「アスカ、シンジ君は死んだわ。残されたのは彼の腕だけ。他は何も残って無いわ。」
明確に突きつけられた事実。
アスカの中で何かが壊れた。
「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
第弐拾話 解放
「総員第一種戦闘配置!総員第一種戦闘配置!地対空迎撃用意!」
「目標は?」
「現在進行中です!駒ヶ岳防衛線、突破されました!」
けたたましい警報音が発令所に響き渡り、少し前までの空気は鳴りを潜めて緊張感が張り詰める。
ゲンドウの問いに対し、シゲルが手元の端末を忙しく操作しながら質問に答える。
第三新東京市近郊の防衛ラインでは緊急配備された戦闘車両から激しい攻撃が加えられていた。
おびただしいまでのミサイルが目標―――力を司る使徒、ゼルエルに向かって放たれる。
だが、そんな攻撃も空しく、ゼルエルには全くダメージを与えていない。
A.Tフィールドを展開していないにも関わらず。
ダメージは無いものの、爆撃を食らいながらも侵攻していたゼルエルだが、一瞬顔の部分が光ると、第三新東京市の中心付近で大爆発が起こる。
天高くまで上がった爆発は十字架を形作った。
不可視の攻撃は第三新東京市の特殊装甲板をわずか一撃で22層のうち18層を貫いた。
「じゅ、十八もある特殊装甲を一瞬で……!!」
マコトが驚愕の声を上げるがそれは職員全ての思いを代弁していた。
皆が目の前の光景に唖然としている時、ミサトとリツコが発令所に走りこんでくる。
「エヴァの地上迎撃は間に合わないわ!!零号機をジオフロント内に配置。本部施設の直衛に回して!」
ミサトの指示にマコトが零号機を発進させようとするが、それにゲンドウが待ったをかける。
「直衛には弐号機を出せ。レイは初号機で出撃だ。」
突然の後方からの横槍にミサトは抗議の声を上げようとするが、ゲンドウは有無を言わせぬ態度で繰り返す。
「葛城三佐。命令だ。」
「……はい。」
悔しそうに唇を噛むミサト。
彼女には分かっていた。今、弐号機が使い物にならないだろう事を。
(まだ諦めてないのね…。惨めな人………。)
リツコは後方で腕を組んでいるゲンドウを冷ややかな目で見つめていた。
弐号機の発進準備が整い、ミサトの声とともに射出される。
だが、そのパイロットたるアスカの顔には生気が見られない。
シンクロ率はミサトが予想したように、先日までとは比べ物にならないくらいひどいものだった。
よく起動したものだ、と思えるその数値を見てミサトはアスカに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
だが、どうしようもない。
どうしようもないのだ。
ミサトは免罪符とも思える言葉を必死で心の中で唱え続けた。
そうしなければ自らが潰されそうだったから。
そして祈った。
彼女が無事に帰ってきますようにと。
「初号機は!?」
ミサトの声にマヤが答える。
「今エントリースタートしました。」
「LCL電化。」
「A10神経接続開始。」
いつもと同じ発進準備。
その過程に寸分の違いも無い。
ただ一つを除いて。
「接続完了………ダメです!!初号機起動しません!シンクロ率ゼロ%!!」
「っ!そんな………!?」
そんな喧騒を聞きながら発令所上部で二人の男が呟く。
「レイを受け入れないのか…?」
「ユイ……」
レイはプラグ内でその報告を聞いていた。
どうして…!?
どうして!?
もう………だめなの……?
今まではシンクロ率が低いながらも初号機でも起動していた。
それが今はゼロ。
それは、明確なまでの拒絶を示していた。
「レイは零号機で出撃させろ。初号機はそのまま凍結。」
「……了解。」
先ほどからのゲンドウの命令はミサトにとって意味不明なものばかりであった。
いや、ミサトだけではないだろう。
ほとんどの職員にとって真意は測れないものばかりだ。
(だけど…あの司令が意味の無い事をするかしら…?)
くすぶり続けていた本部首脳部への疑惑。
それがミサトの中で確固たる位置を占め始めていた。
本部のやや手前に射出された弐号機は緩慢な動きで迎撃の準備を始めた。
ありったけの武器を地面に並べ、ゼルエルのジオフロント侵入を待つ。
あれ………アタシ…なんでこんなことしてんだろ……
あ…そっか……使徒が来たんだ……
じゃあ……やっつけないといけないね…
どうして………?
決まってるじゃない!自分の力を見せつけるためよ!
