トップ頁 > この一年の注目記事 > 打ちひしがれる超大国

注目記事

 海兵隊員たちはヘリコプターで移動せず、古い輸送艦LTCが兵員や機材輸送に活躍した。

「ハリアーを垂直に離陸させると燃料がかかるので普通の離着陸を行なっている」

 海兵隊の作戦の指揮を取ったダムレン大佐がこういったが、アメリカ海兵隊の垂直離着陸戦闘機ハリアーは胴体の脇についたエンジンを下に向けて猛烈な噴射を行ない、滑走をしないまま垂直に飛び上がるのが特徴となっている。しかしそのためには膨大な燃料を必要とするとあって、せっかくの最新鋭の技術をも使わないで訓練が行なわれた。

 アメリカはアジア西太平洋における軍事力をグアム島に集中させており、この夏には無人戦闘機2機が配属されアジア全域を監視することになっている。そして一方、沖縄を基地とする海兵隊と横須賀・佐世保を基地とするアメリカ第7艦隊はこれまでと同じように西太平洋各地で訓練を繰り広げている。最近では北朝鮮の猛烈な抗議のなかで、韓国で上陸作戦訓練が行なわれ、私が取材したフィリピンでの訓練の前、タイでもこれまでとほとんど変わらない規模と機動力を発揮した訓練が行なわれている。

 こうした第7艦隊や海兵隊の訓練を見ているかぎりでは、キッシンジャー博士が主張しているとおりアメリカの軍事力に翳りはない。しかしながら、こうしたアメリカ軍の西太平洋における軍事行動と並行して展開されるべきオバマ外交は完全に行き詰まりを見せてしまっている。

 これまでアメリカの軍事力にすべてを頼ってきた日本に新しい政権が誕生し、鳩山首相はいったん決まった普天間基地移転の取り決めに苦情を申し立て、話し合いがつきそうにもない。朝鮮半島ではこれまた日本と同じようにアメリカの強力な軍事力によって平和と秩序が保たれているにもかかわらず、オバマ大統領は韓国政府とのあいだの自由貿易協定を成立させることができないでいる。

「韓国はアメリカの牛肉の輸入を制限しており、話し合いが難航している」

 アメリカのカーク通商代表がワシントンで記者団にこういったが、朝鮮半島の当面の敵対国家である北朝鮮は、核開発を続ける一方、オバマ政権との話し合いに応じる気配もない。

 さらにまた中国は、人民元や国内の非人道的な政策についてオバマ政権が介入をしようとしないことから好き勝手を行なっており、アジアの人々から見るとオバマ大統領は中国におもねっている。

 オバマ大統領の外交上の最大の失敗は、ロシアとの核兵器制限協定について相手側の主張によって引きずり回されていることだ。

| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | ページ 3/7

WEB特別企画

2010年3月期から早期適応が始まる「IFRS (新国際会計基準)」。日本企業の会計処理を大きく変えるといわれるなか、われわれが意識すべきことは?藤沼亜起氏(前・日本公認会計士協会会長)にお話をうかがった。

先行きの見えない現在、ビジネスパーソンに求められるスキルとは?

夢の自動車「燃料電池車」が一般家庭に普及するのはもうしばらく先になるようだが、「燃料電池」自体は家庭に導入される日が近づいてきている。いよいよ「燃料電池時代」の幕が開こうとしているのだ。

燃料電池の家は“世界一”

質の高い眠りを得るためには、どのような寝具を選ぶのがよいのでしょうか。そのポイントを伺いました。

開発のプロに聞く『シニアのための寝具選び』

世界に冠たる科学技術立国で知的民族国家である日本は、先進国の中でもフランスと共に天然資源には全くと言ってもいいほど恵まれない国である…

世界が注目する高効率火力発電

WEB連載

菅野覚明 (東京大学教授)

「男女平等」「おひとりさま」礼賛の風潮に喝! 真に「心の美しい日本女性」になるための女性史講座ここに開講!
第4回 女性の化粧は「もてなし」の一つ

“女子”の心得

木内博一 (農事組合法人「和郷園」代表理事)

かつてないほど農業に対する関心が高まるいま、カリスマ農業経営者が「農」を通じたほんとうの日本活性化策を語る!
第2回 食のデフレは終わらない

農業には日本を変える力がある

斎藤 環(精神科医)

フィクションとリアルの混同とは何か。サブカルチャーに精通する精神科医が、映画、漫画、小説などから読み解く現代世相
第2回 あらゆる関係はS−Mである

「虚構」は「現実」である

野口悠紀雄(早稲田大学教授)

「オフショア」「タックスヘイブン」の姿を知ることで、日本経済の問題点と進むべき道が見えてくる!
第2回 タックスヘイブンは存在悪か?

『現代版宝島物語――「オフショア」の秘密』

通販のユーコー

ビットウェイ・ブックス

ビデオ アーカイブズ プラス

トップ頁 > この一年の注目記事 > 打ちひしがれる超大国