
幼児期の男の子がいる母親たちが語り合ったグループインタビュー
「男の子は男の子らしく」という子育てが幼児期にもある-。そんな傾向が、福岡市の市民グループ「ゼミナールFUKUOKA21ジェンダー研究会」(13人)の調査結果からうかがわれた。中には大人が無意識に対応しているケースもあり、会員たちは「性差ではなくその子らしさを尊重しましょう」と呼び掛けている。
同会は2000、05年度に大学生の意識調査を行った。性差に対する意識に大きな個人差があったため、より低年齢での環境を調べることにした。こうした調査は小中学生の親や学校を対象にしたものはあるが、幼児期は珍しいという。
調査テーマは、最近「男児の子育ては難しい」といった声を聞くことから、男児に絞った。昨年9―11月、市内にある保育園・幼稚園のうち80を超える園にアンケートを実施。男児がいる母親24人へのグループインタビューも行い、今年2月、「男の子の子育てを考える―男女共同参画の視点から」と題してまとめた。
調査の結果、教材などを色分けしていない園が9割に上ったものの、一部には「運動会で男児は応援団、女児はチアガール」などと分ける例や、「男女平等でも男らしく女らしくの精神は教える」との意見もあった。呼称も、男児は「くん」が62・0%、女児は「ちゃん」が75・2%で、「さん」(男児11・6%、女児23・8%)を上回った。一方で「呼ばれたい呼称を本人に聞く」という園もあった。
母親への調査では、男児に対し「大黒柱になるようしっかり育てなければならない」と責任を感じている例が多かった。跡取り意識のある祖父母からの圧力や、子育てでの孤立化が背景にあるとみられる。
大島恵代表(43)は「周りの大人が『男の子』『女の子』をつくってしまう。男女で分けない、ということを意識的にやっていく必要があるのではないか」と指摘。多くの園が人権尊重を掲げていることから「その中にジェンダーの視点を据えた研修を組み込むべきだ」と提起している。
●感情形成に影響与える 富永桂子・福岡大非常勤講師
ゼミナールFUKUOKA21ジェンダー研究会の顧問、富永桂子・福岡大学非常勤講師(西洋史学、女性学)に、調査結果をどう受け止めるか聞いた。
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男女とも「さん」付けで呼ぶ小学校が増えるなど、男女平等を目指す教育が浸透してきている。そうした対応が幼児期は自由であり、調査では本音の部分がもろに出ているようだ。
男の子の子育てでは「一生きちんと仕事をしてほしい」「外で遊んだりスポーツをしたりしてほしい」など、健全な男子としての“あるべき姿”が前提になっている例が目立つ。背景には、おとなしく内的なものが「女らしさ」として低く否定的にとらえられている現状があるのではないか。こうした意識は、男の子の感情形成に影響を与えてしまう。
「そもそも男女は異なる」という意見もあった。そうした男女特性論に対しては「では男らしさ、女らしさとは何か」と問いたい。性差ではなくその子の個性を尊重すべきだ。
女の子に対しては「将来一緒に買い物に行けるからいい」という母親の意見もあった。女の子だから買い物、ではなく、もっと自立心や自尊感情をはぐくむ意識が必要だと思う。
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