あれ……?これ…アタシ……?
そういえば…こんなの考えてたときもあったわね………
ふふ…アタシも変わったものね…
そっか……シンジに会ってから…あの公園で会ってから………
シンジィ………
爆音がジオフロントに響き、辺りをまばゆい光が包み込む。
空に大きな穴が開き、爆煙が立ち込める中から天使が姿を現した。
「撃てぇっ!!!!」
ミサトが叫び、弐号機の構えるパレットガンから次々と弾丸が発射される。
が、やはりゼルエルにはダメージを受けている様子は無い。
先ほどまで雨の様に降り注いだミサイルをもものともしなかったのだ。
フィールドを展開すること無しに。
どうしてたかが弾丸でダメージを与えることが出来るだろうか。
それでも弐号機はパレットガンを打ち続ける。
まるで壊れた機械の様に。
やがて弾丸を撃ちつくし、カチッ、と軽い音が響く。
「次っ!!」
弾が切れるや否や、ミサトがすぐさま次の指示を出す。
アスカはその声に反応してか、ゆっくり傍らに置いてあった次のパレットガンを構える。
「撃てぇ!!!」
先ほどと同じようにミサトの号令と共に弾が吐き出される。
爆音がジオフロントに鳴り響き、着弾の爆煙がゼルエルの姿を覆い隠す。
二度目の軽い音が鳴るとアスカは発砲するのを止めた。
正確にはミサトが何も指示を出さなかったからであるが。
発令所の皆が固唾を飲んで状況を見つめる。
先ほどとは異なり、静寂が急激に辺りに広がる。
ヒュッ!!!
煙の中から空気を切り裂く音と共にゼルエルの腕が伸びる。
しかし、それが切り裂いたのは空気だけでは無かった。
無類の切れ味を持つ、まるでトイレットペーパーのようなそれはいとも簡単に弐号機の両腕を切り飛ばした。
ブシュウウゥゥゥ!!!
弐号機の腕からおびただしいまでの体液が流れ出した。
アスカはプラグ内で顔を伏せ、自身に襲い掛かる激痛に必死で堪える。
脂汗が額に浮かび、あまりの激痛にアスカは意識が遠のくのを感じた。
ふと顔を上げると、時の流れを変えてしまったかのように白い腕がゆっくりと迫ってくるのが見えた。
これで……シンジのところに行けるのかな………?
アスカは目を閉じた。
発令所のモニターには弐号機の頭部が胴体を離れて飛んでいく様がスローモーションの様に映し出されていた。
「アスカは!?」
「無事です!生きてます!!」
マヤの報告にミサトはホッと胸を撫で下ろした。
両腕が切り飛ばされ、動かなくなった弐号機を見てミサトの頭に嫌な予感がよぎった。
慌ててマヤに神経接続の解除を命令したが、ぎりぎりのところで何とか間に合ったのである。
普段は運は悪いのだが、こういうときの悪運の強さにミサトは感謝した。
だが、状況はより悪い方向へと進んでいる。
弐号機は戦闘不能で、残された戦力はわずかに零号機一機のみ。
恐らくレイではこの使徒は荷が重いだろう。
もし零号機がやられた時は………
ミサトは最後の手段を使う覚悟をした。
………アタシ…生きてる……?
