オバマ大統領は今年中にはイラクのアメリカ軍を、そして来年にはアフガニスタンのアメリカ軍を引き揚げると約束しているが、引き揚げたのち、混乱が起きれば大統領の人気はさらに悪くなってしまう。
トヨタ自動車叩きというのも、戦うアメリカを国民にアピールするためのオバマ大統領の政治駆け引きの一つであった。オバマ大統領は目先の計算が得意であり、人々を説得する能力に長けている。しかしながらアメリカを動かす国際戦略やあるいは軍事戦略にはまったく理解がない。
2010年2月1日、オバマ大統領は2011年度の4兆ドルに上る連邦予算を発表したが、それと同時にQDR、つまり向こう4年間のアメリカの国防戦略をも発表した。このQDRはアメリカの軍事戦略の基本であり、1997年クリントン大統領が発表した最初のもの以来、すでに4回、歴代のアメリカ政府によって発表されている。
オバマ大統領のQDRによると、アメリカの国防予算は2010年度は6802億ドルであったのが、2011年度には7082億ドルになっている。このうち基本的な国防費は5489億ドル、イラクとアフガニスタンの戦費は1593億ドルである。このQDRによれば、アメリカの国防費の伸びはこれまでになく低く抑えられており、オバマ大統領がアメリカ軍の軍事能力を制限することによって、アメリカの世界における軍事活動を縮小しようとしていることが見て取れる。
「オバマ大統領は基本的には民主党のリベラル派の人々や政治家に動かされており、アメリカの軍事力強化には強く反対している。しかも失業と不況が重くのしかかっているなかでは、軍事費の支出を抑えようと考えるのは当然だ」
フレッド・バーンズ編集長はこういっている。
オバマ大統領はQDRにおいてアメリカの基本的な考え方を明らかにはしている。
まず第一に、いまの戦争に勝たなければならない。二番目に、アメリカは将来の紛争に備えなければならない。三番目は、アメリカに敵対する国々を抑え込まなければならない。そして最後に、現在の徴兵なき軍事力を維持するとしている。
しかしながらオバマ大統領はそういった考え方を実施するために、どれだけの費用と軍事力が必要であるかということをまったく明らかにはしていない。このことは、世界戦略を展開するに当たって具体的な考え方をもっていないことを端的に示してしまっている。
細かい内容についていえば、オバマ大統領はアメリカの陸軍がいま使っている古い兵器をそのまま使いつづけようとしており、陸軍の軍事力を拡大しようとは考えていない。
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