいます。編集部は築地にあります。
つきましては、大変お忙しいかとは思いますが、原稿の執筆をお願いできないでしょうか。
詳細については、後日、改めて連絡いたしますが、何とかご検討いただければ幸いでございます。何卒、よろしくお願いいたします。
2007年1月25日
株式会社マルコポーロ
「百姓一揆」編集長
辻 秀雄
090-2752-7079(携帯電話)
電子メール:hideo999@ca2.so-net.ne.jp
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東京都中央区築地3−14−5 アカデミープラザビル3階
電話:03−6278−5621(編集部)
ファックス:03−6278−5624
本誌基本コンセプト
いま、時代の大きな潮流が、世界の隅々まで押し寄せてきています。経済のグローバル化やボーダレス化をはじめ市場主義とIT化の進展、少子・高齢化の進行、団塊世代の離職、犯罪の低年齢化・凶悪化、ニートやフリーターの増加、そして景気が上向いたとはいえ長引く平成不況による閉塞感の蔓延、勝ち組・負け組みに見られるような格差社会の広がりなど、これまでのわが国の社会、経済、生活のシステムや価値観は大きな変革を迫られています。
そのような時代の動向をきちんと把握し、世の中の動きの根底や背景にあるものは何か、真実は何か、そして、ものごとの本質はどこにあるのかを浮き彫りにして明らかにし、その本質や真実を社会に対して提供していくことは、ジャーナリズムのもっとも大きな使命であり、義務であるともいえます。さらに、閉塞感が漂う日本の現状をもっと明るく、楽しい社会にするための一助になるのも、ジャーナリズムの大きな役割だと考えます。
『百姓一揆』は、そのような信念と考えのもとに誕生した、まったく新しい「月刊総合情報誌」です。
取り上げるテーマは、内外の政治、経済、社会などあらゆる分野から、時宜にあったものを選んで編集していきます。また、これまでマスコミで取り上げにくいタブーといわれるテーマにも積極果敢に挑戦していきたいと考えています。原稿の執筆は、現場の第一線で活躍しているジャーナリストや有識者が健筆をふるいます。切り口が鮮明でわかりやすく、歯切れの良い記事を提供するよう心がけていく所存です。
読者対象
40代から60代前半の男女を読者と想定しています。サラリーマン社会のなかで酸いも甘いもかみ締めている大人にぜひ読んでもらいたいと考えています。
形態
発刊 2007年4月25日
定価 500円(消費税込み)
判型 A4変形版
頁数 120頁