プラグ内でアスカは目を覚ました。
両腕を失って、使徒の攻撃が目の前まで迫ってきた、そこまでは記憶にあったが、その後は良く覚えていない。
気を失ってどれ位経ったのか。
未だぼんやりした頭を覚ますように左右に二、三度振ると、アスカはハッチを開けて外に出た。
まず目に飛び込んできたのは頭上に飛び交うミサイル。
本部周辺の施設から次々と使徒に向かって打ち出されている。
すでに使徒は弐号機を通り過ぎ、本部のすぐそばまで到達していた。
それをアスカははっきりしない頭でボーッと眺めていた。
ふと足元に視線を移すと、そこには痛ましい姿の自らの愛機。
しばらく腕と頭を失った紅い巨人を見ていたが、やがてそこから離れていった。
(ゴメンね……)
覚束ない足取りで弐号機を後にし、森を抜けると何故かジオフロントに畑が広がっていた。
目の前に広がる場違いな光景を眺めていると、後ろから声がかかった。
「アスカじゃないか。そうか、無事だったか。」
加持は如雨露片手に笑みを浮かべてアスカのそばにやってくる。
「加持さん………」
「何やってんだ、こんなところで?危ないぞ?」
「加持さんこそ…。何やってるんですか…?」
「そりゃそうだ。」
ハハッ、と笑い、頭を掻きながらながら如雨露を傾ける。
「アルバイトが公になってね。本部に俺の居場所は無いのさ。今やこうして毎日ここに水をまいてる。」
「そんな……」
「さ、ここは危ない。早くどこかシェルターにでも逃げるんだ。」
「加持さんは…?」
「俺か?俺はここにいるさ。まだ見届けないといけないことがあるんでな。」
「ダメですよ!!早く一緒に……」
「大丈夫さ。まだ俺は死にやしないよ。」
その時、二人の近くの射出口から零号機が姿を現した。
「レイ………」
「ほら、早く行くんだ。」
零号機を見上げていたアスカを再び加持は急かす。
「絶対…無事でいてくださいよ。」
「分かってるさ。死ぬのは好きな女の胸の中、て決めてるからな。こんなとこじゃ死ねないよ。」
後ろ髪を引かれる思いでアスカは加持の元から走っていった。
加持はアスカを見送ると、その表情から笑顔は消え、厳しい面持ちで使徒と対峙する零号機に視線を移す。
「さて………。弐号機は大破。初号機は使えない。この状況をどう乗り切るつもりですか?碇司令………。」
「クッ!」
レイは零号機を走らせた。
すでに残された機体は自分だけ。
もう後は無い。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
まだ
・・
自分が死んでも代わりはいない。
なんとしてもシンジともう一度会いたい。
それだけが今のレイを支えていた。
その為に悪魔の手を取ったのだ。
だから………
先ほどの弐号機の攻撃で射撃武器の効果は無いことが分かっていた。
プログナイフを片手に使徒に接近する。
レイは接近戦ははっきり言って得意ではない。
しかし、こうなると嫌でもやらざるを得ない。
いつも以上に神経を張り巡らして、かつ大胆に接近する。
使徒は周辺施設から放たれるミサイルに気が行っていたのか、零号機の接近に気付くのが遅れた。
チャンスとばかりに零号機はナイフをコアに向かって突き出す。
「よしっ!!」
発令所で戦況を見守っていたミサトが思わず大声を上げる。
それほど決定的な状況だった。
使徒の判断能力は決して高くない。
いくらダメージが無いからと言ってミサイルに対する対処には随分と間があった。
ならば、とミサトは背後からの奇襲を零号機に命令した。
そしてそのミサトの判断は決して間違いではない。
だが、今の零号機とゼルエルでは戦闘力に差がありすぎた。
プログナイフがコアに届くと思われた瞬間、巨大な八角形が空間に広がる。
光が辺りに満ち、二つの巨体を照らし出す。
「ぐっ………!」
レイは意識を集中して、レバーを握る手に力を込める。
少しずつナイフがフィールドを侵食していく。
やがてナイフがA.Tフィールドを突き破りコアに達する………ことは無かった。
A.Tフィールドを破ったまでは良かったが、ナイフがコアに達する直前にコアを何か硬い殻のようなものが覆った。
それにナイフが触れ、激しく火花が散り、ナイフが砕ける。
全力でコアにナイフを突き立てようとした零号機は、ナイフが触れた瞬間弾き飛ばされてバランスを崩した。
それをゼルエルは見逃さず、腕を伸ばした。
The God tames The Beast
「レイ!!」
ミサトの叫びに反応して零号機は体をひねって避ける。
が、完全には避けきれず、いとも簡単に零号機の腕を持っていった。
「くぅっ……!」
レイの表情は苦悶の色に変わり、腕に走る激痛に思わずくぐもった声を上げる。
最悪だったのは、痛みのあまり零号機の動きを止めてしまったことだ。
それもゼルエルの射程距離で。
レイの接近戦の経験の無さが仇となった。
再びゼルエルの腕がレイを襲う。
「レイッ!!!!」
ゲンドウが珍しく大声を上げた。
だが、その叫びも虚しく、今のレイにその攻撃を避ける術は無かった。
零号機の顔面に突き刺さり、ゆっくりその巨体を横たえる。
切り裂かれた顔の部分からはまるで人間のように紅い液体が流れ出した。
まるで希望が一緒に流れ出しているかのような錯覚をミサトは覚えた。
発令所の誰もが似たような心境だった。
もはや何度今まで絶望がこの場を支配したか分からない。
だが、今回ばかりは違うのだ。
本当に全てが終わった。
こちらの戦力はゼロ。対して相手は無傷。
活路すら見出せない。
虚脱感が急激に発令所に広がる。
しかし、そうしている間もゼルエルは確実に本部へと近づいていた。
内とは対照的に、外では最後のあがきとばかりにありったけのミサイルがゼルエルに向かって飛ばされていた。
だがそれさえもゼルエルの顔がわずかに光るとあっさりと沈黙した。
正真正銘打つ手なし。
そして凄まじい衝撃が発令所を揺らした。
「さ、最終装甲板融解!!!」
「まずい、メインシャフトが丸見えだわ!!」
ミサトが叫んだ通り、ゼルエルの前には本部に開けられた大きな風穴。
躊躇することなしにその穴をゼルエルは降下していく。
「目標は!?」
「そのまま真っ直ぐ降下しています!」
「ここに来るわ。総員退避!!急いで!!」
ミサトの言葉に職員皆が我先にと出口に殺到する。
それを尻目にミサトはマコトに耳元で囁いた。
「ゴメン………悪いけどよろしく………」
「いいですよ。サードインパクトよりマシです。」
ゴメン
もう一度ミサトは謝罪の言葉を口にしようとしたが、それは轟音にかき消された。
正面のモニターを突き破ってゼルエルが姿を現した。
どこか愛嬌のある顔をかしげ、獲物を品定めしているような印象を与える。
残った上級職員であるミサトやリツコ達は後ずさりするも逃げ場などどこにも無い。
ゲンドウも椅子に座ったままだが、額にはびっしりと汗を掻き、冬月はもはや諦観の色さえ見える。
ミサトは震えを堪え、キッと使徒を見据えながら、常にかけているロザリオをギュッと握り締めた。
(お父さん………ゴメン)
ゼルエルの目が怪しく光る。
マコトは本部自爆のコマンドを実行しようとENTERキーに手を掛ける。
その瞬間
ドゴオォッ!!!!!
壁が砕け、何かがゼルエルを吹き飛ばす。
何者かの突然の乱入にゼルエルはなす術もなく壁に叩きつけられた。
「エヴァ初号機!?」
何故ここに初号機がいるのか。何故シンジがいない今初号機が動けるのか。
直前までの恐怖と目の前のあり得ない現実に頭の中の混乱は誰もが頂点を極めた。
リツコは何かに思い当たり、おもむろに後ろで手を組む男に振り向いた。
―――この出来事すら司令のシナリオの内なのかしら
そう思い、恐らく今の状態にほくそ笑んでいるだろうと思いながらゲンドウの顔を見た。
確かに笑っていた。
だが、それは決して思い通りに物事が進んだときに出るような笑いでなく、それとは比べ物にならない程の歓喜。
そう、あの男は歓喜していた。
額に汗をにじませている事からこの現状はゲンドウにとっても予想外だったのでは。
そうリツコは推測した。
ならば何故あそこまで―――普段出すことの無いほどの喜びをあふれんばかりに表現しながら喜ぶのか?
生きる希望が見出せたことへの歓喜?
いや、違う。
あの人があそこまで喜びを爆発させる対象は一つしかない。
あの人ね。
碇ユイ
どうして初号機が動き得たのか。
(ついに…彼女が目覚めたのね…)
誰もが唖然としている間に初号機はゼルエルを伴って壁を突き破り、瞬く間に射出口へとたどり着く。
原因不明の暴走状態にしてはやけに理性的な行動。
リツコは初号機の動きに疑念を感じた。
(誰も乗っていないのにあの行動は……?
まるで地上に出るための手段が一つしかないのを知ってるような…?)
先ほどまで死の一歩手前まで行っていたと言うのに思考に埋没するリツコ。
だがそれも低い唸り声でかき消される。
グルルルルル………
全身の毛が逆立つ。
聞いた者全てを魂から揺さぶるほどの声。
ミサトは全身が震えだすのを禁じえなかった。
初号機はゼルエルの顔を壁に押し付けたまま低く唸り続ける。
ミサトはハッと目を開くと、弾かれたようにマコトに指示を出す。
「3番射出!!急いで!!」
ミサトの指示に条件反射のように素早くマコトは実行した。
バシュ、と音を立ててカタパルトがせり上がる。
初号機はゼルエルの顔を押し付けたままであり、その摩擦から激しく火花が散っている。
ロックされていないため地上(といってもジオフロントだが)に到達すると高く舞い上がり、初号機はゼルエルを下に組み敷いてそのまま着地した。
先ほどと同じように低い唸り声を上げると、右腕を振り上げた。
バキッ!バキッ!バキッ!
人が人を殴るのと同じ音が聞こえる。
ミサト達最後まで残った職員が避難して最初に見たのは一方的に使徒を蹂躙する初号機の姿だった。
ゼルエルとてただ黙って殴られていたわけではない。
腕を振り上げる瞬間を見計らってビームを発射し、鋭い切れ味を持つ腕を伸ばしたりもした。
だが、それらの全てが―――もし使徒にそのように感じる器官があるとするならば―――無駄であった。
ビームも腕も、全てが初号機の展開するA.Tフィールドで防がれた。
それは全く揺るがない。
そしてその直後には必ず手痛い反撃を食らうこととなった。
腕は引きちぎられ、顔は裂かれ………
観念したのか、それとももはや動くことも出来ないのか、大人しくなったゼルエルを前に初号機は暗闇に映える、輝く目を一際大きく見開くと口を開き、さらに低い唸りを上げた。
口元には今までの紅い、装甲の歯に当たる部分ではなく、素体としての歯が露となっている。
まるで、人間が目の前に最高の料理を出され、感激に身を震わせるかのように初号機は小刻みに顔を震わし、そして
ゼルエルに食らいついた。
クチャ…クチャ…ジュル……ゴリ!
咀嚼する音が響く。
ゴリラのように獲物にむさぼりつく初号機からはかなりの距離がある。
にもかかわらずミサト達の耳にははっきりとその音が入ってきた。
嫌悪感どころの話ではない。
光景を見ずともその音だけで何か苦いものが胃の方から急激に込み上げて来る。
なんだこれは?
なんだこれは?
目に入ってくるものはもはやミサトの理解を超えていた。
根源的な恐怖に吐き気を堪えるのも限界だ。
ミサトですらそうなのだから、マヤが口元を押えて茂みの方へ走っていくのも無理の無い話だ。
目の前で繰り広げられる世界をリツコは信じられないものを見るかのように驚きに満ちていた。
「そんな……S2機関を自ら取り込んでるというの…」
その直後、初号機は”食事”を止めると立ち上がり、背を丸めた。
そして自らが纏う、特殊な装甲を膨れ上がった筋肉で弾き飛ばす。
「拘束具が!!」
「拘束具?」
突如として叫んだリツコをマコトが訝しげに尋ねる。
「そう、あれは装甲板などではないわ。エヴァ本来の力を私達が押さえ込むためのものなの。
今、その束縛が自らの力で解き放たれた。もう私達に止めることは出来ないわ………。」
その言葉を肯定するかのように、初号機は高らかに咆哮を上げた。
それは歓喜。
自らの不完全な肉体の喪失と新たな完全な肉体を手に入れたことに対する心からの叫び。
もはや縛るものはどこにも無い。
「ふ…ふふふ……
ふふふふふふ……
あははははははは!
モニターされぬプラグ内で少女は高らかに笑い声を上げた。
「初号機の覚醒と解放。ゼーレが黙っちゃいませんな、碇司令。これもシナリオの内ですか?」
初号機の位置から程近い場所で加持は咆哮をあげる神の僕を見つめながら独り言を呟く。
そして、振り返った視線の先には半壊したネルフ本部があった。
「やっと始まったな。」
「ああ、全てはこれからだ。」
なぜこうなったかは分からない。
だが、好都合だ。
原因の究明はどこかへ置き捨て、ゲンドウは自らのシナリオに好都合な出来事に喜びを享受することを優先した。
「シンジ………」
うつろな瞳でアスカは未だ叫び続ける初号機を見つめていた。
shin:やや短めながら20話をお送りしました。
アスカ:あれ?
shin:どうした?
アスカ:ずっと大体テレビの話数と合わせてたのに今回は違うわね。
shin:ああ、シンジは溶けてないしな。20話に当たる内容が無いから長くなる19話の方を2話に分けた。
アスカ:ふ〜ん
shin:そういや今回はシンジ全く出てきてないな。
レイ:ミナモさんもほとんど出てないわ。
アスカ:それで、二人は?
レイ:(くぃ、と親指で後ろの方を指差す)
シンジ:主役なのに…
ミナモ:シンジはいいじゃない。私は最初からずっとこんな扱いよ……
shin:………何だ、アレ。
レイ:出番が無いもの同士慰めあってるの。
shin:……見てて痛々しいな。
アスカ:そう思うなら出番増やしてあげなさいよ。
shin:…善処する………
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